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回復期リハ病棟、「退院後のリハビリ提供」の評価を検討—入院医療分科会(2)

2017.7.24.(月)

 回復期リハビリテーション病棟からの退院患者について、退院時と退院後1か月のADLを比較すると後者のほうが低下しているという研究結果がある。退院後にもリハビリテーションを提供できる体制の確保に向けた評価を検討すべきではないか—。

 21日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」では、こういった議論が行われました(関連記事はこちら)。

7月21日に開催された、「平成29年度 第4回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

7月21日に開催された、「平成29年度 第4回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

回復期リハ病棟、退院後1か月でADLが低下する患者も

 リハビリについては「早期の実施」が効果的であることから、診療報酬上は疾患別リハビリテーション料に初期加算(治療開始から14日まで、1単位当たり45点)、早期加算(治療開始から30日まで、1単位当たり30点)が設けられています。厚生労働省は今般、これを逆の方向から、すなわち「退院後のリハビリ」に関する検討を行っています。

 回復期リハビリ病棟では、急性期後の脳卒中・大腿骨頸部骨折などの患者を受け入れ、集中的なリハビリを提供し、在宅復帰を促すことが求められています。しかし、現場には「退院後のフォローが重要である」との思いがあります。回復期リハビリ病棟を退院したあと、適切なフォローをしなければ、一定期間経過後に入棟時と同様の状況で再入棟するケースもあり、一部の回復期リハビリ病棟では「手弁当」で退院後フォローを実施しています。

厚労省は21日の分科会に、▼回復期リハビリ病棟退院後も、6割超の患者ではリハビリや機能訓練が必要である▼回復期リハビリ病棟を持つ医療機関のうち、72%で訪問リハビリを、65%で通所リハビリを実施しており、2016年度診療報酬改定前(それぞれ29.8%、43.9%)よりも実施体制が強化されている—というデータを提示。

回復期リハビリ病棟から退院した患者の6割強では、なんらかのリハビリ・機能訓練が必要な状況である

回復期リハビリ病棟から退院した患者の6割強では、なんらかのリハビリ・機能訓練が必要な状況である

回復期リハビリ病棟を持つ医療機関のうち72%で訪問リハビリを、65%で通所リハビリを行う体制を整えている

回復期リハビリ病棟を持つ医療機関のうち72%で訪問リハビリを、65%で通所リハビリを行う体制を整えている

 
さらに、「回復期リハビリ病棟からの退院時と退院後1か月とで患者のADL(FIM運動項目の合計点数)を比較すると、後者で有意に低下してしまっている」との研究結果があることも報告しました。なお、この研究結果によれば、退院後に訪問リハビリや外来リハビリを受けた群では「ADLの低下は見られない」が、退院後に通所サービスを受けた群では「ADLが低下している」ことが分かっています、例えば後者の群では「通所介護(デイサービス)利用者も含まれている」「要介護高齢者でリハビリの効果が出にくかった」という可能性もあり、「医療保険のリハビリのほうが、介護保険のリハビリよりも効果的である」といった結論は導けない点に留意が必要です。
回復期リハビリ病棟の退院時から退院後1か月にかけて、ADLが低下してしまうという研究結果がある。詳細を見ると、通所サービス利用者でADL低下があることが明らかになっている

回復期リハビリ病棟の退院時から退院後1か月にかけて、ADLが低下してしまうという研究結果がある。詳細を見ると、通所サービス利用者でADL低下があることが明らかになっている

 
厚労省は、こうしたデータや研究結果をもとに、「退院直後の患者に、引き続き、地域で必要なリハビリを提供できる体制の確保に資する評価の在り方」を論点の1つとして掲げており、これに対する明確な反対意見は出ていません。初期加算や早期加算のように、例えば「自院からの退院患者に対し、退院後一定期間、継続してリハビリを提供する」病棟を評価するような加算が検討されることになりそうです。

回復期リハ病棟にも多様な患者、状態像に応じた評価を検討

 回復期リハビリ病棟については、さらに▼リハビリ専門職の病棟配置の現状を踏まえた確実な在宅復帰に資するリハビリ提供のあり方▼患者の状態と機能の改善に着目した評価のあり方―という2つの論点が厚労省から示されています。

 前者は、相当数の回復期リハビリ病棟でリハビリ専門職種(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の「加配」が行われていることを踏まえ、これをどう考えるかというテーマです。本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、前述の「退院後のフォロー」とも関連して、「病棟スタッフが柔軟に外来や在宅(訪問)でのリハビリ提供を実施できる体制の構築」を検討するよう求めています。
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回復期リハビリ病棟1ではリハビリ専門職を加配しているところがほとんどで、2、3の病棟でも相当数が加配している

回復期リハビリ病棟1ではリハビリ専門職を加配しているところがほとんどで、2、3の病棟でも相当数が加配している

 
 後者では、回復期リハビリ病棟にも▼認知症の患者▼ADLの低い患者▼比較的早期に退院可能な患者(「股関節・膝関節置換術後の患者」では「大腿骨などを骨折した患者」に比べて早期退院している)―など、さまざまな状態の患者が入院しており、状態や機能改善の度合いをどのように評価に結び付けていくかが検討されます。この点について武井純子委員(社会医療法人財団慈泉会相澤東病院看護部長)と筒井孝子委員(兵庫県立大学大学院経営研究科教授)は、「入院期間中の状況を可視化すべき」旨を提案しました。両委員は入院(棟)時と退院(棟)時の状況は、重症度、医療・看護必要度や日常生活機能評価などで測定できるが、中間である「入院(棟)中」の状態像を測定する項目を追加することで、「どのような患者が、どのような経過をたどって回復し、退院につながるのか」が把握できると訴えています。さらに筒井委員は「回復期リハビリ病棟にもさまざまなタイプがあり、機能別の評価も考えなければいけないのではないか」とコメントしています。
回復期リハビリ病棟の入院患者の中にも、ADLの状況はさまざまである

回復期リハビリ病棟の入院患者の中にも、ADLの状況はさまざまである

回復期リハビリ病棟の入院患者には、さまざまな病態をもており、退院までに必要な日数にもバラつきがある

回復期リハビリ病棟の入院患者には、さまざまな病態をもており、退院までに必要な日数にもバラつきがある

 ところで回復期リハビリ病棟については、2016年度の前回診療報酬改定で「アウトカム評価」(リハビリ効果の低い病棟では、一定以上の疾患別リハビリ料を包括評価する)が導入されましたが、この点については、データ収集を待ち、別途議論される見込みです(関連記事はこちらこちらこちら)。

 
なお、13対1・15対1一般病棟について本多委員は「重症度、医療・看護必要度データの提出義務化を検討してはどうか」と求めており、今後の議論・調整に注目が集まります。

  
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