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2025年の病床必要量が既存病床を大きく上回る地域、基準病床数の毎年確認などで対応―地域医療構想ワーキング(1)

2016.8.31.(水)

 病床過剰地域ゆえに現段階で増床はできないが、「病床の必要量」(地域医療構想)が将来においても既存病床数を大きく上回るために「将来的に増床する必要がある」地域では、基準病床数を毎年設定することや、特別な事情に対応するための特例措置(医療法第30条の4第7項)で対応する―。

 こうした方向が、31日に開かれた「地域医療構想に関するワーキンググループ」(以下、ワーキング:「医療計画等の見直しに関する検討会」の下部組織)で固まりました(関連記事はこちら)。

 最終的には親会議である「医療計画等の見直しに関する検討会」に報告され、2018年度からの医療計画策定指針の中に規定することになります。

8月31日に開催された、「第2回  地域医療構想に関するワーキンググループ」

8月31日に開催された、「第2回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

大阪や東京など都市部では、高齢化の進展で「病床の必要量」が大きくなる

 医療計画では、地域の病床数上限とも言える「基準病床数」を記載します。これを超える病床整備は事実上できません(保険指定がなされない)。

 一方、現在、各都道府県で策定が進められている地域医療構想では、2025年における医療ニーズに対応するための「病床の必要量」を定めます。高度急性期、急性期、回復期、慢性期の機能ごとにどれだけのベッド数が必要となるかを定めるものです。

 一部の都道府県では地域医療構想の策定が完了し、公表されていますが、その中で一見不思議な状況が発生しています。それは、大阪府が典型的ですが、「(1)病床の必要量」(大阪府では10万1471床)>「(2)既存病床数」(同9万2000床弱)>「(3)基準病床数」(同6万7263床)という状況です。

 (2)と(3)を見れば分かるように、既存病床数が基準病床数を超えている病床過剰地域であるため、大阪府では現在、増床はできません。一方で、(1)と(2)の比較で分かるように、2025年にかけて1万床程度の増床が必要となるのです。こうした減少は、今後、急速に高齢化が進むと考えられる都市部で生じる可能性が高く、実際に、東京都でもこうしたギャップが発生しています。

 では、こうした「増床したいのだが、できない」という事態に、どのように対応すべきなのでしょうか。厚生労働省は、31日のワーキングで、次の2つの方策で対応する考えを提示しています。

(a)高齢化の進展などに伴う医療需要の増加を毎年評価するなど、基準病床数を確認する

(b)医療法第30条の4第7項の「基準病床数算定時の特例措置」で対応する

 (a)は、いわば「基準病床数を毎年見直す」ということです。ただし、既存病床数のほうが病床の必要量よりも多い地域などでは、この見直しは意味をなしません。あくまで「病床の必要量が、基準病床数を大幅に上回る地域」が対象となります。

 (b)は、「▽急激な人口の増加▽特定の疾病の罹患者の異常増―等がある場合には、厚生労働大臣と協議の上、基準病床数を増やせる」という規定(医療法第30条の4第7項)を、上記の場合にも適用可能とするというものです。厚労省は「高齢化の進展は、同項の趣旨に合致する」と考えています。

 この2つ対応策をとる方向はワーキングでも受け入れられています。中川俊男構成員(日本医師会副会長)は、「基準病床数が、地域医療構想の実現を妨げることがあってはいけない。そこが最重要ポイントである」と述べており、(a)(b)の対応案は、まさにこの考えを踏まえたものと言えます。

 今後、親組織である「医療計画等の見直しに関する検討会」に議論の場を移すことになります。

 なお、医療費を支払う立場にある本多伸行構成員(健康保険組合連合会理事)は、「まず近隣県と連携し、不足する分をカバーできないかを検討するべきではないか」と提案しました。しかし、今村知明構成員(奈良県立医科大学医学部教授)は、「大阪でオーバーした患者の1割でも、隣県である奈良県で対応することになれば、奈良県の医療提供体制が崩壊(パンク)してしまう」と反論しています。

一般病床の基準病床数、「医療資源投入量175点未満の患者」をどう考えるか

 基準病床数の計算式は、現在のところ、下図のように設定されています。31日のワーキングでは、基準病床数の計算式を次のように見直す方向も固められました。7月29日の前回会合での議論を踏まえたものです。

基準病床数の算定式

基準病床数の算定式

【一般病床】

(i)「性別・年齢階級別人口」は、従来どおり(医療計画策定時における公式統計(住民基本台帳、国勢調査)による夜間人口)とする

(ii)「性別・年齢階級別一般病床退院率」は従来どおりとする(長期療養のための病床でないため、入院率などは用いない)

(iii)「平均在院日数」については、地域差を適切に反映(例えば、すでに平均在院日数の短縮がかなり進んでいる地域では、その事情を汲むなど)するほか、「医療資源投入量の少ない患者」の取り扱いを検討する

(iv)「流出超過加算」については、「特に必要な場合に都道府県で調整する」仕組みとする

(v)「病床利用率」については、地域医療構想と同様に「一般では◯%」「療養では◆%」という形で全国一律のものとする。また都道府県が過剰病床を抑えることを可能とするために、利用率に「下限値」など「一定の範囲」を設定する

【療養病床】

(i)特別養護老人ホーム・老人保健施設分である「入所率」を削除し、あわせて「介護施設対応可能数」も削除する(これまで医療療養で介護ニースに対応してきたが、介護施設の整備などが進んでいるため)

(ii)在宅医療の整備状況が地域で異なることを踏まえ、「都道府県において、必要に応じて減ずる」こととする

(iii)介護療養などの移行先の議論を踏まえて、「将来的に他の病床などでの対応が見込まれる分」を必要に応じて見直す

 

 このうち(iii)の「医療資源投入量の少ない患者」の取り扱いとは、例えば「一般病床に入院する患者で、1日当たりの医療資源投入量が175点未満の患者は退院間近である」という場合に、退院支援をより積極的に進めることで平均在院日数のさらなる短縮を検討するといったイメージです(関連記事はこちら)。

 しかし、厚労省の現状の調査分析では「一般病床に入院する医療資源投入量175点未満の患者像」がまだ明確になっていません(例えば抗がん剤治療で入院する患者のインターバル期間というケースも考えられ、この場合、退院促進は難しい)。なお、31日のワーキングでは相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)ら多くの構成員から「違和感がある」との指摘が出ています。

 なお、相澤構成員は「基準病床数について、一般病床と療養病床に区分して設定すべきではないか」と提案。厚労省医政局地域医療計画課の担当者も「将来的に検討していく必要がある」との考えを示しています。

 

 ワーキングでは、次回会合で議論の整理を行い、「基準病床数の計算式見直し」や「基準病床数と病床の必要量の関係」について、親組織「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告します(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

【お詫びと訂正】

 記事中、中川構成員の役職が日本医師会常任理事になっておりました。正しくは副会長です。お詫びして訂正いたします。記事は修正済です。

 
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