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市町村も在宅医療の提供体制に目を向け、都道府県がより広域的な対応を―厚労省・神田医政局長

2016.7.1.(金)

 今後は、市町村も医療提供体制(特に在宅医療)の整備に目を向ける必要があり、都道府県はより広域的な視点で市町村をサポートする必要がある―。

 厚生労働省医政局の神田裕二局長は、6月30日に開かれた日本慢性期医療協会の通常総会後の講演で、このような考えを述べました。

6月30日に開かれた日本慢性期医療協会の通常総会後に講演した、厚生労働省医政局の神田裕二局長

6月30日に開かれた日本慢性期医療協会の通常総会後に講演した、厚生労働省医政局の神田裕二局長

稲城市が市町村で初めて医療計画を策定、他市町村でも同様の動き

 医療提供体制の整備は、もっぱら都道府県の医療計画に沿って行われます。2018年度からは第7次の医療計画と第7期の介護保険事業(支援)がスタートするため、現在、厚労省の「医療介護総合確保促進会議」や「医療計画の見直し等に関する検討会」「社会保障審議会・介護保険部会」を中心に、計画の基本方針に関する議論が進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

 最大の課題は「医療計画と介護保険事業(支援)計画との整合性」をいかに図るかにあると言え、「医療介護総合確保促進会議」で両計画の大元となる『総合確保方針』の見直しが検討されます。

 そうした中で神田局長は「市町村における医療計画」に着目します。東京都稲城市では、市町村で初めて医療計画を策定(稲城市のサイトはこちら)。その背景には「住民の在宅医療に対するニーズは高いものの、供給体制は僅かにとどまっている」という現状や、市町村の地域支援事業の中に「在宅医療・介護連携推進事業」が位置付けられた(関連記事はこちら)ことなどがあります。稲城市では、在宅医療ニーズに応えるために▽在宅医療を提供する診療所への支援▽有床診療所の誘致▽訪問看護師の確保や育成支援▽看取り・緩和ケアを行う医療機関の支援―などを行うといいます。

 またこうした動きは他の市町村にも広まっており、神田局長は、「市町村の目がようやく医療に向いてきた」と歓迎するとともに、「今後、医療提供体制、特に在宅医療提供体制について市町村がしっかり考えていくとともに、都道府県が広域的な対応・支援を行うよう話はあってほしい」と期待を寄せました。

介護療養などの新たな移行先、看取りを含めた「本質的な問題」を含む

 ところで、介護療養病床などの新たな転換先に関する議論が、社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」で具体的に進められています(関連記事はこちらこちら)。

 現在、医療内包型・医療外付け型の3つの新類型案が示されていますが、病院・診療所とは異なる「新たな医療施設」に位置づけられた場合、新類型は医療計画(地域医療構想を含む)や介護保険事業(支援)計画においては「在宅」として扱われることになります。このため、介護療養病床などがどの程度、新類型に移行するのかが、医療計画などの策定において非常に重要になることを神田局長は強調しています。

25対1医療療養・介護療養の新たな選択肢、【案1-1】【案1-2】【案1-3】の3つが提示された。既存の20対1医療療養(病院)と、特定施設(住まい)と対比させ、どのような機能を持つのかが明示されている

25対1医療療養・介護療養の新たな選択肢、【案1-1】【案1-2】【案1-3】の3つが提示された。既存の20対1医療療養(病院)と、特定施設(住まい)と対比させ、どのような機能を持つのかが明示されている

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

 また、新類型を「病院・診療所」とするのか「新たな医療施設」とするのかでさまざまな意見が出されている点について、看取りをどう考えるのかという点と密接に関係する「本質的な問題」を含んでいるとし、今後の特別部会における議論の重要性を指摘しました。

 なお看取りについては、安倍晋三内閣が6月2日に閣議決定した規制改革実施計画の中で、在宅での穏やかな看取りを推進するために「医師による対面での死後観察によらずとも死亡診断を行える」旨の緩和を行うことが指示されています。具体的には、▽医師による直接対面での診察経過から早晩の死亡が予測される▽医師・看護師と十分な連携がとれ、患者・家族の同意がある▽医師による速やかな対面での死後観察が困難である▽法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が必要な情報を速やかに報告できる▽医師がテレビ電話などで異状のないことなどを判断できる―という例外的なケースについて、死亡診断の一部緩和を行うというものです。2017年度から看護師に対する法医学研修などが開始され、2018年度以降に看取りの一部規制緩和が実施されます(内閣府のサイトはこちら)。

 この点について神田局長は、「医師による死後観察は必要である」点を確認した上で、「これから年間の死亡者が160万人に達しようとする中で、看取りのために当直体制を整備することが現実的であろうか」とも指摘し、規制緩和内容には一定の合理性がある旨の考えを述べています。

地域医療構想、青森や岩手では非常に具体的な機能分化方針示される

 医療提供体制の再構築を目指し、都道府県における地域医療構想の策定や、病床機能報告制度が進められています(関連記事はこちら)。

 地域医療構想はすでに12の府県(青森、岩手、栃木、千葉、静岡、滋賀、大阪、奈良、岡山、広島、愛媛、佐賀)で策定されており、神田局長は「青森や岩手など、公立病院が高度医療や救急、災害、がん医療などの中心を担っている地域では、「公立病院を中心とした機能分化」について記載しやすいようだが、都市部(例えば広島)など民間病院も高度医療などを担っている地域では、機能分化に関する具体的な記載が難しいようだ」との印象を持っていることを述べています。

 とくに青森県では、▽県立中央病院が高度医療、専門医療、救命救急センター、総合周産期母子医療センターなどの政策医療を担う▽市民病院は回復期機能の充実・強化を図るとともに、医療機能・需要に見合う病床規模の検討(削減)を行う―などという具合に、個別病院に関する記述も充実しています(青森県のサイトはこちら)。

 神田局長は「地域医療構想の記載内容にバラつきがある」点こそ指摘しましたが、構想策定以上に「実践(調整会議での議論に基づく、医療機関の自主的な機能分化)が重要である」と強調。調整会議では、▽各構想区域の課題に優先順位を付け、関係者間での共有▽新公立病院改革ガイドラインや国立病院の連携計画、建て替え予定の立っている病院の機能を含めた具体的な話し合い―を進めてほしいと要望しました。

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