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「退院後の患者・家族の満足度」で回復期リハのナンバー1を目指す―愛仁会リハビリテーション病院

2016.1.18.(月)

 人口構造が変化する中で、医療ニーズもかつての急性期中心から回復期・慢性期へとシフトしていきます。また、急性期病棟において平均在院日数短縮化が求められる中で、回復期の役割がますます高まっていきます。

 このように医療提供体制の構造的な変革が進む中で、回復期リハビリテーション病棟・病院は今後どのような方向に向かうべきなのか―。都市型の回復期リハビリテーション病院の先駆けである愛仁会リハビリテーション病院(大阪府高槻市)は、医療の質、リハの質はもとより「退院後の患者・家族の満足度」をさらに高め、「リハビリ病院のナンバー1」となることを目指しています。同院の吉田和也病院長をはじめとする病院幹部に、回復期リハビリ病院ならではの苦労や工夫について、お話を伺いました。

社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院の吉田和也病院長

社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院の吉田和也病院長

「ゆりかごから墓場まで」地域のニーズに対応

 社会医療法人愛仁会は、関西地方で急性期から回復期、介護老人保健施設、保育施設など、医療・保健・福祉に止まらない、極めて幅広い事業を展開していいます。まさに「ゆりかごから墓場まで」、地域住民のニーズに対応しています。

 特に高槻地区では、急性期、回復期、老健施設、在宅医療・介護などのサービスを幅広く展開していますが、これは地区の住民からの強い要請を受けたものです。

 愛仁会リハビリテーション病院は、JR高槻駅から徒歩5分に位置する都市型のリハビリ病院です。今から30年以上前の1983年に、高槻第二病院(第一病院は急性期)としてスタートし、当初からリハビリを中心とした医療を展開しています。

 「設立当時はリハビリ病院と言えば、温泉地などにこそあるものの、都市部には非常に珍しかった」と吉田院長は当時を振り返ります。診療報酬上の「回復期リハ病棟」も存在せず、経営的には厳しかったようですが、「患者宅に積極的に出向き、自宅復帰に向けたリハビリを行うことが重要」と考えて歩んできた結果、後から診療報酬が追い付いてきた格好です。

「退院後の患者・家族の満足度」向上を回復期リハは重視すべき

 愛仁会リハビリテーション病院は、急性期を担う愛仁会高槻病院に隣接しています。このため「集患」には苦労していないようにも思えます。回復期リハ病棟には、急性期後の脳卒中・大腿骨頸部骨折などの患者を受け入れて集中的なリハビリを提供し、在宅復帰を促すことが求められているからです。

 この点について、公文和彦事務部長は、「かつては高槻病院からの転院患者が半数程度であった。しかし『いずれ同一法人の急性期病院からの患者受け入れに頼っていたのでは厳しくなる』と考え、他院からの患者受け入れを拡大し、現在は、高槻病院からの転院患者は20%程度であり他の医療機関からの入院の受け入れも幅広くなった」と説明します。急性期後の患者を受け入れる、地域において「なくてはならない」重要な病院になっていることが分かります。

社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院の公文和彦事務部長

社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院の公文和彦事務部長

 このように「急性期」→「回復期リハ」→「在宅」という患者の流れの中で、回復期リハならではの苦労はどのようなものなのでしょうか。

 西原伸美看護部長は、「急性期病院からのサマリーには、患者の入院前の生活の状況が記されていないことが多い。回復期リハ病棟は在宅復帰を目指しているので、入院前の生活がどのようなものであったかなどが非常に重要な情報となる。こうした点も重視してほしい」と要望します。全国の回復期リハ病棟、さらには訪問看護ステーションなどからも同じような意見をよく耳にします。

社会医療法人愛仁会 愛人会リハビリテーション病院の西原伸美看護部長

社会医療法人愛仁会 愛人会リハビリテーション病院の西原伸美看護部長

 

 また大垣昌之リハ技術部部長は、「急性期の時点で、予後も含めた説明をしてほしい。『回復期リハ病棟に行けば歩けるようになる』といった説明をすると、患者・家族が誤った期待を持ってしまう可能性がある。愛仁会リハビリテーション病院では、患者の希望と機能を勘案してゴールを設定し十分に説明するが、急性期病院でもその点を考慮してほしい」と求めています。

社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 の大垣昌之リハ技術部部長

社会医療法人愛仁会 愛仁会リハビリテーション病院 の大垣昌之リハ技術部部長

 

 一方で、在宅や生活期を担う医療・介護担当者に対しては、「情報をフィードバックしてほしい」との要望があるようです。吉田院長は「愛仁会リハビリ病院では、在宅患者に対しては退院後も訪問を行って状態を把握している。しかし他院に転院した患者ではこれが難しい」と指摘します。

 もちろん退院後の訪問や情報共有について、現在は診療報酬上の評価がないため「手弁当」で行っているのが実際です。しかし吉田院長は「これこそが連携ではないか。退院後の患者・家族の満足度を維持することが、回復期リハビリ病棟の重要な役割の1つ」と強調。さらに、「愛仁会リハビリテーション病院はナンバー1の回復期リハ病院を目指している。ナンバー1にも、スタッフ数ナンバー1や病床数ナンバー1などさまざまあるが、『退院後の患者・家族の満足度ナンバー1』を目指す」と力強く語りました。こうした思いこそが、地域住民や連携先の医療機関から信頼される所以でしょう。

 ただし、退院後の訪問は理学療法士などの貴重な時間を割くことを意味し、目の前の経営を考えると難しいのが実際です。公文部長は「これを診療報酬で評価してほしい」と厚生労働省に強く要望しています。

回復期リハの医師・看護師、より高度な技術・能力が求められる

 ところで愛仁会リハビリ病院は、回復期リハ病棟入院料1を届け出ていますが、入院料1を届け出るには「新規入院患者のうち重症患者が3割以上」「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目1点以上の患者が1割以上」「退院時にADLが改善(日常生活機能評価が4点以上)した患者が3割以上」などといった施設基準を満たさなければなりません。つまり「重症患者を受け入れ、期間内にADLを改善させて、在宅復帰させる」ことが求められるのです。

 こうした診療報酬上の規定について西原部長は「戸惑いを感じる」と言います。例えば、重症患者の定義として「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度のA項目」が用いられていますが、「入院待機の患者さんの中から重症者割合を見ながら入院決定をしていくため、必ずしも予約の順番通りとはいかないこともある」といいます。回復期リハ病棟入院料1堅持のため、こうしたベッドコントロールには多くの病院で苦労されていますが、医療現場では疑問を感じる場面も少なくないのではないでしょうか。

 重症患者に関連して西原部長は、「リハビリは患者に負荷をかけていかなければならない。そのため急性期から転院してきた、サーチレーションモニターを付けたまま患者にリハビリを提供することもある。もともと、重症患者であるため、さまざまな合併症があり、中には状態が悪化して翌日には急性期に再転院というケースもある。回復期リハビリ病棟のナースやセラピストには、患者の状態変化を見極め、すみやかに医師に報告できる力が必要である」とも強調しました。

 大垣部長も同様に、「回復期リハビリ病棟の患者は、全身状態がまだ不安定である。安定期に入る前の患者を管理して、回復させなければならない。循環器、消化器などの専門があった上でリハビリにも強い医師が求められている」と指摘しました。

 回復期リハ病棟の医師・看護師に求められる能力が、より高度になってきていることをうかがわせるエピソードです。

エビデンスに基づいて回復期リハの診療報酬を見直すべき

 2016年度には診療報酬改定が行われますが、回復期リハビリ病院はどのように見ているのでしょう。

 愛仁会リハビリ病院の幹部が声を揃えるのは「エビデンスに基づいた評価」です。大垣部長は、「透析中の患者に対する運動療法」を評価すべきと提案しています。外来で、数時間透析を行うと廃用症候群に結びついてしまうため、愛仁会リハビリテーション病院では透析中の運動療法を提供。その結果ADLが落ちにくいというデータがあるといいます。

 さらに大垣部長は、「現在は疾患別のリハビリを評価しているが、脳血管疾患、心大血管、運動器、呼吸器に充てはらまない患者も多い。かつてのように『複雑』『簡単』などに分け、時間枠を広げた報酬体系にすべきではないか」とも指摘します。

 また中央社会保険医療協議会で検討されているアウトカム評価の拡大(関連記事はこちら)について、吉田院長と公文部長は「急性期では治療の効果を評価しやすいが、回復期では家族構成などの背景で効果が全く異なってくる」と指摘し、慎重な検討が必要との見解を述べています。

 一方、包括評価については「リハビリは患者の個別性が大きい、包括評価にはリスクのほうが大きいと思う」と大垣部長。

 回復期リハビリ病棟では、リハビリの上限が設定されるなど経営の改善に向けた「飛び道具」がありません。地域医療構想や病床機能報告制度をはじめとした医療機能の分化・強化が進められる中で、「回復期病床の充実」が必要とされています。過剰とされる急性期から回復期への転換を促すためにも、回復期リハビリ病棟の実態に即した診療報酬の設定が求められています。

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