25対1医療療養の新移行先、「医療内包施設」と「住まいと医療機関の併設型」の2類型―療養病床検討会
2015.11.27.(金)
25対1の医療療養や介護療養の移行先について、(1)医療を内包した施設類型(2)医療を外から提供する「住まい」と「医療機関」の併設類型―の2つの新たな選択肢を検討してはどうか―。厚生労働省が、28日に開かれた「療養病床の在り方等に関する検討会」でこういった提案を行いました。
鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)も、日医と四病院団体協議会の合同提言として同様の考え方を検討すべきと提案し、また多くの委員も2区分案を高く評価しているため、大きな方向性は固まったと言えそうです。
年内に開かれる見込みの次回会合で厚労省がより具体的な案を示し、年明けに意見をまとめる見込みです。
25対1医療療養や介護療養は、2017年度末で経過措置が切れるため、20対1医療療養や介護老人保健施設などに転換する必要があります。検討会では、こうした既存の施設に移行するほか、別途「新たな施設類型」を設け、そこへの移行も考えられないか、という視点に立って議論が行われています。
厚労省の提案は、新たな施設類型として次の2区分が考えられるのではないかというものです。
(1)医療を内包した施設類型(内包型)
(2)医療を外から提供する「住まい」と「医療機関」の併設類型(併設型)
いずれに施設にも相当程度の介護が必要な高齢者が入所しているため、入浴や排せつ介助、食事介助といった「適切な介護サービス」を提供することが必須となります(介護内包)。
また長期入所し、そこで亡くなる高齢者が多いことから「住まい」の機能を強化する必要があります。具体的には、「生活様式への配慮」「プライバシーの尊重」「家族や地域住民との交流が可能な環境」などを整えることになります。
一方、「日常的な医学管理程度の医療」「夜間・休日における医療」「看取り・ターミナルケア」「生活機能を維持向上するためのリハビリ」といった医療サービスも必要となります。この医療サービスを施設内で行う場合には(1)の内包型、併設医療機関などから提供する場合には(2)の併設型となります。
生活の場となるため、いずれの施設類型でも、適切な構造設備や人員配置(夜間・休日の当直を含めて)が求められることになるでしょう。
25対1医療療養や介護療養が、2類型のいずれを選択すべきかは今後の検討課題となります。施設側の経営的な面から判断するべきなのか、後述の入所者像をベースとすべきなのか、厚労省が考え方を整理し、議論に供することになります。
入所者について厚労省は次の3つの像を例示しました。
▽日常的な医学的管理を長期にわたり継続して必要とし、かつ一定程度の介護が必要な人
▽基礎疾患の症状が重いなど医療の必要性が高いなどの理由で、容体が急変するリスクを抱える人
▽医療の必要性の程度は多様だが、容体が比較的安定している人
この点、厚労省保険局医療介護連携政策課の城克文課長は、「類型によって入所者像に濃淡があるのではないか」「大きく2類型を示したが、更なる細かい類型も考えられる」とコメントしています。例えば(1)の内包型には医療ニーズの高い高齢者が入所すると予想されますが、より医療ニーズの高い人が多く入所する内包型A、医療ニーズの高い人の割合が比較的低い内包型Bなどが考えられそうです。
一方、鈴木委員は日医・四病協の合同提言として、「現行制度(経過措置)の再延長を第一選択肢とすべき」と強調。
その上で新たな選択肢として、厚労省案と類似した(a)医療内包型(b)医療外付型―の2類型を提案しています。
(a)の内包型は、「現行の介護老人保健施設・特別養護老人ホームより手厚い医療提供が可能な入所施設」で、当直や24時間の医療対応や看取りが可能な体制をとるべきとしています。ただし、医療サービスについては「近隣医療機関との連携」も可能にしてはどうかとも付言しました。
(b)の外付型は、医療機関部分を適切な規模に「集約」するとともに、その他の部分に「特例的な機能」(例えば住まい機能)を持たせるという考え方です。日本慢性期医療協会の提唱するSNW(Skilled Nursing Ward、高齢者の院内住居)に近いものと言えるでしょう。鈴木委員は、より具体的に「併設医療機関から提供する医療について出来高または適切な包括点数を設定する」ことや、「医療機関部分は20対1療養、有床診、無床診とする」「施設設備、人員配置については、医療機関と住まい部分との一部共有を認める」ことなどを提案しています。
厚労省案と日医・四病協案は類似していますが、日医・四病協は「現行制度(経過措置)の再延長」を求める点が最大の違いであると城課長は説明しています。もっとも経過措置を再延長するかどうかは検討会の所掌ではないため、両者は非常に似た提案と言うことができるでしょう。
なお鈴木委員は「25対1医療療養や介護療養からの転換を進めなければいけない。『理想的な施設』の議論をしても、現場の施設が動けなければ意味がない」と述べ、実現可能性を最重視する必要があると強調しています。
この2類型案には、多くの委員から高く評価する意見が出されました。
池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長・池端病院院長、日本慢性期医療協会副会長)は、「良い考えで賛同できる」と評した上で、「併設型は日慢協の提唱するSNW設置、内包型は機能強化型の介護療養というイメージである」とコメントしています。
松本隆利委員(社会医療法人財団新和会理事長)や土屋繁之委員(医療法人慈繁会理事長)も同旨の見解を表明しています。
また田中滋委員(慶應義塾大学名誉教授)は、両案についての直接的な評価こそ述べなかったものの、医療ニーズの高い要介護高齢者が増加する中で最大の課題は「人員」であるとした上で、「2類型の全施設に薄く人員を配置するという従来の手法ではなく、併設病院や近隣病院からの柔軟な人員調達(例えば兼任)を認める必要がある」と指摘。これは鈴木委員の提唱した日医・四病協案の(a)内包型とも通じるものがあります。
28日の検討会では、新たな施設類型について「医療保険・介護保険のいずれの給付とするのか」「時限的なものとするのか」という点についても議論になりました。
前者の給付について厚労省は具体的な考え方を述べていませんが、猪熊律子委員(読売新聞東京本社社会保障部部長)は、「医療サービスは診療報酬として支払い、介護サービスは介護報酬として支払う形がシンプルである」と提案。「ある施設は介護保険適用」と決めた場合、医療サービスの給付調整などが複雑になるためです。
この提案に鈴木委員は強く賛同し、「新たな施設類型なので、新たな給付方法を検討する必要がある」と述べています。
一方、後者について池端委員や嶋森好子委員(慶応義塾大学元教授)は「新類型は10-20年程度の経過措置的なもので、新規参入は認めるべきではない(つまり現在の25対1医療療養や介護施設しか移行を認めない)」と指摘。
しかし田中委員は、「医療を外部から提供する併設型施設などは非常に魅力的で、将来的に増やしてもよいと思う」との考えを述べました。
こうしたテーマについて検討会で答えを出すかどうかも含めて、厚労省でより具体的な案が練られることになります。
なお、当初は「2015年内に意見を取りまとめる」予定でしたが、遠藤久夫座長(学習院大学経済学部教授)は「さまざまな重要意見が出されており、無理に年内に結論を出す必要がないのではないか」と指摘しました。年内に開催される次回会合で、より詳細な厚労省案について議論し、年明け早々に意見取りまとめとなる見込みです。
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