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GemMed塾 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

勤務医の負担軽減に向け、医師事務作業補助体制加算1の要件を緩和―中医協総会

2015.12.11.(金)

 2016年度の次期診療報酬改定では、勤務医の負担軽減を図るため、「患者の診療中に行う文書作成の補助について、一定の場合には病棟外で行っても医師事務作業補助体制加算1の対象に含める」などの見直しを行ってはどうか―。厚生労働省は11日に開いた中央社会保険医療協議会の総会に、このような提案を行いました。

 このほかにも「脳卒中ケアユニットにおける夜間の体制の見直し」や「手術・処置の休日・時間外・深夜加算1の要件見直し」などが行われる見込みです。

12月11日に開催された、「第319回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月11日に開催された、「第319回 中央社会保険医療協議会 総会」

医師事務作業補助体制加算、補助者の業務実態に合わせた見直し

 勤務医の負担軽減は、最近の診療報酬改定における重要テーマに位置付けられており、2016年度の次期改定でも重点課題の1つに盛り込まれています。

 11日の中医協総会では、厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長から、勤務医の負担軽減を図るために次のような見直しを行ってはどうかと提案されました。

(1)医師事務作業補助体制加算の見直し

(2)脳卒中ケアユニットなどにおける夜間の体制の見直し

(3)手術・処置における休日・時間外・深夜加算1の要件見直し

(4)看護職員の負担軽減

(5)「常勤」配置の考え方の見直し

 (1)の医師事務作業補助体制加算は、急性期病院において医師事務作業補助者を配置し、▽診断書などの文書作成補助▽診療記録への代行入力▽医療の質の向上に資する事務作業▽行政上の業務―を行うことを評価するものです。

 現場の医師は、この加算について「効果がある」と高く評価しており、2014年度の前回診療報酬改定では、より高い点数を設定した「加算1」が新設されました。厚労省は、2016年度の次期改定でも、この「加算1」の普及を進めたいと考えています。

 そこで、加算1を届け出るための施設基準である「補助者の業務を行う場所について、80%以上を病棟または外来とする」という規定について次のような見直しを行う方針が宮嵜医療課長から提案されました。

●医師が患者の診療中に行う文書作成の補助(診断書作成補助・診療録の代行入力)に限って、実施の場所を問わず加算1の対象に含める

 一読するだけでは理解が難しいのですが、厚労省保険局医療課の担当者は、「例えば、診療録の代行入力を行う場合、医師の言葉を録音し、それを文字に書き起こす作業を、騒がしい病棟ではなく、静かな別の部屋などで行っても、施設基準にある『補助者の業務を行う場所について、80%以上を病棟または外来とする』の範疇に含めることなどが考えられる」と説明しています。事実上の要件緩和と捉えることができるでしょう。

 このほかにも加算1の推進に向けた見直しが行われる可能性もあり、急性期病院では要注目です。

 なお診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)は、「急性期病院以外でも勤務医の負担は大きい。精神病院や療養病院でも届け出を認めてほしい」と要望しています。

医師事務作業補助体制加算1を算定するには、「補助者の延べ勤務時間数の8割以上が、病棟・外来での業務」でなければならない

医師事務作業補助体制加算1を算定するには、「補助者の延べ勤務時間数の8割以上が、病棟・外来での業務」でなければならない

脳卒中ケアユニット、ICT活用による夜間体制を認める

 (2)は、脳卒中ケアユニット(SCU)における医師配置の体制(院内に神経内科・脳神経外科の経験が5年以上ある専任の医師が常時1名以上いる)を、夜間に限って緩和してはどうかとの提案です。

 具体的には、「夜間などに、『神経内科・脳神経外科の経験が5年以上ある医師』が、院外でICTを活用して迅速に診療上の判断を支援できる体制」が整っている場合には、院内に乗じ配置しておく医師の経験年数を緩和するというものです。

 ICTの発展により、CTなどの大容量画像でも迅速に送受信できる体制の整備が進んでいることや、SCUの整備に地域格差があることを踏まえた提案内容と言えます。

 また、「画像診断管理加算2」については、「MRI・CT画像の8割以上の読影結果が、院内の常勤画像診断担当医師から『遅くとも翌診療費まで』に主治医に報告されている」という厳しい施設基準が設定されています。

 このため、緊急時には「常勤医師が医療機関に出向いて読影を行う」ケースが少なくないといいます。この負担を軽減するために、宮嵜医療課長は「上記医師が、夜間などの緊急時にICTを活用して『自宅』で読影を行う」ことを認めてはどうかと提案しています。

脳卒中ケアユニットなどで、ICTを活用することによる夜間の配置要件緩和が考えられている

脳卒中ケアユニットなどで、ICTを活用することによる夜間の配置要件緩和が考えられている

手術・処置の時間外加算1、病院全体での取り組みを推進

 (3)の「手術・処置の休日・時間外・深夜加算1」を算定するためには、勤務医の負担軽減を図る体制の整備が必要で、その1つに「予定手術前の当直(緊急呼び出し当番を含む)の免除」があります。これは、一切の当直を許さないものではなく、年間12日までの当直(予定手術前)を課すことは認められています。

 ところで「年間12日までの予定手術前当直」は、この加算1を算定する診療科(複数診療科で算定していれば各科の合計)で実施していればよいとされているため、厚労省は「病院全体での取り組みに繋がりにくい」と見ています。「病院全体では12日を超えてしまうので、当直の少ないA・B診療科に限って加算1を届け出よう」と考える医療機関が多いためです。

大規模な病院では、病院全体で「予定手術前の当直」を年間12日以内に抑えることは難しい

大規模な病院では、病院全体で「予定手術前の当直」を年間12日以内に抑えることは難しい

 そこで宮嵜医療課長は、病院全体で加算1を届け出る場合に限り、「予定手術の前日における当直などの日数の上限を、規模(例えば病床)に応じて緩和する」ことを提案しています。

 当直に従事する医師が多い大病院では、必然的に当直の延べ日数も多くなるため、規模に応じた上限となるのです。

「常勤」規定、部分的に「非常勤職員の常勤換算」を導入

 (5)は、短時間勤務など働き方の多様化が進む状況を踏まえて、「常勤」の考え方を見直すものです。

 現在、緩和ケア診療加算やADL維持向上等体制加算など、さまざまな診療報酬項目で「常勤の従事者配置」が求められています。診療報酬上は、「週4日以上、常態として勤務し、かつ所定労働時間が32時間以上」の人を「常勤」と扱っています。しかし、医療現場でも「短時間勤務」や「産前産後休暇の取得」などを進めるためには、この「常勤」の定義が足かせになっています。

 そこで宮嵜医療は、次の2点の見直しを行う考えを示しました。

▽常勤の従事者が育児・介護休業法に定める休業を取得した場合、一定の期間、「同等の資質を有する複数の非常勤従事者が『常勤換算』方法によって施設基準を満たす」ことを原則として認める

▽育児休業後などの従事者が短時間勤務制度を利用して「正職員」として勤務している場合、「育児・介護休業法で定める期間(育児休業であれば1歳の誕生日前日まで)は、『週30時間以上』の勤務で常勤扱い」とする

 

(4)では、▽夜間急性期看護補助体制加算の評価充実(点数の引き上げ)▽看護補助者が実施できる業務の明確化▽看護管理者による「看護補助者の活用のための研修」受講の促進―などが提案されました。

  

 このほかに、認知療法・認知行動療法について、「認知療法・認知行動療法の知識・経験を有する看護師が、医師の指示のもとに面接の一部分などを実施する」ことを認める提案も行われています。

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