回復期リハに新たなアウトカム評価を導入、リハ効果が一定以下の場合に疾患別リハ料を適正化―中医協総会
2016.1.13.(水)
お伝えしているように、中央社会保険医療協議会総会が13日、2016年度の次期診療報酬改定に向けた骨子を了承しました。今回はリハビリやチーム医療、充実項目に焦点を合わせてみましょう。
急性期からの早期退院や在宅復帰を円滑に進めるためには、質の高いリハビリの充実が不可欠です。2016年度改定の基本方針では、リハビリに「アウトカム評価」を導入して質を上げる方向が打ち出されており、具体的には次のような見直しが予定されています(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
▽回復期リハビリ病棟においてアウトカムの評価を行い、一定の水準に達しない医療機関では、疾患別リハビリテーション料の評価を見直す
▽回復期リハビリ病棟入院料の体制強化加算を届け出る医療機関において、入院から退院後の医療の継続性を保つため、回復期リハビリ病棟の専従の常勤医師が入院外の診療にも一定程度従事できるよう施設基準を見直す
▽ADL維持向上等体制加算の評価・施設基準を一部見直すとともに、質や密度の高い介入を行っている病棟の評価を充実する
▽早期からのリハビリを推進するため、疾患別リハ料の初期加算・早期リハ加算の評価を適正化する(慢性疾患の対象からの除外、起算日の見直しなど)
▽廃用症候群に対するリハビリについて、新たな疾患別リハ料として設ける
▽要介護被保険者に対する維持期リハビリの介護保険への移行を図るとともに、円滑な意向を進めるため「要介護被保険者などへのリハビリで、目標設定支援などの評価」や「医療保険と介護保険のリハビリの併給拡大」を行う
▽心大血管疾患リハ料の施設基準を緩和する
▽社会復帰等を指向したリハビリを促進するため、必要な場合には医療機関外でのリハを疾患別リハの対象に含める
▽施設基準に応じて疾患別リハビリテーション料の評価を見直す
▽リンパ浮腫の患者に対する治療を充実する観点から、リンパ浮腫に対する複合的治療に係る項目の新設などを行う
▽摂食機能療法について、対象患者の範囲拡大や、経口摂取回復促進加算で要件を緩和した新区分を設ける
このうち、要介護被保険者の維持期リハについて診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)は「ソフトランディングが必要」と訴えましたが、診療側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会副会長)は「介護保険への移行について延長を繰り返しており、次期改定で経過措置は終了すると考えるべき」と反論しています。
チーム医療の推進が進められていますが、病院・病床の機能分化が求められる中では、医療機関間などの連携も重視されています。2016年度改定では、次のような項目によって連携推進が図られます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▽悪性腫瘍手術などに先立ち、歯科医師が周術期口腔機能管理を実施した場合に算定できる周術期口腔機能管理後手術加算の評価を拡充する(周術期における医科・歯科連携を推進)
▽歯科を標榜している病院に係る歯科訪問診療料の要件を見直す(病院における周術期口腔機能管理を推進)
▽院内・院外の歯科医師が栄養サポートチームの一員として診療を実施した場合を評価する(医科・歯科連携による栄養サポートの推進)
▽管理栄養士が行う栄養指導の対象を「がん」「摂食・嚥下機能低下」「低栄養」の患者に拡大し、入院・外来におけるより充実した指導を評価する
また、勤務医の負担軽減などを図るため、「脳卒中ケアユニット(SCU)入院医療管理料について、一定の条件の下での配置医師要件の緩和」「医療機関外での画像読影も画像診断管理加算の対象とする」「手術・処置の時間外等加算1の当直などの日数上限の規模に応じた緩和」などが行われます。
診療報酬改定の重大な目的の一つに「医療現場の課題を解決する」ことがあります。そこでは、国民の生命・健康に重大な影響を及ぼす疾病の治療成績や患者のQOLを上げるために「重点的な評価を行うべき」項目も含まれます。2016年度の次期改定では、次のような対応が図られます。
【がん対策】(関連記事はこちら)
▽がん医療の更なる均てん化のため、「地域がん診療病院」と「小児がん拠点病院」の体制を評価する
▽終末期により質の高い在宅でのケアを受けられるよう、終末期に近いがん患者について、外来から在宅への連携を評価する
▽緩和ケア病棟の在宅生活支援を推進するために、在宅緩和ケアを受ける患者の増悪時の受入れ等、地域連携の取組などを評価する
▽がん性疼痛緩和指導管理料について、がん診療に関わる全ての医師が緩和ケアに係る研修を受けることを要件とする
▽外来化学療法を更に推進する観点から、外来化学療法加算の評価を見直す
【認知症対策】(関連記事はこちら)
▽身体疾患で入院した認知症患者に対する病棟の対応力などを向上させるため、病棟での取り組みや多職種チームによる介入を評価する
▽診療所型認知症疾患医療センターとかかりつけ医が連携した取り組みを評価する
【難病対策】(関連記事はこちら)
▽指定難病をこれまでの難病と同様に評価し、併せて小児慢性特定疾病の患者の医学管理に関する評価を行う
▽指定難病の診断に必須とされている遺伝学的検査について、新たに関係学会が作成する指針に基づき実施される場合に限り、評価する
【小児医療、周産期医療、救急医療】
▽精神疾患合併妊娠・分娩の管理を評価する
▽救急患者の受入体制を充実するため、「夜間休日における再診後の緊急入院の評価」「二次救急医療機関における夜間休日の救急患者の受け入れの評価の充実」「脳梗塞でt-PAなどの実施が必要な状態、狭心症などで緊急に冠動脈の検査・治療が必要な状態を救急医療管理加算1の対象に加える」などの見直しを行う
【医療技術などの評価】
▽費用対効果評価について、選定基準に沿った対象品目の選定、総合的評価(アプレイザル)を実施する専門組織を新設し、試行的導入を実施する(関連記事はこちら)
▽画像診断の適切な評価を行うため、次のような見直しを行う(関連記事はこちら
・64列以上のマルチスライス型CT・3テスラ以上のMRIの評価を充実し、その一方で「多施設共同利用」要件を設ける
・PETの施設共同利用率の要件について、更なる共同利用の推進を図る観点から要件を見直す
▽胃瘻造設術・胃瘻造設時嚥下機能評価加算について、「経口摂取回復率35%以上」の要件とは別に、施設における嚥下機能・回復の見込みを適切に評価できる体制・嚥下機能の維持向上に対する取り組みに関する要件を新たに設定する(関連記事はこちら)
▽胃瘻造設術・胃瘻造設時嚥下機能評価加算における、術前の嚥下機能検査実施の要件について、全例検査の除外対象とされている項目を見直す(関連記事はこちら)
▽手術等の医療技術について、区分C2(新機能・新技術)で保険適用された新規医療材料等の技術料新設や、外保連試案の評価を参考にした手術評価の精緻化などを行う(関連記事はこちら)
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