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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

東京都、2025年には現在よりも8000床多い病床が必要だが、直ちに増床はしない―都地域医療構想説明会

2016.8.30.(火)

 東京都が作成した地域医療構想では、2025年における病床の必要量が11万3764床で、既存病床数(10万5000床)よりも8000床ほど多いが、今後の受療動向の変化や医療技術の進歩などで必要量は変動することも予想されるため、直ちに増床しなければいけないとは考えていない―。

 29日に東京都が開催した「地域医療構想説明会」で、都福祉保健局医療政策担当部の矢沢知子部長はこのようにコメントしています(都のサイトはこちら)。

 都では今秋から地域医療構想調整会議を開催し、構想の実現に向けて医療関係者間の話し合いを進めていく考えです。

8月29日に東京都が開催した、地域医療構想説明会

8月29日に東京都が開催した、地域医療構想説明会

患者の流出入を勘案すると、東京では2025年に11万3764床が必要

 東京都では、厚生労働省のまとめたガイドラインに沿って、この7月(2016年7月)に地域医療構想を策定・公表しました。29日には、地域医療構想が求められる背景、都の構想の内容、都独自の取り組みなどが詳説されたほか、会場(主に医療機関)からの質疑に対する回答が行われました。

 このうち各医療機能の「病床の必要量」を見ると、高度急性期1万588床(全体の14.0%)、急性期4万2275床(同37.2%)、回復期3万4628床(同30.4%)、慢性期2万973床(同18.4%)で、合計11万3764床となりました。東京都の既存病床数は10万5221床(2016年4月1日現在)であるため「8543床程度不足している」計算になります。

東京都における2025年の病床の必要量(上表)と、各構想区域における必要量(下表)

東京都における2025年の病床の必要量(上表)と、各構想区域における必要量(下表)

 東京都は、大阪府と同様に、「病床の必要量」(11万3764床)>「既存病床数」(10万5221床)>「基準病床数」(9万5627床)となっており、「病床過剰地域でありながら、病床が不足している」という状況にあることが分かります。

2015年7月における病床機能報告の結果、東京都では高度急性期、急性期が多く、回復期が極端に少ない

2015年7月における病床機能報告の結果、東京都では高度急性期、急性期が多く、回復期が極端に少ない

 この点について矢沢医療政策部長は、▽介護療養病床などの新たな移行先の議論が進んでいる途中であり、その影響を今後踏まえる必要がある▽患者の受療動向が今後変化する可能性がある▽病床稼働率が医療機関の取り組みにより変化する可能性がある▽医療技術の進歩に伴い、医療の内容や入院日数が変化する可能性がある―ことをあげ、「直ちに増床するわけではない」と説明。市区町村とも協議しながら2018年度からの新たな医療計画における基準病床数の中で考えていくことを強調しています。さらに矢沢医療政策部長は、急性期機能の病床稼働率78%(厚労省の作成した「地域医療構想策定ガイドライン」で規定)について「低すぎるのではないか」とも付言しています(関連記事はこちら)。

 なお、東京都には、「区中央部を中心に特定機能病院など高度医療提供施設が集中している」一方で、「高齢者人口が今後急激に増加し、高齢者の単独世帯がさらに増えるが、慢性期機能が不十分である」という特性があるため、▽高度急性期、急性期、回復期については大きな流出入はない▽慢性期については区部から多摩地方・他県への流出が大きい―状況にあることが改めて明確になっています。

東京都における現在の患者の流出入状況、高度急性期から回復期にかけては大きな流出入はないが、慢性期では区部から地方への流出が大きい

東京都における現在の患者の流出入状況、高度急性期から回復期にかけては大きな流出入はないが、慢性期では区部から地方への流出が大きい

 2015年7月時点で各医療機関が自院の病棟の機能をどう考えているのか(同年10月の病床機能報告)を見ると、高度急性期2万3427床(全体の22.7%)、急性期4万8327床(同46.7%)、回復期8577床(同8.3%)、慢性期2万3075床(同22.3%)という状況です。上記の「病床の必要量」と比べると、高度急性期で6539床超過、急性期で6052床超過、回復期で2万6051床不足、慢性期で2102床超過となっています。

 また在宅医療になどについては、1日当たり19万7277人分が必要と推計され、矢沢医療政策部長は「現在の2倍整備しなければいけない」とコメント。今秋から開催される調整会議において、「高度急性期や急性期などから回復期への移行」や「在宅医療提供体制の整備」を中心として、積極的な議論が進められる模様です。

疾病や事業の特性、医療資源に応じた「事業推進区域」を設定

 ところで東京都では、病床の必要量を勘案する「構想区域」(二次医療圏がベースとなる)とは別に、疾病や事業の内容・特性、さらに医療資源(例えば総合周産期医療センターの整備状況など)に応じた「事業推進区域」を設定します。例えば周産期搬送体制については、都内を8ブロック(▽墨田区などの区東部ブロック▽葛飾区などの区東北部ブロック▽港区、中央期などの区中央部ブロック▽大田区、品川区の区南部ブロック▽渋谷区などの区南西部ブロック▽新宿区などの区西部ブロック▽豊島区などの区西北部ブロック▽多摩市、八王子市などの多摩ブロック)に分ける一方で、小児救命については、4ブロック(▽墨田区などの区東ブロック▽豊島区などの区北ブロック▽大田区などの区南ブロック▽八王子市などの多摩ブロック)とするなど、柔軟な医療提供体制を組んでいくとしています。

東京都が設定する事業推進区域は、疾病や事業の特性・内容や、医療資源に応じて柔軟に設定される

東京都が設定する事業推進区域は、疾病や事業の特性・内容や、医療資源に応じて柔軟に設定される

 2018年度からの第7次医療計画では、▽脳卒中や急性心筋梗塞など緊急性の高い医療については、緊急時搬送体制を勘案した圏域▽がんなど緊急性が相対的に低い医療では、医療資源の実情に応じた広域的な圏域―を設定する方向で検討が進んでおり、この考え方と整合性がとれています。

地域医療構想の実現に向けて「4つの基本目標」を設定

 また矢沢医療政策部長は、地域医療構想を実現するために次の4つの基本目標を設定。ここでは一定の自由度を持たせた上で、「都民、行政(東京都、区市町村)、医療機関、医療関係団体、保険者などが協力して、効率的かつ質の高い医療提供体制を確保していくことが必要」と強調しています。

(1)高度医療・先進的な医療提供体制の将来にわたる進展(高度医療提供体制のさらなる充実と、大学病院と地域医療機関との連携強化、卒後教育・復職支援の充実など)

(2)東京の特性を生かした切れ目のない医療連携システムの構築(救急医療の充実、在宅移行支援の充実、災害医療体制の強化など)

(3)地域包括ケアシステムにおける治し、支える医療の充実(介護療養の廃止を踏まえた「住まい」の確保や多職種連携、看取りまでの支援など)

(4)安心して暮らせる東京を築く人材の確保・育成

 
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