【2018年度診療報酬改定総点検1】入院料を再編・統合、診療実績による段階的評価を導入
2017.12.31.(日)
2018年度の次期診療報酬改定に向けて、年明けから中央社会保険医療協議会で具体的な点数設計論議に入ります。今年(2017年)1月からの総論・各論の中で、さまざまな見直し案が厚生労働省から出されており、「結局、どこまで決まったのか?今後の論点はどこか?」とお感じの方もいらっしゃることでしょう。
メディ・ウォッチでは、年明けからの詰めの議論に備えて、これまでの総論・各論の中からポイントを絞ってお浚いします。今回は、「入院料の再編・統合」に焦点を合わせてみましょう。
看護配置などに基づく【基本部分】と、診療実績に応じた【段階的評価部分】
2016年7月1日時点で、▼7対1病床は36万9219床▼10対1病床は17万2574床▼地域包括ケア病床は4万5541床▼回復期リハビリ病床は7万9030床▼療養病床は22万1514床—となっており、もっとも手厚い看護配置を行う急性期対応の7対1病床数がもっとも多くなっています(一般病床89万1492床の41.4%)。今後、ますます高齢化が進展し、疾病構造が変化していく(すでに変化は始まっている)ことを考えると、「いびつな構造」と言わざるを得ないでしょう。
また、7対1と10対1の点数設定を見てみると、▼7対1では入院基本料1591点(1日につき)▼10対1では入院基本料1332点(同)、看護必要度加算25-55点(同)—となっています。200床・4病棟・稼働率100%の病院であれば、7対1を取得していれば、年間の入院基本料収益は約11億6140万円、10対1で全病棟において看護必要度加算1(55点)を取得していても10億1250万円で、その差は1億4890万円となります。「高齢化の進展で疾病構造が変化し、7対1のニーズが減少モードに入っている」ことを踏まえても、簡単に「7対1から10対1などへ移行しよう」と決断することは難しい状況にあります。
さらに、入院医療のベースとなる入院基本料・入院料の制度設計を見ると、次のようにまちまちとなっています。
▼7対1では、重症度、医療・看護必要度に該当する患者割合(以下、重症患者割合)25%以上などを施設基準に据える
▼10対1では、重症患者割合に応じて、病棟ごとに看護必要度加算を算定できる
▼地域包括ケア病棟では、在宅復帰率7割以上・1人当たり居室面積6.4平米以上を満たせば高い入院料1を、満たせなければ低い入院料2を算定する
▼回復期リハビリ病棟では、看護配置・重症な患者の割合・在宅復帰率・休日リハビリ体制などによって、入院料が設定されている
▼療養病棟では、看護配置・医療区分2・3患者割合によって入院基本料が設定されている
厚労省は、こうした状況を総合的に勘案し「入院基本料・入院料の評価体制を再編・統合する必要があるのではないか」と判断。看護配置などに応じた【基本部分】と、重症患者割合などの実績に応じた【段階的評価部分】を組み合わせた入院料を新たに創設する考えを示しています。2000年度の「入院基本料創設」に続く、歴史的な大改定となる見込みです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
●7対1・10対1の再編
【基本部分】:▼10対1看護配置以上▼看護比率7割以上▼平均在院日数21日以内―など
【段階的評価部分】
(1)最も高い評価:▼7対1看護配置以上▼看護比率7割▼平均在院日数18日以内▼重症患者割合X%(看護必要度に基づく重症患者割合と、EF統合ファイルに基づく重症患者割合とを選択可能)
(2)中間的な評価:▼重症患者割合Y%からZ%(EF統合ファイルに基づく重症患者割合)
※ただし、(2)の「中間的な評価」へは、「最も高い7対1相当の評価」からのみ移行可能で、10対1相当からの「中間的な評価」への移行は、当面認められない見込み
●13対1・15対1の再編
【基本部分】▼15対1看護配置―など
【段階的評価部分】
(1)もっとも高い評価:▼13対1看護配置以上▼急性期患者の受け入れ実績—など
(2)中間的な評価:▼急性期患者の受け入れ実績
●地域包括ケア病棟の再編
【基本部分】:現在の基準をベースとする
【段階的評価部分】:▼自宅等への退棟患者割合▼在宅等からの入棟患者割合(【救急・在宅等支援病床初期加算】を活用することが考えられる)—など
●回復期リハビリ病棟の再編
【基本部分】:現在の基準をベースとする
【段階的評価部分】:▼リハビリの実績(アウトカム評価を活用することなどが考えられる)
●療養病棟の再編
【基本部分】:▼20対1看護▼医療区分2・3患者割合50%—以上
【段階的評価部分】:医療区分2・3患者割合○%(複数段階に設定される可能性あり)
※【経過措置1】:看護配置25対1以上を満たした上で、▼20対1看護▼医療区分2・3患者割合50%以上—のいずれかを満たせない病棟(基本部分の点数からα%減額)(当面は2年とし、改定の度に検証)
※【経過措置2】:看護配置25対1以上を満たせない病棟(基本部分の点数からβ%(αよりも厳しい)減額)(2年限定)
このように、入院料の評価体系が一定程度統一されれば、将来的には「看護配置」に基づく評価の見直しも検討される可能性があります。本来、「どれだけ重症の患者を受け入れ、高度な医療を提供したか」が評価の軸となり、そうした重症患者を受け入れるためには「●対1程度の看護配置が必要なのではないか」という順番で看護配置基準などが設定されるべきでしょう。将来、どういった入院医療の評価体系が完成するのか注目されます。
入院前から「退院困難な患者」を抽出し、計画的に支援することを評価
入院医療に共通する見直しとして、メディ・ウォッチ編集部では「退院支援」(入退院支援)の充実に注目しています。退院困難な患者を早期に抽出し、多職種連携の下で退院を支援していくことで「在院日数の短縮」を目指すものです。
この点について、厚労省は「より早期からの退院支援が重要」と判断、「外来における相談・連携担当者が、入院が決まっている患者に対して、『入院前』からさまざまな支援を行う」取り組みを診療報酬で評価する考えを示しています(関連記事はこちら)。
予定患者であれば、外来において▽入院生活のオリエンテーション▽持参薬の確認▽リスクアセスメント、退院支援スクリーニング―などを行うことが可能で、より計画的な退院支援が可能となります。患者にとっても事前に入院生活などをイメージでき、安心感が増します。さらにDPC病院では「必要な検査などが確実に外来で実施されたか」などの確認が入院前に可能となり、コスト管理の充実という副次的な効果も期待できます。
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、かねてからこの点に着目し「入院サポートセンター」の創設を提唱しています。円滑な在宅復帰はもとより、▼病棟看護師の負担軽減▼患者満足度の向上―などとともに、「収益向上」という目に見える成果も出ており(関連記事はこちらとこちら)、さらに診療報酬での評価も行われるため、より多くの病院で取り組みが広まることが期待されます(関連記事はこちらとこちら)。
なお中小規模の病院では、こうした部署を外来に設置することが難しいかもしれません。そこで厚労省は、「中小病院を主な対象とした(入院前からの退院支援に対する)評価」も設置する考えです。例えば、中小病院に限り「相談・連携の専従・専任でない看護職員が、入院前からの退院支援を実施した場合でも、その取り組みを診療報酬で評価する」といった仕組みが考えられそうで、より柔軟な体制で、退院支援に積極的に取り組むことが期待されます。
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