療養病棟入院料も再編、20対1看護、医療区分2・3割合50%がベースに―中医協総会 第377回(2)
2017.12.8.(金)
7対1・10対1にとどまらず、療養病棟の入院料も再編・統合する。【基本部分】は▼20対1看護配置▼医療区分2・3の患者割合50%以上—などを基準値として設置し、そこに「医療区分2・3の患者割合」に応じた【段階的評価部分】を組み合わせる。基本部分の基準を満たせない25対1看護の病棟などは経過措置として、減額された入院料を算定することにしてはどうか―。
12月8日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、このような「療養病棟入院基本の再編・統合案」も議題となりました。再編・統合の方向そのものに明確な反論は出ておらず、年明けから詳細な基準などを議論することになります(関連記事はこちらとこちら)。
医療区分2・3患者割合に応じて、段階的な評価を検討
療養病棟の入院基本料は、現在、▽20対1看護▽医療区分2・3割合80%—などを要件とする【療養病棟入院基本料1】(以下、療養1)と、▽25対1看護▽医療区分2・3割合50%—などを要件とする【療養病棟入院基本料2】(以下、療養2)に区分されています。
この点、11月17日の中医協総会では、▼医療法上の看護配置4対1などの基準を満たさない「医療療養病床」の設置根拠となる経過措置(6対1看護配置でもよい、とするもの)が来年(2018年3月)で消滅する▼25対1の【療養2】でも、看護職員確保が進んでいる—ことなどを受け、「2018年度改定で療養1に統合する」方針が了承されました。患者に対して「より良い環境」を提供するとともに、医療機関に「より重症な患者の受け入れ」を促進してもらうことが狙いです。
その後、「7対1・10対1入院基本料の再編・統合」案が浮上し、さらに、これを発展させた「入院料全体についての再編・統合」案に考え方が拡大。今般、「療養病棟における入院料の再編・統合」の具体案が示されるに至ったもの。
再編・統合のベースとなる考え方は7対1・10対1と同じく、▼看護配置などに応じた【基本部分】▼診療実績に応じた【段階的評価部分】—を組み合わせるという形。具体的には、次のような案が厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長から提示されました。
【基本部分】:▼20対1看護▼医療区分2・3患者割合50%—以上
【段階的評価部分】:医療区分2・3患者割合X%
この提案に対し、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「基本部分の医療区分2・3患者割合が50%というのは低すぎるのではないか」と指摘しました。「療養1に統合する」のであるから、現在の「療養1の基準80%」でこそないものの、「療養2の基準50%よりは高くすべき」と幸野委員は主張します。
しかし、医療区分2・3患者割合を50%よりも厳しく設定すれば、後述する「経過措置」の設定如何によっては、「現在の療養2であっても特別入院基本料を算定しなければならない」という厳しい事態が生じかねません。そこで迫井医療課長は「50%は仮置きの数字であるが、介護医療院への転換なども含めたさまざまな動きがある中で、『医療区分2・3割合50%以上』の基準を動かしてしまうと議論が難しくなる」との考えを示しています。療養2への「医療区分2・3患者割合50%以上」基準導入は、2016年度の前回診療報酬改定で導入されたばかりであり、現在、多くの療養2が安定的な「50%以上」確保に向けて動いています。その中で基準値を引き上げれば、大きな混乱が生じ、最悪の場合「入院患者の居場所がなくなってしまう」ことにもつながりかねません。そうした点も考慮した検討が必要になります。
また【段階的評価部分】は、12月8日の資料では「○%1本」と図示されていますが、今後の議論で「複数」設置される可能性もあります。中医協の下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」の池端幸彦委員(医療法人池慶会理事長、日本慢性期医療協会副会長)は、8月4日の分科会で「現在、医療区分2・3の患者を50%以上確保できない病院にとって80%以上(療養1)のハードルは高すぎる。段階的な取り扱いを検討してほしい」と要望。またメディ・ウォッチに対し「たとえば、医療区分2・3の患者割合を▼80%以上▼60%以上▼40%以上—とするなどとすることが考えられる」とコメントを寄せています(関連記事はこちら)。X(最も高い評価)は現在の療養1を参照して「80%以上」に設定され、その下に▼70%以上▼60%以上—などの階段が設けられる可能性もあるでしょう。
看護20対1、医療区分2・3割合50%を満たせない場合の「経過措置」も設定
また「看護配置20対1」「医療区分2・3患者割合50%」という【基本部分】の基準を満たせない病院もあります。これをおしなべて「特別入院基本料」とするのは前述のように酷なため、迫井医療課長は「経過措置」を2つ設ける考えも示しています。
【経過措置1】:看護配置25対1以上を満たした上で、▼20対1看護▼医療区分2・3患者割合50%以上—のいずれかを満たせない病棟(基本部分の点数からα%減額)
【経過措置2】:看護配置25対1以上を満たせない病棟(基本部分の点数からβ%(αよりも厳しい)減額)
【経過措置1】は、【基本部分+段階的評価】の療養病棟入院料と「病棟群単位」の設置が認められます。医療法の基準を満たせない医療療養病床(前述)は、介護医療院への転換などに必要な期間として「6年間」の存続が認められる見込みですが、迫井医療課長は診療報酬では「まず2年間とする」考えです。届け出状況や医療提供内容などを精査し、2020年度、22年度の診療報酬改定で、基準値などの見直しが必要か検討していくことになるのでしょう。
一方、【経過措置2】は、新たな届け出は認められず、「2年限りの設置」となる見込みです。その間に、「看護配置20対1、かつ医療区分2・3患者割合50%」などを達成できなければ、介護医療院などへ転換しなければいけなくなりそうです。現在、「看護配置25対1(ただし30対1以上)」「医療区分2・3の患者割合50%以上」を満たすことができず、入院基本料が5%減算される療養2が全体の10%強ありますが、そのほとんどは「医療区分2・3の患者割合50%」のみが満たせないもので、「25対1看護」を満たせない病棟はごく限られており、【経過措置2】が2年後に消滅しても大きな影響はなさそうです。
メディ・ウォッチ編集部では、これらを総合し、例えば次のような「療養病棟入院料」の新設が考えられるのではないかと想像してみました(これも単なる想像です)。
【療養病棟入院料(基本部分)】:▼看護配置20対1▲医療区分2・3患者割合50%以上—
・重症患者割合が、さらに▼30%以上(合計80%以上)▼20%以上(同70%以上)▼10%以上(同60%以上)—上乗せされる場合の【段階的評価】と組み合わせる—
【経過措置1】:看護配置25対1以上を満たした上で、▼20対1看護▼医療区分2・3患者割合50%以上—のいずれかを満たせない病棟(療養病棟入院料から5%減額)
【経過措置2】:看護配置25対1以上を満たせない病棟(療養病棟入院料から15%減額)
医療区分、在宅復帰機能強化加算でも一部見直し
このほか療養病棟については、▼現在の医療区分3の「医師・看護師による常時監視・管理」のみに該当する患者は医療区分2とし、「医師・看護師による常時監視・管理」と医療区分2のいずれかの項目1つ(透析や創傷、喀痰吸引など)に該当する患者は医療区分3とする▼在宅復帰機能強化加算の基準値(1日平均入院患者数に対する、一般病棟から入院し自宅等に退院した年間患者数の比が0.1以上)を引き上げる—という見直しも行われます。
前者については診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会会長)が、「これまでの資料から『医療区分は妥当』と判断されたのではないか、修正するのであれば、むしろ『医療区分1に重症患者が含まれている』と言う点ではないか」と指摘しました。迫井医療課長は、「医師・看護師による常時監視・管理」のみに該当する患者」では、医療区分3該当患者全体に比べて「状態が安定している」とのデータを新たに提示し、見直しの必要性を説明しています。
後者は、実際の分布を見ると「加算算定病棟の平均値が基準値を大きく上回っている」状況を踏まえたものですが、猪口委員は「基準値の引き上げで、加算を算定できなくなる病棟が出現する」点を懸念しています。
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