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医療計画における在宅医療の評価、「退院支援加算を算定する病院数」などを指標に―厚労省・在宅医療ワーキング

2016.9.2.(金)

 2018年度からの第7次医療計画においても、都道府県は「在宅医療の整備目標」を記載し、目標達成に向けた進捗状況の評価を行う必要がある。評価の際の指標について、新たに「在宅患者訪問診療料や往診料を算定している医療機関数」や「24時間体制をとる訪問看護ステーション数」のほか、「退院支援加算を算定している医療機関数」など診療プロセスに着目した項目を追加する―。

 こういった方針が、2日に開催された「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」(以下ワーキング)でまとめられました(関連記事はこちら)。

 近く、親組織である「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告され、第7次医療計画の策定指針に盛り込まれます。

9月2日に開催された、「第2回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」

9月2日に開催された、「第2回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」

在宅医療と介護は相補関係、医療計画と介護保険事業計画などとの整合性が重要

 都道府県が作成する医療計画には、基準病床数のほか、いわゆる5疾病・5事業、さらに在宅医療について「整備目標」などを記載する必要があります。さらに、目標の記載にとどまらず、「どこまで進捗したのか」を評価し、PDCAサイクルを回し、実効性を高めていくことが求められています。

 ワーキングでは、2018年度からの第7次医療計画において在宅医療の整備目標や評価指標をどのように考えるべきかを議論しています。8月3日の前回会合では、「在宅医療と介護保険施設は相補関係にあるが、介護保険施設の整備状況には地域でバラつきがあるため、全国一律の計算式(在宅医療整備目標)は示さない」「プロセスの評価を充実していく必要がある」といった方向が固められました。

 2日に開かれた会合では、こうした方向などを踏まえ整理案が厚労省医政局地域医療計画課在宅医療推進室の伯野春彦室長から提示されました。次のような内容です。

(1)在宅医療提供体制の整備目標は、都道府県や市町村関係者による「協議の場」を設置し、「介護保険事業計画などとの整合性」が図れるように検討し、設定する。た国は、「サービス付き高齢者向け住宅の整備計画」「療養病床の動向」など在宅医療を考える上での留意事項や協議の進め方を都道府県に示す。

(2)在宅医療の進捗状況を評価する指標として、「医療サービスの実績に着目した指標」「高齢者以外の小児・成人に対する医療体制を把握する指標」「在宅死亡者数のみでない『看取りに至る過程』を把握するための指標」を充実する。

(3)具体的な施策を進めるために、「在宅医療の圏域設定」と「課題の把握」を徹底する必要がある。さらに「地域住民や急性期医療機関などへの普及啓発」「市区町村と都道府県の連携」が重要で、とくに「都道府県による市町村の『在宅医療・介護連携推進事業』への支援」について医療計画に記載することを求める。

 (1)は、在宅医療と介護保険施設が「相補関係」(例えば、介護保険施設への入所待ちの高齢者には一定程度在宅医療が必要だが、施設に入所するとその分、在宅医療ニーズが減少する。逆も然り)に注目した考え方です。この点について鈴木邦彦構成員(日本医師会常任理事)は「サ高住の整備計画との整合性も重要である」と改めて強調しています。

 また新田國夫構成員(全国在宅療養支援診療所連絡会会長)は、「市町村が医療計画を作れるような情報を都道府県から提供する必要がある」と指摘。医療計画は都道府県が作成しますが、例えば東京都稲城市のように一部の市町村でも、独自の「医療計画」を策定する動きが出ています。とくに在宅医療については、市町村の地域支援事業の一環として「在宅医療・介護連携推進事業」を行う(2018年度から全市町村で全8事業を実施する)ことになっており、医療・介護連携を実効性あるものにするために、新田構成員はこうした指摘を行っていると言えます。

 なお、伯野在宅医療推進室長は、「(1)の『協議の場』と(3)の『圏域』が必ず1対1で対応しなければいけないわけではない。地域の実情にあわせて柔軟に設定することも可能である」旨を説明しています。

在宅医療は「看取り」機能だけではない、在宅死亡数のみでない総合的な評価が必要

 (2)の指標について伯野在宅医療推進室長は、▽在宅患者訪問診療料、往診料を算定している医療機関数▽24時間体制をとる訪問看護ステーション数▽歯科訪問診療料を算定している医療機関数▽在宅患者訪問薬剤管理指導料(診療報酬)、居宅療養管理指導費(介護報酬)を算定している施設数▽退院支援加算を算定している医療機関数―などを具体例としてあげました。

 これまで「在宅療養支援診療所数」などのストラクチャーに着目した指標が設定されていますが、「在支診の届け出数と、在宅医療の実施状況は異なる」「在支診のみが在宅医療を行っているわけではない」といった指摘を踏まえたものです。

 また、退院支援加算は、2016年度の診療報酬改定で従前の退院調整加算を大幅に組み替えた診療報酬項目で、特に点数の高い加算1では「介護支援連携指導料」の算定回数が施設基準に組み込まれるなど、「医療・介護連携」を推進するものと期待されています。評価指標として有用と考えられます。

 なお、在宅医療の機能は(a)退院支援(b)日常の療養支援(c)急変時の対応(d)看取り―の4つあり、「在宅死亡者数だけを指標とするのは好ましくない」という池端幸彦構成員(日本慢性期医療協会副会長)の指摘を踏まえた注釈も付けられています。

 

 また(3)の施策推進では「在宅医療・介護連携推進事業」が重視されていますが、齋藤訓子構成員(日本看護協会常任理事)や越田理恵構成員(金沢市保健局長)から「事業のベースとなるのは、8事業のうち『課題抽出』であるが、もっとも進捗が遅れている。この『課題抽出』事業を進めるよう市町村を支援するべきである」と指摘が出されています。

在宅医療・介護連携推進事業の概要。2018年度から8つの事業すべてを、全市町村で実施しなければならない

在宅医療・介護連携推進事業の概要。2018年度から8つの事業すべてを、全市町村で実施しなければならない

在宅医療・介護連携推進事業は、その内容によって、また市区町村によって進捗状況に大きなバラつきがある

在宅医療・介護連携推進事業は、その内容によって、また市区町村によって進捗状況に大きなバラつきがある

 さらに在宅医療の前提となる「在宅復帰」を進めるためには、入院医療機関における(院外も含めた)多職種連携(前述の退院支援加算もこの1つ)が重要であることから、猪口雄二構成員(全日本病院協会副会長)や角野文彦構成員(滋賀県健康医療福祉部次長)から、MSW(メディカルソーシャルワーカー)や看護師、ケアマネジャーの活用についても医療計画の中で勘案してはどうかとの提案がなされています。

フレイル・ロコモ対策、医療計画や介護保険事業計画の中にも位置づける方向へ

 2日のワーキングでは「高齢化に伴い増加する疾患」として、フレイル(虚弱)とロコモティブシンドローム(運動器障害)について、医療計画の中でどのように取り扱うかという議論も行われました。

 フレイル(虚弱)は、「健常」と「要介護状態」との中間的な段階され、生活機能障害や死亡などの転記に陥りやすい状態を意味し、安倍晋三内閣が閣議決定した「ニッポン一億総活躍社会」でもフレイル対策の重要性が指摘されています。参考人として出席した東京大学高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授は、高齢者において「社会とのつながり」が途絶えがちになると、「生活範囲の縮小」「心の虚弱」「口腔機能低下」「栄養不足」「身体機能の低下」という『フレイルドミノ』が生じてしまうと指摘し、今後の医療・介護においてフレイル対策が極めて重要であると強調しています。

フレイルと対策、フレイルになる前の段階での「予防」が極めて重要とされる

フレイルと対策、フレイルになる前の段階での「予防」が極めて重要とされる

 またロコモティブシンドロームは、運動器の障害によって移動機能の低下を来した状態であり、身体的フレイルの一要素でもあります。参考人として出席した九州労災病院の岩本幸英院長(前日本整形外科学会理事長、九州大学名誉教授)は、「関節疾患や骨折・転倒などを『運動器の障害』と広く捉えると、要支援・要介護状態の最多要因(22.9%)になる」ことを紹介し、ロコモ対策の重要性を強調。さらに「医療のみならず、予防・介護との連携、自治体を含む関係期間の連携を強化をする必要がある」と訴えました。

ロコモティブシンドロームの概要

ロコモティブシンドロームの概要

 ワーキングの構成員も、フレイル・ロコモ対策の重要性を認識。「医療計画に記載すべき『保健・医療・介護(福祉)の総合的な取り組み』の中に位置づけるべき」「介護保険事業計画の中で『介護予防』として明確に記載すべき」との意見が出されています。

医療計画には、基準病床数や5疾病・5事業などのほか、『その他の医療提供体制の確保に関し必要な事項」も記載することになっており、その中に「(9)保健・医療・介護(福祉)の総合的な取り組み」も含まれる

医療計画には、基準病床数や5疾病・5事業などのほか、『その他の医療提供体制の確保に関し必要な事項」も記載することになっており、その中に「(9)保健・医療・介護(福祉)の総合的な取り組み」も含まれる

 
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