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入院前からの退院支援、診療報酬と介護報酬の両面からアプローチを—入院医療分科会(3)

2017.8.25.(金)

 退院支援加算1と2の算定対象である「退院困難な患者」について、「家族問題などで支援が必要な状態」や「在宅サービス利用や再調整が必要な状態」なども含まれることを明示してはどうか。2018年度診療報酬改定後に「地域連携診療計画加算」の算定件数が大きく減少していることから算定要件の見直しを検討してはどうか―。

24日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」では、こういった議論も行われました(関連記事はこちらこちら)。

2018年度には診療報酬・介護報酬の同時改定となるため、退院後の円滑な介護施設入所を促進するためにも、診療報酬と介護報酬の両面からのアプローチを求める意見も出ています。

8月24日に開催された、「平成29年度 第6回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

8月24日に開催された、「平成29年度 第6回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

退院支援加算の算定対象である「退院困難患者」、より具体的に示すべき

 病院からの円滑な退院により、▼医療安全の確保▼患者のQOL向上▼医療費の適正化—などの効果が望めることから、診療報酬でも「退院支援」に力を入れる病院を評価しています。2016年度の前回診療報酬改定では、従前の「退院調整加算」を見直し、「退院支援加算」に組み替えています。具体的には、▼施設基準を厳格化(病棟に地域連携連中の看護師などを配置する)した【退院支援加算1】▼従前の退院調整加算に該当する【退院支援加算2】▼新生児の退院調整・支援を評価する【退院支援加算3】―の3区分となっています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

退院支援加算1・2の施設基準・算定要件の概要。加算1を届け出るためには病棟に退院支援業務等専従の看護職員・社会福祉士の配置などが必要となる

退院支援加算1・2の施設基準・算定要件の概要。加算1を届け出るためには病棟に退院支援業務等専従の看護職員・社会福祉士の配置などが必要となる

 
 ところで退院支援加算は、すべての退院患者に算定できるわけではありません。加算1と2では主に「退院困難な要因を有しながら、在宅療養を希望する患者」が算定対象で、具体的には▼悪性腫瘍、認知症、誤嚥性肺炎などの急性呼吸器感染症のいずれか▼緊急入院▼要介護認定の未申請▼排泄の要介助▼入退院を繰り返している—などのほかに、「その他、患者の状況から判断して上記に準ずると認められる場合」も含まれます。厚労省は24日の入院医療分科会に、この「その他、患者の状況から判断して上記に準ずると認められる場合」として、病院側が具体的にどういう状態と考えているのか調べ、次のように整理して示しました。

【入院早期から把握し、速やかに関係機関と連携し、入院中から支援する必要があるケース】
▽家族からの虐待や家族問題があり支援が必要な状態
▽未婚などで育児のサポート体制がないため、退院後の養育支援が必要な状態
▽生活困窮による無保険、支払い困難な場合
▽保険未加入者であり市町村との連携が必要な場合 など

【入院早期に「入院前に利用していたサービス」を把握し、退院後に向けた調整が必要なケース】
▽施設からの入院で、施設での管理や療養場所の選択に支援が必要な状態
▽在宅サービス利用の再調整や検討が必要な状態

 この具体像について神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は、「2018年度の次期改定では、悪性腫瘍などと同じように明示すべき」と要望しました。診療報酬点数表などには、同様の「その他、●●に準ずる場合」と記載されることがよくあります。患者の状態などはさまざまで、すべて列挙することは不可能な、こういった記載が用いられますが、可能な限り具体化したほうが、医療機関にとっても、審査支払機関にとっても分かりやすくなると考えられます。

退院支援加算の算定対象患者

退院支援加算の算定対象患者

退院支援加算の算定対象患者のうち、「その他」の中にもさまざまなケースが含まれている

退院支援加算の算定対象患者のうち、「その他」の中にもさまざまなケースが含まれている

入院前・入院早期からの退院支援により、円滑な退院に有用

 退院支援加算を算定するためには、入院後早期に前述の退院困難な患者を抽出し(加算1では3日以内、加算2では7日以内)、早期に患者・家族と面談し(加算1では7日以内、加算2ではできるだけはやく)、早期に多職種による退院支援に向けたカンファレンスを実施する(加算1では7日以内)ことが必要です。

 さらに、一部の病院では「入院前」から、退院支援に向けた取り組みを行っており、それが円滑な退院に効果をもたらしているといいます。例えば高齢者の予定入院において、外来診療の中で「この患者は入院が必要な状態だが、退院後に在宅介護が必要になるであろう。果たして要介護認定を受け、退院後すぐに介護保険サービスを受けられる状況にあるであろうか」といった点を考慮し、ケアマネジャーと連携することなどが考えられます(関連記事はこちら)。

厚労省の行った調査によれば、7対1病棟・療養病棟の2割程度、10対1病棟・回復期リハビリ病棟の3割程度、13対1・15対1病棟の4割程度、地域包括ケア病棟の5割弱では、入院前から担当ケアマネがおり、半数超で「ケアマネからの情報提供が有用であった」と感じていることが分かりました。

入院前にケアマネジャーとの連携を行っている病院があるが、病棟の種別によって連携状況はまちまちである

入院前にケアマネジャーとの連携を行っている病院があるが、病棟の種別によって連携状況はまちまちである

入院前のケアマネとの情報連携について、半数超の病院は「有用」と捉えている

入院前のケアマネとの情報連携について、半数超の病院は「有用」と捉えている

 
また、個別事例について自治体との連携状況を見ると、7対1では7割弱、10対1では5割弱、地域包括ケア病棟では6割弱が連携しています。

さらに地域ケア会議(自治体職員、ケアマネ、介護事業者、医師、看護師、リハビリ専門職などが集い、個別の困難事例支援などを通じて▼地域支援ネットワーク構築▼高齢者の自立支援に資するケアマネジメント支援▼地域課題の把握―などを行う)への医療機関の参加状況を見ると、病棟の種別で若干の差はあるものの「5割前後が参加」している状況が分かりました。

病棟の種別で差があるが、5割前後の病院は地域ケア会議に参加し、個別の要介護高齢者事例を通じた地域連携ねとワークなどに積極的に関わっている

病棟の種別で差があるが、5割前後の病院は地域ケア会議に参加し、個別の要介護高齢者事例を通じた地域連携ねとワークなどに積極的に関わっている

 
また外来患者が自院に入院する際に、6割超の病院では「連携のための部署・窓口」を整備しており、3割超の病院では「看護師などが調整を行っている」ことも分かりました。ほとんどの病院で、入院前からの退院支援に向けた一定の取り組みを行っていることが伺えます。
ほとんどの医療機関で、外来部門と入院部門が連携し、「入院患者の情報連携」などを行っている

ほとんどの医療機関で、外来部門と入院部門が連携し、「入院患者の情報連携」などを行っている

 
このように、ケアマネや自治体などと連携した「入院前からの退院支援」などが円滑な退院に有効であることが示唆されており、厚労省は▼入院前▼入院早期—からの効果的な退院支援を診療報酬でどう評価していくか、検討を要請しています。

この点、武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)は、▼外来と入院をつなぐ「入退院センター」の設置▼薬剤師による入院前の使用薬剤把握—なども含めた評価を検討するよう要請。筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)は、「2018年度は同時改定になるので、診療報酬と介護報酬の双方からのアプローチ(情報連携した場合、医療機関もケアマネも報酬で評価される)を行ってほしい」と要望しました。神野委員も同旨の考えを述べています。厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、診療報酬を担当する保険局医療課と介護報酬を担当する老健局老人保健課とで連携を図っていることを強調しています。

また池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)は、▼高齢者の入院時に病院側がケアマネに連絡し、ケアマネから情報提供を受ける(ケアマネがいない場合には、病院側が要介護認定申請を支援する)▼入院中には病院とケアマネで情報連携する▼退院支援が開始されたら病院からケアマネに連絡し、ケアマネがケアプラン作成などを始める—という福井県退院支援ルール(福井モデル)の有効性を説明するとともに、「入院時の情報連携の評価充実」が重要と強調しています(関連記事はこちら)(福井県のサイトはこちら)。

福井県における退院支援ルールの概要

福井県における退院支援ルールの概要

 

地域連携診療計画加算の算定が大幅減、算定要件の見直しを求める声も

 ところで2016年度の前回診療報酬改定では、退院支援加算の創設に合わせて、従前の地域連携診療計画管理料(B005-2)、地域連携計画加算(A238退院調整加算の加算)などを、A246退院支援加算の加算【地域連携診療計画加算】に整理・統合しました。いずれも、いわゆる地域連携パスを用いた連携を評価するものです。

この点、厚労省が算定状況を調べたところ、2016年度改定後に算定件数が大幅に減少していることが判明しました(合計はもちろん、改定前の地域連携計画加算のみと比べても減少)。

2016年度の前回診療報酬改定後、地域連携診療計画加算の算定件数は大きく減少している

2016年度の前回診療報酬改定後、地域連携診療計画加算の算定件数は大きく減少している

 
この原因の1つとして、地域連携診療計画加算は『退院支援加算1と3の加算』という点がありそうです(退院支援加算1・3を届け出ていなければ、地域連携診療計画加算は算定できない)。

牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)は、例えば回復期リハビリ病棟では、患者の身体機能回復状況を踏まえながら退院支援困難者の抽出や多職種カンファレンスを行う実態などを紹介し、「回復期リハビリ病棟で大急ぎで退院支援する(退院支援加算1の取得につながる)必要があるだろうか。地域連携診療計画加算の退院支援加算1と3への限定は疑問だ」と述べ、次期改定での算定要件見直しを求めています。

再入院率、病棟で提供する「医療の質」を図れる指標として注目

 なお、7対1病棟や地域包括ケア病棟、回復期リハ病棟の施設基準である「在宅復帰率」について、厚労省は「評価の趣旨を踏まえた整理が必要」と考えています。24日の入院分科会でも、多くの委員から「7対1では自宅以外に、地域包括ケア病棟や療養病棟への転院でも在宅復帰率にカウントされる。『連携率』などの名称に見直してはどうか」といった指摘がなされています。

また神野委員は「7対1を早期退院して、他の状態にあった病棟へ移ることを評価すればよい」とし、7対1における在宅復帰率は「廃止すべき」とコメントしました。本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)も「形骸化しており廃止すべき。継続するのであれば『自宅への退院』を手厚くカウントすべき」と求めています。

これに関連して、厚労省は「再入院率」のデータを提示。1年間における再入院率を見ると、20%以上30%未満の病院がもっとも多く、また「同一疾患での6週間以内の再入院率」は10%未満がほとんどとなっていますが、一部には再入院率が40%を超える病院もあります。十分な治療をせずに早期退院のみを追い求めれば再入院が多くなるため、再入院率は「医療の質」を図る重要指標の1つと言えます。平均在院日数や退院支援などと併せて、再入院率の評価を組み合わせれば、「適切な医療を提供しながら、早期退院に力を入れている病院」を抽出して評価できるため、今後の検討に注目する必要がありそうです。

医療機関の再入院率を見ると20%以上30%未満がもっとも多く、ほとんどの病院では「同一疾患での6週間以内の再入院料」は10%未満にとどまっているが、一部に40%を超えている病院もある

医療機関の再入院率を見ると20%以上30%未満がもっとも多く、ほとんどの病院では「同一疾患での6週間以内の再入院料」は10%未満にとどまっているが、一部に40%を超えている病院もある

  
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