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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

25対1の医療療養などの新たな移行先、3つのサービスモデルを厚労省が提示―療養病床検討会

2015.12.28.(月)

 2017年度末で廃止される介護療養病床と、25対1医療療養病床の新たな移行先として、厚生労働省は次の3つのサービスモデルを、25日に開かれた「療養病床の在り方等に関する検討会」に提示しました。

(案1-1)医療の必要性が高く、容体が急変するリスクのある高齢者が入所する「医療内包型の医療提供施設」

(案1-2)医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した高齢者が入所する「医療内包型の医療提供施設」

(案2)医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した高齢者が入所する「医療外付け型」(病院・診療所と居住スペースの併設型)

 検討会では、「低所得者の費用負担を考慮すべき」など、さまざまな意見が出されており、厚労省は更に案を練り、年明けの1月15日に開催する次回会合で議論の整理を行う考えです。

12月25日に開催された、「第6回 療養病床の在り方等に関する検討会」

12月25日に開催された、「第6回 療養病床の在り方等に関する検討会」

医療内包型2案と、医療外付型1案の計3案を提示

 25対1医療療養と介護療養は、2017年度末で設置規定(経過措置)が切れるため、20対1医療療養や介護老人保健施設などに転換しなければなりません。しかし、例えば介護療養には「死亡退院が多い」という特徴がある一方、老健施設は「在宅復帰」を目指す施設であるため、転換は十分に進んでいません。

 そこで厚労省は「新たな選択肢」を示す必要があるのではないかと考え、本検討会を設置したのです。厚労省は、これまでの議論を踏まえて、次の3つの新たなサービスモデル案を25日の検討会に提示しました。

(案1-1)医療の必要性が高く、容体が急変するリスクのある高齢者が入所する「医療内包型の医療提供施設」

(案1-2)医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した高齢者が入所する「医療内包型の医療提供施設」

(案2)医療の必要性は多様だが、容体が比較的安定した高齢者が入所する「医療外付け型」(病院・診療所と居住スペースの併設型)

25対1医療療養と介護療養は、医療と住まいの双方の機能を併せ持つ(介護は当然内包)ことが期待されており、厚労省は医療を提供する「20対1医療療養」と住まいである「特定施設」との中間の位置づけられるのではないかと考え、医療内包型(案1-1と1-2)と医療外付型(案2)の3つのサービスモデル案を提示している

25対1医療療養と介護療養は、医療と住まいの双方の機能を併せ持つ(介護は当然内包)ことが期待されており、厚労省は医療を提供する「20対1医療療養」と住まいである「特定施設」との中間の位置づけられるのではないかと考え、医療内包型(案1-1と1-2)と医療外付型(案2)の3つのサービスモデル案を提示している

 (案1-1)と(案1-2)は、医療を内包する、つまり施設内で医療を提供する施設ですが、病院・診療所・老人保健施設とは異なる「新たな医療提供施設」です。両者の違いは、「入所する患者像」と「機能」にあります。

 (案1-1)では、より医療・介護ニーズが高い高齢者の入所を想定しており、「喀痰吸引や経管栄養を中心とした日常的・継続的な医学管理」や「24時間の看取り・ターミナルケア」「当直体制」といった機能を持つことがイメージされています。

 一方(案1-2)には、容体が比較的安定した多様な医療・介護ニーズを持つ高齢者の入所が想定されています。そこで、「多様なニーズに対応する日常的な医学管理」「オンコール体制による看取り・ターミナルケア」を提供する機能を持つことになります。

 厚労省医政局地域医療計画課の迫井正深課長と、保険局医療介護連携政策課の城克文課長は、オンコールによる看取り・ターミナルケアについて「夜間の当直体制までは求めない」「救急搬送し、病院などに看取りを任せるものでもない」というイメージを説明しています。

新たな選択肢を含め、各医療機関が自ら判断して転換先を決定

 (案2)は、例えば25対1医療療養で、既存の医療・介護資源を一部の病棟に寄せて20対1の基準をクリアし、残った部分を居住スペースに転換する、というイメージです。日本慢性期医療協会の武久洋三会長が提唱している「SNR(以前はSNW)」に近いものと言えそうです(関連記事はこちらこちら)。

 想定される入所者は、(案1-2)と同じく「容体が比較的安定した多様な医療・介護ニーズを持つ高齢者」で、併設する病院・診療所の機能を活用した、オンコールによる看取り・ターミナルケアを提供することが期待されます。

 

 25対1医療療養や介護療養は、現在の移行先(選択肢)である20対1医療療養や老健施設、有料老人ホームなどのほか、(案1-1)(案1-2)(案2)も新たな選択肢として検討することになります。厚労省は現時点では「各医療機関が、入院する患者像や経営状況などを勘案して、既存類型や新たな選択肢の中から、自ら選択する」こととしてはどうかとの考えを示しています。

低所得者対策や経過措置とするかなど、今後も検討

 この3つのサービスモデルについて、構成員から明確な反対意見は出ていませんが、多くの注文が付きました。

 鈴木邦彦構成員(日本医師会常任理事)は、「既存の施設からの移行が最も重要な点であり、建て替えまでは『1人当たり6.4平米の多床室』を認めなければ話は進まない」「低所得者の受け皿として機能するよう、補足給付などを検討する必要がある」と指摘。

 一方、井上由起子構成員(日本社会事業大学専門職大学院教授)らは「プライバシーの尊重は極めて重要で、最終的には『個室』を目指すべきではないか」と指摘しています。

 この点は(案1-1)などを「建て替えまでの経過措置」的な位置づけと考えるのか、「恒久的な仕組み」と位置付けるのかとも大きく関連してきます。この点については、検討会内でもさまざまな意見が出されており、具体的な制度設計を行う社会保障審議会の医療部会などで改めて検討されることになるでしょう。

 また低所得者対策については、新たな選択肢への給付を医療保険から行うのか、介護保険から行うのか、というテーマと深く関係します。介護保険では、現在、低所得の施設入所者に対して室料などを補填する補足給付があります。こうした枠組みを参考に、やはり具体的な制度設計の中で議論することになるでしょう。

 ところで、(案2)は「病院・診療所」と「居住スペース」との院内併設を認めるものです(例えば1階フロアが病院・診療所、2階フロアが居住スペースというイメージが考えられる)。この「居住スペース」にどのような保険給付を行うのかは、非常に難しいテーマです。例えば、介護保険の特定施設の基準などを満たしていれば介護保険からの給付が可能ですが、そうでない場合、社会保障財源が厳しい中では保険からの給付を難しそうです。

 そのため城課長は、「さらに厚労省内で練る必要がある。例えば(案2)の居住スペースについて(案1-2)を組み合わせることなどが考えられそうだ」とコメントしています。

2017年の国会に医療法改正案などを提出

 前述のように、25対1医療療養と介護療養の設置期限は2017年度、つまり2018年(平成309年)3月31日までです。このため、2017年の国会で医療法や介護保険法などの改正を行って、新たな選択肢(案1-1、1-2、2)の設置根拠を設定し、2018年度の介護報酬・診療報酬改定で報酬体系を整備する必要があります。

 このため、厚労省は年明け早々(1月15日予定)に検討会で整理案をまとめ、それを社会保障審議会の医療部会や介護保険部会に提案し、医療法改正案などに練り上げる考えです。

 今後のスケジュールイメージは次のようになることでしょう。

●検討会で整理案とりまとめ(2016年1月15日)

 ↓

●社会保障審議会の医療部会、介護保険部会へ整理案を報告(2016年初旬)

 ↓

●医療部会、介護保険部会で議論し、意見取りまとめ(2016年内)

 ↓

●医療法、介護保険法などの改正案を国会に提出(2017年1月)

 ↓

●介護報酬、診療報酬改定の中で、新たな選択肢の基準などを決定(2018年2月まで)

 ↓

●25対1医療療養、介護療養が新たな選択肢を含めた転換を行う(2018年3月まで)

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