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病床機能報告 病床ユニット

診療報酬でも、「同一・隣接建物に住む患者」への訪問で減算などを検討—中医協総会(1)

2017.11.10.(金)

 2018年度の次期診療報酬改定において、▼医療機関に併設する有料老人ホームなどへの訪問について、コストに着目した評価を新設する▼末期がん患者に対する【在宅時医学総合管理料】においては、医療機関とケアマネとの連携を要件に設定する▼ターミナルケアを継続しながら、死亡直前に入院した場合でも、「看取り」として取り扱う▼一定要件の下で、複数医療機関からの訪問診療を認める—といった見直しを行ってはどうか―。

 11月10日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、在宅医療をテーマとしてこういった議論が行われました。

11月10日に開催された、「第369回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月10日に開催された、「第369回 中央社会保険医療協議会 総会」

患者が「入院医療」と「在宅医療」を選択できる体制が求められる

 地域包括ケアシステムの構築に向けて、「患者が希望に応じて、入院医療と在宅医療とを選択できるような体制」の確保、つまり必要な患者に対応できるだけでの在宅医療提供体制を整備することが重要課題となっています。

 厚生労働省は、「2018年度からの医療計画の中に在宅医療などの整備目標を記載する」「在宅医療に関するエビデンスを構築する」といった方針を定めるとともに、診療報酬での適切な評価を順次進めています。2018年度の次期改定に向けて、厚労省保険局医療課の迫井正深課長は、さまざまな提案を行いました。それぞれのポイントを眺めてみましょう。

施設総管などに着目し、同一建物減算のような規定を検討

 2016年度の前回診療報酬改定において、在宅医療の報酬体系を大きく組み替え、▼1か月に2回以上の訪問を行っているか▼1か月当たりの同一建物における訪問人数はどの程度か(1人か、2-9人か、10人以上か)▼対象患者は重症か—という3つの軸に沿って点数設定がなされています。

2016年度の診療報酬改定で、在宅医療の報酬体系は大幅に組み替えられた(施設総管を例に)

2016年度の診療報酬改定で、在宅医療の報酬体系は大幅に組み替えられた(施設総管を例に)

 
 今般、迫井医療課長は、有料老人ホームなどの入所者に訪問診療を提供するに当たって「当該住宅と医療機関が同の一建物、あるいは隣接しているか」という新たな評価軸の導入を提案しています。

 厚労省の調査によれば、▼有料老人ホームなどに居住する自立(1割弱)または要支援1・2(4-6割)の入所者にも月2回以上の訪問診療が行われている▼入所者がもっとも利用する在宅医療機関の1割程度は同一建物医療機関(当該住宅と医療機関とが同一の建物あるいは隣接している状況など、以下同)のである▼一部(5.5%)の医療機関では、訪問診療患者の過半が要介護1以下である—となっており、同一建物への訪問診療が一定程度行われている状況が分かります。同一建物への訪問は、当然、移動距離が短く、コストも小さくなります。

6-8割の医療機関は、同一建物以外の患家に訪問診療を行っているが、1割程度は「同一建物・隣接地」の患家に訪問を行っており、後者では移動コストが小さい

6-8割の医療機関は、同一建物以外の患家に訪問診療を行っているが、1割程度は「同一建物・隣接地」の患家に訪問を行っており、後者では移動コストが小さい

 
こうした状況を踏まえて迫井医療課長は上記の提案を行っています。例えば、同一建物の居住する要介護度の低い患者への訪問診療においては、より低額な報酬設定(例えば施設入居時等医学総合管理料など)を行うことなどが考えられます。この点、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は「医学管理の必要性は同一建物であるかないかで変わるものではない。訪問と医学管理を分解して考えるべき」と要望しましたが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「移動コストが小さいのであるから、施設入居時等医学総合管理料に差を設けるべき」と反対しています。

 なお「同一建物」の定義について、診療報酬・介護報酬の同時改定でもあり、両者で可能な限りの整合性を図ることになるでしょう(関連記事はこちら)。

 
また、2018年度から▼医療▼介護▼住まい—の3機能を併せ持つ『介護医療院』が新設されます。介護医療院は医療施設という位置づけであり、入所者へ外部から医療提供を行う場合の診療報酬の調整(医療施設であり、無制限に外部から医療提供することは認められない)について、介護療養や介護老人保健施設などと同様に考える方向も示されています。

介護保険施設(居住系サービス含む)では、医師配置の有無などによって、外部から提供可能な医療が規定されている

介護保険施設(居住系サービス含む)では、医師配置の有無などによって、外部から提供可能な医療が規定されている

末期がん患者への在総管など、ケアマネとの連携を要件に追加へ

 
 在宅医療技術の推進によって、末期がん患者が在宅療養を送り、在宅で最期を迎えるケースが増加しています。多くのケースでは、在宅医療だけでなく在宅介護(訪問看護や訪問介護など)の双方が必要となりますが、中には「在宅医療を提供する医療機関と、介護保険サービスの調整を行うケアマネジャーとの連携が十分でなく、適切なサービスが十分に行われない」こともあるようです。

 末期がん患者では急速に機能が低下するため、予めケアマネが主治医から「予後」や「予測される状態」などの情報を得て、それを十分に踏まえて適切なケアプランを作成することが必要です。迫井医療課長は、こうした点を踏まえて、末期がん患者に対する在宅時医学総合管理料などの要件に「医療機関とケアマネとの情報共有・連携」などを設定してはどうかと提案しました。具体的な連携内容などは、介護報酬との擦り合わせも行ったうえで設定されます。

 この点、松本純一委員は「ケアマネジャーの中には医療の必要性を理解できず、医師が『訪問看護が必要』との意見を述べても、十分に勘案せずに訪問介護で代替してしまうこともある」と述べ、迫井医療課長提案そのものに反対はしませんでしたが「ケアマネジャーによる医療の必要性の十分な理解」を大前提に据えるよう注文を付けています。

最期の最期に入院してしまった患者も、一定要件下で「看取り」にカウント

 高齢化の進展は「死亡者数の増加」も招きます。この点、「住み慣れた家で最期を迎えたい」という高齢者の希望に応えるため、「在宅での看取り」が推進され、例えば(1)在宅で看取りを行った場合の加算(在宅看取り加算やターミナルケア加算)の設定(2)高い診療報酬が算定できる「機能強化型の在宅療養支援診療所」(機能強化型在支診)において、施設基準に一定の「在宅看取り」件数を設定—などの手当てが行われています。

 ところで、「最期を自宅で迎えたい」と考える人もいますが、「できるだけ自宅で暮らしたいが、家族に迷惑をかけないよう、最期の最期は医療機関を希望する」と考える人もいます。従前は「最期の最期に入院してしまった」患者には、人生の最終段階に対する医療(ターミナルケア)を継続して提供したとしても、診療報酬上の十分な評価は行われていませんでした。

そこで、2012年度の前回同時改定で▽看取り行為そのものを評価する【在宅看取り加算】▽看取りに至るまでの継続的な医学管理を評価する【ターミナルケア加算】―に細分化され、後者の【ターミナルケア加算】は、最期に入院してしまった患者(往診や訪問診療から24時間以内の在宅以外で死亡した患者)でも算定することが可能となっています。

しかし、(2)の機能強化型在支診などの施設基準では、「在宅での看取り」件数が評価対象となり、「最期の最期に入院してしまった」患者にターミナルケアを提供していたとしても、「看取り」件数にはカウントされないという課題があります。そこで迫井医療課長は、「在宅療養患者が、在宅主治医と病院との連携の下で、本人・家族の希望に基づき、最期を入院で看取った場合の評価」を行ってはどうかと提案しています。

機能強化型の在支診では、「看取り」件数が施設基準に設定されている

機能強化型の在支診では、「看取り」件数が施設基準に設定されている

 
具体的な点数設計などは今後の検討を待たなければいけませんが、例えば「ターミナルケア加算の算定対象をより広げる」ことや、「新たな類型の看取り加算を新設する」ことなどが思い浮かびます。

この点、松本純一委員は「在宅療養の計画書に『最期は医療機関での看取りを希望する』欄を設け、そこにチェックがある場合には、一定期間のターミナルケア実績があれば事後的に看取りとして評価する」といった仕組みも考えられるのではないか、と提案しています。この場合、「最期は医療機関」であっても看取りとしてカウントされ、機能強化型在支診の施設基準を満たしやすくなりそうです。

 
また、ターミナルケア・看取りに関しては、厚労省が2015年3月に「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を策定しており、患者の意思を尊重した医療提供方針を策定するよう、求めています(意識障害などで確認できない場合には、家族への確認や、患者の意思の推定、医療・ケアチームでの慎重な判断などを求めている)。

しかし、ガイドラインの認知・利用状況は芳しくなく、医師の33.8%、看護師の41.4%が「ガイドラインを知らない」という状況です。迫井課長は、患者・家族の意思に沿った看取りを進める必要があると考え、「ガイドラインを参考に行う医療提供方針の決定プロセス」などを診療報酬上で評価する考えも示しました。この点、ガイドラインに沿った場合に「加算」で評価する手法も考えられますが、支払側の幸野委員・吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、より厳しく「最終的には、要件化してはどうか」との見解も示しています。

一定要件下で、複数医療機関からの訪問診療を認める

 在宅医療には、計画的な診療提供を行う「訪問診療」と、緊急時に患者の求めに応じて訪問を行う「往診」とがあります。

前者の訪問診療は、現在「1人に患者に対し、1つの保健医療機関の保険医の指導医管理の下に継続して行われる」こととされており、別の医師が代わりに訪問を行った場合には診療報酬を算定できません(訪問診療料は規定に照らし算定不可、患者の求めでないので往診の算定も不可)。

しかし、▽医療の高度化(専門分化)▽疾病構造の多様化・複雑化(複数疾病を抱える高齢者の増加)▽医師の負担軽減―を考慮したとき、例えば、内科の医師と皮膚科の医師が連携して、交互に訪問診療を行い、内科医師が基礎疾患を管理し、皮膚科医師が褥瘡を管理する、といった形態が効果的なこともあります。ただし、在宅医療の中身は「見えにくい」ために、無制限に複数医療機関からの訪問診療を可能とすれば、不適切事例が誘発されかねません。

そこで迫井医療課長は、▼在宅における療養計画に基づく▼患者・家族の同意を得る—ことを最低条件として、「在宅主治医が、他の医療機関に当該患家への訪問診療を依頼し、それが実施される」ことを診療報酬で評価してはどうかとの考えを示しました。診療側委員はこの方針を歓迎、今村聡委員(日本医師会副会長)らは「1人開業医では24時間の在宅医療は行えない。どうしても計画通りに訪問できないような場合には、信頼のおける連携医師に代わりの訪問を依頼する(患者らの同意が前提)ケースも、診療報酬で評価すべき」と要望しています。

一方、支払側の吉森委員・幸野委員は「専門の異なる診療科に限定する」(上記の内科と皮膚科など)ことが必要との見解を示しており、今後、どのように調整されるのか注目されます。

 
また迫井医療課長は、地域医師会・自治体などが協力し、「在支診以外の医療機関が他医療機関と連携して24時間対応を含めた在宅医療体制を構築し、訪問診療を提供する」ことを評価(いわば、在宅医療連携ネットワークの評価)する考えも示しました。在支診以外の一般診療所が、より積極的に在宅医療提供に乗り出すことが期待されます。

緊急往診加算の要件を見直し、さらに不適切往診の是正を図る

往診に関しては、【緊急往診加算】の見直しが論点に上がっています。現在、▼急性心筋梗塞▼脳血管障害▼急性期腹症—などが予想され、速やかな往診が必要な患者への往診を評価していますが、医療現場の実態を精査し、要件の見直しが検討されます(要件を厳格化して狭める方向の見直しも、対象疾患を追加し広める方向の見直しも考えられる)。

往診料の概要

往診料の概要

 
さらに、一部で不適切な往診(訪問サービス契約に基づき、「訪問依頼から長時間経過した後に往診される」ケース、「患者の状態に関わらず往診される」ケースなど)がなされている実態があり、迫井医療課長は適切な運用に向けた「往診要件の明確化」を図る考えも示しています。
訪問サービス契約の下などで、不適切な往診が行われている事例があるという

訪問サービス契約の下などで、不適切な往診が行われている事例があるという

 
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