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入院時食事療養費の細分化や委託費高騰などで、給食部門の収支は極めて厳しい—入院医療分科会(2)

2017.10.19.(木)

 2006年度に入院時食事療養費・生活療養費の大改革を行って以降、食事療養費の総額は大幅に減少。その一方で、委託費や食材費などの費用が増加しており、病院の給食部門の収支は大幅に悪化してしまった—。

 10月18日に開催された診療報酬調査専門組織の「入院医療等の調査・評価分科会」(以下、入院医療分科会)ではこういった資料が厚生労働省から提示されました。2018年度の次期診療報酬改定でどのような対応が行われるのか、今後の入院医療分科会や中央社会保険医療協議会の議論に注目する必要があります。

10月18日に開催された、「平成29年度 第10回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

10月18日に開催された、「平成29年度 第10回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

給食を全面委託している病院では、とくに収支悪化が厳しい

入院患者に提供される食事の費用については、厚生労働大臣が一定の基準に基づいて「食事療養費」を算出し、ここから患者負担(平均的な家計の食費から導いた標準負担額)を除いた分が【入院時食事療養費】(65歳以上の療養病床入院患者では【入院時生活療養費】、以下、両者を合わせて【入院時食事療養費】等とする)として医療保険から医療機関に支払われます。

【入院時食事療養費】等については、2006年度の診療報酬改定で従前の「1日単位」から「1食単位」に見直されました。3食すべてを必要としない患者(例えば午後に入院する患者や、午前中に退院する患者など)もいるため、いわば医療費適正化の一環として、細かな算定としたものです。

また2006年度の診療報酬改定では、常勤の管理栄養士配置や適時・適温の食事提供などを要件とする【特別管理加算】が【入院時食事療養費】等に吸収され、2012年度改定では常勤管理栄養士による栄養管理を評価する【栄養管理実施加算】が入院基本料に包括されることになりました。

さらに腎臓病や糖尿病の患者に対し、医師の処方せんに基づいて特別食を提供することを評価する【特別食加算】については、2006年度改定で、やはり従前の「1日単位」から「1食単位」に細分化するとともに、加算の引き下げ(1日につき350点→1食につき76円・1日に換算すると228円)も行われています。

入院時食事療養費制度の変遷。2006年度(平成18年度)の診療報酬改定で大きな見直し(1日単位→1食単位、特別管理加算の廃止など)が行われた

入院時食事療養費制度の変遷。2006年度(平成18年度)の診療報酬改定で大きな見直し(1日単位→1食単位、特別管理加算の廃止など)が行われた

 
今般、厚労省がこうした【入院時食事療養費】等の見直しによる影響を調査したところ、次のように、2006年度を境に大きな収入減となっていることが分かりました。

▼食事療養費総額は2006年度改定後に約2割(17.7%)減少し、その後、横ばいである

食事療養費総額は2006年度に大きく減少し、以降、横ばいとなっている

食事療養費総額は2006年度に大きく減少し、以降、横ばいとなっている

 
▼特別食加算の合計額は2006年度改定後に約5割(50.2%)減少し、その後、横ばいである
特別食加算についても、引き下げが行われた2006年度に大きく減少し、以降、横ばいとなっている

特別食加算についても、引き下げが行われた2006年度に大きく減少し、以降、横ばいとなっている

 
 さらに厚労省は病院の給食部門の収支を2004年度と20017年度で比較。その結果、患者1人1日当たりの収支は大幅に悪化し、とくに「給食を業者に全面委託している」病院において、悪化の度合いが厳しいことが分かりました。上記のように【入院時食事療養費】等の見直しによって収入が減少する一方で、人件費の高騰などによる委託費の増加、消費増税、給食用材料費の増加などによるものです。
給食部門の収支は、全面委託、一部委託、完全自営のいずれにおいても大幅に悪化している(その1、収入面は減少)

給食部門の収支は、全面委託、一部委託、完全自営のいずれにおいても大幅に悪化している(その1、収入面は減少)

給食部門の収支は、全面委託、一部委託、完全自営のいずれにおいても大幅に悪化している(その2、費用面は増加、結果として収支は大きく悪化している【桃色部分】)

給食部門の収支は、全面委託、一部委託、完全自営のいずれにおいても大幅に悪化している(その2、費用面は増加、結果として収支は大きく悪化している【桃色部分】)

 
 この結果を見た神野正博委員(社会医療法人財団董仙会理事長)は「予想以上にひどい」とため息を漏らし、消費増税に対する診療報酬での補填、働き方改革などとセットで検討するべきと訴えました。また石川広己委員(千葉県勤労者医療協会理事長)も「中医協でしっかり考えてもらわないと困る」と強調しています。

 消費税率が2014年度に8%に引き上げられ、医療機関の負担する控除対象外消費税(いわゆる損税)も拡大することから、特別の診療報酬プラス改定が行われました(患者負担などは消費税非課税のため、医療機関が物品購入などで支払う消費税はそのまま医療機関の負担となる)。その際、中医協の議論で「広く補填する必要がある」との見解がまとまり、全医療機関が算定できる入院基本料や初再診料などで特別のプラス改定が行われました。したがって、【入院時食事療養費】等の引き上げは行われていません。神野委員や牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長)らは、2014年度の特別のプラス改定について、より細かく検証すべきと提案しています。

また菅原琢磨委員(法政大学経済学部教授)は、2006年度改定での細分化によって「固定費の回収が難しくなっているのではないか」と指摘します。現在の【入院時食事療養費】は1食につき640円で、1日に換算すると1920円となり、従前の「1日単位」時点と同額です。しかし、食事を提供するに当たっては、食材費などの変動費だけでなく、食事提供の設備整備などに投下したコストなどの固定費がかかり、1食・2食しかた提供されない場合に、変動費は賄えるものの、固定費分については単純な3分割によって十分に賄えなくなっている可能性があるのです。

2018年度改定に向けて見直しが検討されることになりますが、【入院時食事療養費】の引き上げを行うのか、他の診療報酬項目で補填するのか、今後の議論に注目する必要があります。

2016年度改定で経腸栄養食品への給付見直し、医療現場には大きな影響なし

2016年度の前回診療報酬改定では、入院時の経腸栄養用製品の使用に係る給付の見直しが行われました。経腸栄養用製品には「医薬品」と「食品」とあり、両者で異なる給付額の均等を図るために、例えば「食品である経腸栄養用製品のみを使用して栄養管理を行っている場合、【入院時食事療養費】等を1割程度引き下げる」といった見直しが行われたのです。

2016年度の前回改定では、食品としての経腸栄養製品のみを経管栄養法で提供する場合の、入院時食事療養費などの引き下げが行われた。

2016年度の前回改定では、食品としての経腸栄養製品のみを経管栄養法で提供する場合の、入院時食事療養費などの引き下げが行われた。

 
厚労省はこの見直しの影響を調査しましたが、改定前の2015年6月と改定後の2017年6月とで、経腸栄養用製品の使用状況などに大きな変化はないことが分かりました(給付の下がる食品の経腸栄養用製品から、給付が変わらない医薬品の経腸栄養用製品へのシフトなどは生じていない)。医療現場において「必要な治療(経腸栄養用製品による食事提供も治療の一環と考えられる)が、給付の見直しに関わらず、適切に提供する」ことが継続されている状況を確認できます。
2018年度の前回改定の前後で、食事提供の状況に大きな変化はない(その1)

2018年度の前回改定の前後で、食事提供の状況に大きな変化はない(その1)

2018年度の前回改定の前後で、食事提供の状況に大きな変化はない(その2)

2018年度の前回改定の前後で、食事提供の状況に大きな変化はない(その2)

 
ただし市販流動食の費用は、改良など(缶からパウチ型へのシフトなど)に伴って増加しており(2015年6月から17年6月にかけて14.3%増加)、医療現場の負担が重くなっていると考えられます。この点を2018年度の次期改定に向けてどのように考えるのか、今後の議論を待つ必要がありそうです。

療養病棟でのデータ提出、「EF統合ファイル」提出義務には慎重意見

 また10月18日の入院医療分科会では、「慢性期病棟におけるデータ提出項目」も議題となりました。慢性期病棟などにおいてもデータ提出が浸透しているものの、現在のデータ提出項目は「急性期入院医療」に重きを置いており、慢性期病棟入院患者の状態把握などが十分に行えていません。

 そこで厚労省は慢性期病棟がデータ提出を行うにあたり、現在のDPCデータ様式1の中で「提出を求める」項目(逆に言えば一部は提出を求めない)、様式1にはないが「新たに提出を求める」項目を次のように整理しました。

【既存のDPCデータ様式1の中で、慢性期病棟でも提出が必要な項目】

▼患者の基本情報▼入院年月日、退院年月日、退院時転帰、退院後の在宅医療の有無▼ADL(入院時、退院時)▼認知症高齢者の日常生活自立度▼主傷病等のICDコード—など

※▼手術日▼TNM分類(悪性腫瘍の病期分類)▼化学療法の有無▼各疾患の重症度分類(脳卒中、心疾患、肺炎、狭心症、急性心筋梗塞、急性膵炎、熱傷)―などは提出を求めない

【新たに慢性期病棟で提出が必要となる項目】

▼慢性期の患者に特徴的な症状・状態の有無(月ごとに入力)(▽脱水▽摂食▽嚥下機能低下▽認知症の周辺症状▽発熱▽低栄養▽褥瘡▽疼痛の訴え—など)

▼要介護度(認定のある場合のみ、入退院時に入力)

このうち傷病名については、「慢性期病棟入院患者では複数の疾病を抱え、傷病の経過が長いために、『最も医療資源を投入した病名』の判断などが難しいのではないか」とも思われます。しかし、厚労省の調査によれば「慢性期病棟入院患者の8割超が4つ以下の傷病にとどまる」ことが明らかになっており、日本慢性期医療協会の副会長である池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長)から「現在の急性期を対象とした傷病名入力で問題ないのではないか」との見解が示されていることから、慢性期病棟での「特別の規定」などは設けられないことになりそうです。

この点、池端委員や神野委員らは「急性期病棟でも、慢性期に新たに求められる提出項目を『任意』提出とし、慢性期病棟でも提出不要とされた項目を『任意』提出できるようにすべき」と提案しています。急性期治療を終え、慢性期病棟に移った患者について、いわばエピソード単位での状態把握・分析などを行えるようにしておく必要があるとの考えに基づくものです。また本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は「療養病棟では死亡退院も多い。看取りに関連するデータ項目も付加すべき」と提案しました。

 
ところでデータ提出加算を取得するにあたり、提出するデータは簡易カルテである様式1のほかに、出来高情報であるEF統合ファイルなどもあります。仮に「療養病棟でもデータ提出を義務付ける」こととなった場合、すべての療養病棟がEF統合ファイル提出を行わなければならないのでしょうか。

DPC病棟や7対1病棟など、もともと出来高算定していた病棟と異なり、療養病棟入院基本料には多くの診療項目が包括されているため、EF統合ファイルの作成には相当の手間がかかりそうです。この点について池端委員らは「EF統合ファイルの取扱いは慎重に検討してほしい」と要望しています。

なお、療養病棟のすべてをデータ提出義務の対象とするのか、あるいは一定規模以上(例えば200床以上)の療養病棟のみに義務化するのかなどについてはまだ結論が出ていませんが、池端委員は「200床以上の療養病棟でもデータ提出は4割にとどまっている。仮に義務化するとしても、少なくとも年単位の経過措置を設けてほしい」と述べ、十分な期間をとった導入を求めています。

  

 

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