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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

「専従」要件の弾力運用、非常勤リハビリスタッフの「常勤換算」を認める―中医協総会 第378回

2017.12.13.(水)

 理学療法士などのリハビリ専門職について、診療報酬上「非常勤職員の常勤換算」を認める。また、医療従事者の「専従」要件について、例えば▼対象患者数が少ない場合▼当該業務を実施しない時間帯—などには弾力的な運用を行う—。

 12月13日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった方針が概ね固まりました(関連記事はこちらこちら)。

12月13日に開催された、「第378回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月13日に開催された、「第378回 中央社会保険医療協議会 総会」

複数の非常勤リハビリスタッフを「常勤換算」し、施設基準満たすことが可能に

 診療報酬項目の中には、施設基準で「医療従事者の常勤配置」が求められているものもあります。例えば、A300【救命救急入院料】では、治療室内に重篤な救急患者に対する医療行うために必要な医師が「常時配置」されていることが求められています。これは緊急事態などが生じた際に迅速に対応できる体制を敷くため、つまり「医療の質の確保」を目指すことが主要な目的と言えます。このため医療機関サイドは、診療報酬算定、つまり「常勤職員を確保したい」と考えるケースが多くなると言えます。

一方、女性や高齢の医療従事者の増加、多様な働き方の浸透などにより、フルタイムではなく「非常勤で働きたい」という人が増加しています。しかし、上記の医療機関サイドのニーズには合致せず、これを放置すれば「女性医師らが働きにくい」状況が拡大してしまいます。そこで11月8日の中医協総会では、非常勤医師(週一定時間の勤務)を複数組み合わせることで、常勤の医師配置と見做す「常勤換算」の考えを拡大する方向が了承されました。同時に、看護師・管理栄養士・歯科衛生士・歯科技工士について「常勤の必要性が高くない業務において、常勤要件を見直す」方針も了承されています。

この議論の中で猪口雄二委員(全日本病院協会会長)から「リハビリスタッフについても常勤換算を認めるべきではないか」との提案が行われました。現在、A308【回復期リハビリテーション病棟入院料】やA308-3【地域包括ケア病棟入院料】、H000【心大血管疾患リハビリテーション料】、H001【脳血管疾患等リハビリテーション料】など、さまざまなリハビリ関連の診療報酬項目で、▼理学療法士(PT)▼作業療法士(OT)▼言語聴覚士(ST)—の常勤配置が求められています。

リハビリスタッフの常勤配置が必要な診療報酬項目の例(その1)

リハビリスタッフの常勤配置が必要な診療報酬項目の例(その1)

リハビリスタッフの常勤配置が必要な診療報酬項目の例(その2)

リハビリスタッフの常勤配置が必要な診療報酬項目の例(その2)

 
その一方で、PTらリハビリ専門職種では女性の割合が比較的高く、上記の医師と同様のミスマッチが拡大しつつあるため、厚生労働省保険局医療課の迫井正深医療課長は「週一定時間の勤務を行っている複数の非常勤従事者の組み合わせにより、常勤配置されているものと見做す」考えを提示しました。この提案を診療側委員は歓迎、さらに猪口委員や松本純一委員(日本医師会常任理事)らは「女性やリハビリスタッフに限った話ではない。医療職全般に常勤換算の考え方を拡大すべき」と提案しており、2018年度の次期改定後に改めて議論の俎上に上がる可能性があります。

支払側委員は、この提案に明確に反対こそしていませんが、「常勤配置要件は医療の質を確保するために設けられたものであろうから、限定的な取り扱いとすべきで、常勤換算を認める要件などを明確にする必要がある」(平川則男委員:日本労働組合総連合会総合政策局長)といった注文もついています。

専従要件、患者数が少ない場合や類似業務実施などの場合に「弾力運用」も可能

 また診療報酬項目の中には、「専従」要件というものもあります。例えば、7対1などの急性期病棟における【ADL維持向上等体制加算】では専従のリハビリスタッフ配置が、A234【医療安全対策加算1】では専従の薬剤師・看護師等の配置が、A236【褥瘡ハイリスク患者ケア加算】では専従の褥瘡ケア専門看護師等の配置が求められています。

 ただし、次のように診療報酬項目によっては「専従要件を課すが、一定の場合にそれを緩和している」ものもあります。

(1)一般病棟入院患者のせん妄や抑うつに対し、精神科医や専門看護師、薬剤師、作業療法士などの多職種で構成されるチームで診察することを評価する、A230-4【精神科リエゾンチーム加算】では、「精神科経験を3年以上有し、研修を修了した専任の看護師」や「精神科経験を3年以上有する専従の薬剤師・作業療法士など」の常勤配置が必要。ただし、チームが診察する患者数が1週間に15人以内の場合には、後者の薬剤師・作業療法士などは「専任で差し支えない」と緩和されている【患者数が少ない場合の、専従要件の緩和】

(2)疼痛などの身体症状、不安などの精神症状のあるがん患者等(一般病床)に対し、医師・看護師・薬剤師で構成される緩和ケアチームによって診察することを評価する、A226-2【緩和ケア診療加算】では、▽身体症状、精神症状のそれぞれを担当する常勤医師▽緩和ケア経験を有する常勤看護師▽緩和ケア経験を有する薬剤師―で構成される「専従」のチーム設置が必要。ただし、専従チームの構成員は、B001の17【外来緩和ケア診療料】の緩和ケアチームの構成員と兼務してよいとされている【チーム構成員が類似業務を兼任する場合の、専従要件の緩和】

(3)摂食機能障害のある患者に対して、内視鏡下嚥下機能検査などを行い、検査結果を医師・歯科医師・看護師・PT・STらによる多職種カンファレンスに供し、リハビリ計画を適宜見直すことなどを評価する、H004【摂食機能療法】の【経口摂取回復促進加算1】では、「専従のST」配置が必要。ただし、当該専従STは、「摂食機能療法を実施しない時間帯」には、H001【脳血管疾患等リハビリテーション料】に従事することが可能とされている【当該業務を実施してない時間帯に関連業務へ従事する場合の、専従要件の緩和】

専従要件の緩和運用の例(その1)

専従要件の緩和運用の例(その1)

専従要件の緩和運用の例(その2)

専従要件の緩和運用の例(その2)

 
 迫井医療課長は、「医療の質の確保」という大原則を前提としたうえで、こうした専従要件の緩和事例も参考に「医療従事者の専従要件について、より弾力的な運用が可能となるような見直し」を行う考えを示しています。上記(1)から(3)のような緩和が、他の診療報酬項目にも拡大されると考えられます。

少子高齢化が進む中では、医療提供者の確保が困難になってくるため「より効率的な医療提供」が求められます。こうした専従要件の緩和は「限られたマンパワーの有効活用」につながり、かつ病院経営にとっても有効に作用することでしょう。もっとも「医療の質」が低下しては本末転倒であり、平川委員は常勤換算と同様に「限定的な取り扱いとすべき」と注文を付けています。

「公認心理師」養成を睨み、精神科リエゾンチーム加算などの規定を見直し

 また、来年(2018年)9月から「公認心理師」の国家試験が始まることを受け、A230-4【精神科リエゾンチーム加算】などで配置が求められる「臨床心理技術者」(臨床心理士など)を、「公認心理師」に統一することも、12月13日の中医協総会で了承されました(関連記事はこちら)。

ただし、公認心理師養成は2018年9月から始まり、当初は人数も限られます。このため、来年(2018年)度は現行の「臨床心理技術者に該当する者」を、再来年(2019年)度からは「2019年3月末まで従事していた臨床心理技術者」「公認心理師の受験資格保有者(実務経験5年以上で所定の講習を受けた者など)」を、公認心理師と見做す、という経過措置を設けることになります。

「公認心理師」の養成開始を睨み、診療報酬上の規定を見直すことが了承された

「公認心理師」の養成開始を睨み、診療報酬上の規定を見直すことが了承された

公認心理師の資格を取得するためには資格試験に合格することが必要だが、資格試験の受験資格を得るルートは、▼大学などで必要科目を履修する▼実務経験5年の後に講習を受講する—などさまざまある

公認心理師の資格を取得するためには資格試験に合格することが必要だが、資格試験の受験資格を得るルートは、▼大学などで必要科目を履修する▼実務経験5年の後に講習を受講する—などさまざまある

新薬の処方日数14日制限、中医協委員は「延長の必要なし」で一致

 12月13日の中医協総会では「新薬の処方日数制限を見直すべきか」という点も議題となりました。現在、新薬(薬価収載から1年以内)については「原則、14日以内」という処方日数の制限が設けられています。

これは「臨床上の安全性が十分かどうかを処方医が確認する必要がある」との観点で設けられた制限です。したがって、安全性が確立された既存薬を配合した医薬品(配合剤)などでは、この処方日数制限は適用されません。

一方で、「原則、14日以内」という処方日数制限について、▼短すぎるのではないか▼2週間に一度の頻度で医療機関を受診できない患者も大勢いる▼同じメカニズムの薬がすでにあるような場合にはより長期間の投与を認めてはどうか—といった指摘が規制改革会議などからなされています。これまでにも中医協でこの論点は議論されていますが、今般、改めて議題にあげられました。ただし、診療側(松本純一委員)、支払側(吉森俊和委員:全国健康保険協会理事ら)ともに、医療安全を十分に確保する必要があることを指摘し、「現在の規定を見直す必要はない」との考えで一致しています。2018年度改定での見直しの可能性は極めて低そうです。

 
このほか、次のようなテーマも議題に上がっています。

▼明細書の無料発行推進を進めるが、2020年度にレセプト様式の見直し(審査支払システム改革)が行われるため、具体的な見直しはそれに合わせて(2020年度診療報酬改定で)対応する

▼歯科用の特定薬剤(歯周病用のペリオフィール歯科用軟膏など)について、現在の算定方法を改め、他の薬剤の算定方法とあわせる

歯科の特定薬剤と、一般的な薬剤では、算定方法が異なっており、今般、これを統一する方針が了承された

歯科の特定薬剤と、一般的な薬剤では、算定方法が異なっており、今般、これを統一する方針が了承された

 
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