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25対1医療療養などの新たな移行先として3案を決定、社保審で改正法案論議へ―療養病床検討会

2016.1.18.(月)

 2017年度末で設置根拠となる経過措置が切れる25対1の医療療養病床と介護療養病床について、厚生労働省の「療養病床の在り方等に関する検討会」は15日に、3つの新たな移行先(選択肢)案を取りまとめました。

 医療機関や老人保健施設とは異なる「これまでにない医療提供施設」などの創設に向け、今後、議論の場を社会保障審議会に移して、改正法案作成に向けた準備が進められます。

1月15日に開催された、「第7回 療養病床の在り方等に関する検討会」

1月15日に開催された、「第7回 療養病床の在り方等に関する検討会」

「医療」「介護」「住まい」の3つの機能を持つ新たな選択肢を検討

 25対1医療療養病床と介護療養病床については、2017年度(平成29年度)で設置根拠となる経過措置が切れるため、20対1医療療養や介護老人保健施設などに転換することが求められています。しかし、転換が十分に進んでいないことから、厚労省は「医療療養や老健施設以外の、新たな移行先」を考慮する必要があるのではないかと考え、2015年7月に検討会を設置。転換が進まない理由や、25対1医療療養などに入院・入所する患者の実態などを考慮し、「医療」「介護」「住まい」という3つの機能を併せ持つ施設類型を模索してきました。

 15年12月25日に開かれた前回会合では、それまでの議論を踏まえて3つの選択肢案を厚労省が提示(関連記事はこちら。その後、更なる調整を行い、次の3つの選択肢案が1月15日に取りまとめられました。

【案1-1】医療の必要性が「比較的」高く、容体が急変するリスクのある高齢者が入所する「医療内包型の医療提供施設」

【案1-2】医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した高齢者が入所する「医療内包型の医療提供施設」

【案2】医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した高齢者が入所する「医療外付け型」(病院・診療所と居住スペースの併設型)

25対1医療療養・介護療養の新たな選択肢、【案1-1】【案1-2】【案1-3】の3つが提示された。既存の20対1医療療養(病院)と、特定施設(住まい)と対比させ、どのような機能を持つのかが明示されている

25対1医療療養・介護療養の新たな選択肢、【案1-1】【案1-2】【案1-3】の3つが提示された。既存の20対1医療療養(病院)と、特定施設(住まい)と対比させ、どのような機能を持つのかが明示されている

医療機関・老健施設と異なる「新たな医療提供施設」を新設

 【案1-1】と【案1-2】は、既存の「病院・診療所」「老人保健施設」とは異なる、新たなタイプの「医療提供施設」です。

 【案1-1】には、より医療・介護の必要性が高い患者が入所することを想定しており、▽喀痰吸引や経管栄養を中心とした日常的・継続的な医学管理▽24時間の看取り・ターミナルケア▽当直体制(夜間・休日の対応)やオンコール体制―を整備することになります。

 【案1-2】には、容体が比較的安定した、多様な介護ニーズを持つ患者の入所が想定されています。そのため、▽多様なニーズに対応するための日常的な医学管理▽オンコール体制による看取り・ターミナルケア―を行うことになります。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長や池端幸彦副会長は、【案1―1】【案1-2】について、2015年度の介護報酬改定で新設された「機能強化型の介護療養病床」が該当するのではないかと見ています(関連記事はこちら)。

医療機関と居住スペースの併設に当たっての基準などを緩和

 また【案2】は、例えば50床ある25対1医療療養において、医療機関部分を40床にダウンサイズして「20対1」を確保し、残りの10床を「新たな居住スペース」に転換するというイメージです。ここには、【案1-2】と同様に「容体が比較的安定した、多様な介護ニーズを持つ」人が入所することが想定されます。

 この「新たな居住スペース」は、日慢協が提唱しているSNR(Skilled Nursing Residence、従前はSNW:Skilled Nursing Wardとしていた)と同じ考え方と言えそうです(関連記事はこちら)。

 なお、医療機関が居住スペースを併設することは現在でも可能ですが、厚労省医政局地域医療計画課の迫井正深課長は「現在は、医療機関部分や居住スペース部分でそれぞれ基準(医療法など)を満たした上で『合築』ということになる。【案2】は全体として基準を満たすなど、緩和することが考えられる」と説明しています。

3つの選択肢の組み合わせなど、転換元が自ら選択

 ところで厚労省は、【案1-1】【案1-2】について、実際には「【案2】の居住スペース部分などに、【案1-1】や【案1-2】を組み合わせる」形になるのではないかと想定しています。

 厚労省保険局医療介護連携政策課の城克文課長は、「【案1―1】【案1-2】は新たな医療施設類型で、どの程度の点数が設定されるのか分からない。ごく小規模のところを除き、既存の25対1医療療養などをすべて【案1-1】【案1-2】に転換させることには躊躇するのではないか」と見通しています。

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

 こうした3つの選択肢を組み合わせることや、既存の医療機関と3つの選択肢の組み合わせなど、様々なパターンが考えられます。もちろん3つの選択肢以外の20対1医療療養や老健施設への転換もあり得ます。検討会では「入院する患者像や経営状況などを勘案し、各医療機関が自ら選択する」ことを明示しています。

多床室を認めるのか、療養からの転換に限るのかなど社保審で議論

 検討会で取りまとめられた【案1-1】【案1-2】【案2】は、「選択肢の整理案」に過ぎず、実際に設置・稼働させるには、例えば次のような事項を詰めていく必要があります。

▽【案1-1】などの新たな医療提供施設を、医療法でどのように規定するのか

▽構造・設備、人員配置などをどのように規定するのか(個室とするのか、多床室で良しとするのか)

▽医療保険の適用施設とするのか、介護保険の適用施設とするのか

▽保険給付を行う場合、点数をどの程度に設定するのか、またその際の基準をどう定めるのか

 こうした事項は、社会保障審議会の「医療部会」「介護保険部会」「医療保険部会」で議論するテーマですが、別々に審議を行うと不整合が出かねません。そのため検討会では、構成員から「社会保障審議会での議論では、不整合が出ないよう工夫してほしい」との注文が付いています。

 この点について厚労省医政局の神田裕二局長は、メディ・ウォッチに対して「合同で開催する方法や、新たな部会を設ける方法などが考えられる」と説明しています。ただし3部会の委員は、合計で延べ70名を超えるため、単純な合同開催は困難で、その場合「代表者の選任などが必要となるだろう」と城医療介護連携政策課長は見通しています。

 社保審では、3つの選択肢案のほか、検討会で行われた議論もベースにして制度設計を行っていきます。このうち、構造・設備基準(施設基準)については、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長、日本慢性期医療協会副会長)から「既存の資源(病院病床など)を有効活用すべきであり、少なくとも建て替えまでは、1人当たり6.4平方メートルの多床室を認めるべきである。でなければ、この選択肢案は画塀に帰してしまう」と強く主張。一方で「住まいの機能という点から、例え狭くとも個室化を認めるべき」との意見も出ています。

 また、検討会では「25対1医療療養、介護療養からの転換」を主眼にして議論が進められてきましたが、「他の一般病床などからの転換も認めてよいのではないか」との意見も出ています。特に田中滋会長代理(慶応義塾大学名誉教授)は、「医療と住まいの機能を合わせ持つ施設はとても魅力的である。新設を認めてもよいではないか」との見解を披露しています。

 さらに、低所得者対策も重要なテーマとなるでしょう。現在、介護保険施設に入所する低所得者に対しては、室料などを補填する「補足給付」が行われており、これを拡大することが考えられます。ただし田中会長代理は「住まいのコストを補足給付として保険財源で手当てする手法は正論ではない」と述べるなど、別の低所得者対策も模索されることになりそうです。

 

 初めに述べたように、25対1医療療養などは設置根拠(経過措置)が2017年度末で切れてしまいます。このため、経過措置の再延長(鈴木委員は再延長を第一選択肢として強く求めている)が行われない場合には、2018年4月時点で転換が済んでいなければなりません。

 そこで、「2016年内に社保審で制度設計の議論を詰め、17年の国会に医療法・介護保険法などの改正を行い、18年の診療報酬・介護報酬同時改定で点数設定を行う」というスケジュールに則って議論が行われることになる見込みです。今後の社保審の議論に注目が集まります。

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