2018年度からの医療計画、CT・MRIの配置状況や安全確保状況なども考慮―厚労省・医療計画検討会(2)
2016.7.15.(金)
2018年度からの第7次医療計画を策定するに当たっては、CTやMRIといった機器の配置状況や安全確保の状況、さらに医師確保策についても十分に検討するべきではないか―。
15日に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」では、厚生労働省からこういった論点が提示されました(関連記事はこちら)。
CTの43%、MRIの33%はクリニックに配置されているが、保守点検状況は不明
我が国では先進諸国に比べて、CT・MRIの配置が際立って多いというデータがあります。さらに、厚労省の分析によれば「CT・MRIの配置が多くなると、CT・MRI撮影患者が増える」という、いわば供給が需要を生んでいるかのような状況も分かっています。
一方で、CT・MRIが極めて多く配置されている地域では、必ずしも効率的な稼働がなされていないことも分かりました。
今後の医療提供体制を考える際には、高額な医療機器の適正配置も重要な視点となるため、厚労省は次期医療計画の策定に当たっては「CT・MRIなどの配置状況把握」を行い、例えば共同利用の推進などを推進したい考えです。
またCT・MRIがどこに配置されているのかを詳しく見てみると、CTの57%、MRIの67%は病院に設置されています。これらの保守点検状況を見ると、例えばマルチスライスCTや1.5テスラ以上のMRIなど高度機器では、適切に実施されている状況が分かりました。ただし、シングルスライスCTや1.5テスラ未満のMRIなどでは、保守点検が適切に実施されていない病院も散見されます。
また、逆に考えるとCTの43%、MRIの33%はクリニックにありことになりますが、保守点検の実施状況は明らかになっていません。仮に保守点検が適切に行われていないとなれば、医療安全上、極めて問題があると考えざるを得ません。
このため厚労省は、医療計画の策定に当たって「機器の保守点検も含めた安全管理の取り組み状況」も考慮する必要があると考えているようです。
この点について多くの構成員から「CT・MRIではなく、医療費に与えるインパクトが大きく、安全性の確保も重要となるPETや重粒子線治療機器の状況を把握すべきではないか」との指摘が出されましたが、厚労省は、これらに関する詳細なデータを把握しておらず、今後どのように内部で検討するのかが注目されまし。
医師確保目標の設定に当たり、「医師の年齢」なども考慮する必要がある
後者の「医師確保」については、現在、次のような課題があることが厚労省から示されました(関連記事はこちら)。
▽医師充足地域と不足地域の格差が拡大している(偏在が進んでいる)
▽臨床医が少ない地域では、65歳以上の高齢医師の割合が高く、逆に40歳未満の若手医師の割合が低い(時間の経過とともに医師不足が極めて深刻になる)
▽都道府県によって、どの診療科で医師が充足し、どの診療科で不足しているかはさまざまである
こうした状況を踏まえて、厚労省は、医療計画野菜かで医師確保対策などを検討するにあたって、▽どのような範囲で目標値を定めるか(都道府県単位か、2次医療圏単位か)▽どのような領域で目標値を立てるか(診療科か、5事業か)▽どのような点に考慮して目標値を定めるか(人口、面積、医師の年齢構成など)―といった論点を提示。
さらに目標値達成に向けて、▽都道府県にどのような権限を付与するか▽地域医療支援センターの役割をどう強化するか▽国と都道府県の役割分担をどう考えるか―といった論点も示しています。
この点に関連して田中構成員は、「クリニックの医師の年齢構成」も重要な視点であると指摘します。地方ではクリニックが重要な医療提供体制です。しかし、その開設者は高齢の医師であることが多く、後継者がいない場合には閉院となってしまいます。そうした場合、病院に入院する患者が増加すると考えられるため、今後この点を十分に考慮する必要があるというのです。
【関連記事】
次期医療計画での基準病床数の算定式、平均在院日数の動向は地域別に考えるべきか―厚労省・医療計画検討会(1)
5疾病・5事業は第7次医療計画でも維持、肺炎は脳卒中対策などの中で勘案―厚労省・医療計画検討会(2)
2次医療圏、5疾病・5事業それぞれの特性も踏まえた設定を―厚労省・医療計画検討会(1)
疾病ごと・事業ごとの医療圏設定推進など、2018年度からの第7次医療計画に向けて検討―厚労省・医療計画検討会
2018年度の医療計画・介護計画策定に向け、総合確保方針見直しへ―医療介護総合確保促進会議
病床機能報告の病床数と地域医療構想の必要病床数、「一致する性質のものでない」ことを確認―地域医療構想GL検討会
「救命救急やICUは高度急性期」など、特定入院料と病棟機能との関係を一部整理―地域医療構想GL検討会
地域医療構想策定後はもちろん、策定前から地域医療の課題抽出をすべき―地域医療構想策定GL検討会
「病棟の機能」の再議論望む声相次ぐ―地域医療構想GL検討会
「あるべきでない地域差」是正に向け、市町村へのインセンティブ付与などを検討―介護保険部会
在宅医療・介護連携の推進、市町村と医師会との連携が不可欠―社保審・介護保険部会
軽度の要介護者への生活援助サービス、介護保険から地域支援事業に移行すべきか―社保審・介護保険部会
自由開業の制限や病院管理者要件の見直しなど、規制的な医師偏在是正策を検討―医療従事者の需給検討会