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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

2018年度改定、年明けからの個別協議に向け各側がスタンスを表明―中医協総会

2017.12.22.(金)

 2018年度の次期診療報酬に向けた議論が、年明けからいよいよ具体化します。これに先立って開催された12月22日の中央社会保険医療協議会・総会では、診療側・支払側の双方が、これまでの議論を踏まえて、入院・外来・在宅などの各項目に対するスタンスを明確にしました。

12月22日に開催された、「第381回 中央社会保険医療協議会 総会」

12月22日に開催された、「第381回 中央社会保険医療協議会 総会」

総論・各論の議論を踏まえ、さらに広範な視点から改定に向けた意見を整理

 2018年度の次期診療報酬改定に向けた議論は、▽医療・介護双方に関連の深い事項に関する意見交換(中医協、社会保障審議会・介護給付費分科会の双方の委員が出席)▽総論▽各論▽個別診療報酬項目の議論(施設基準や点数設定)—という大きく4段階で進められます。すでに各論までを終え、いよいよ年明けから個別項目に関する具体的な議論が行われます。

 個別項目に関する議論は、改定する診療報酬項目を明示し、現行と改定案を整理した「短冊」と呼ばれる資料に基づいて進められます。この「短冊」に向けて12月22日の中医協総会では、診療側・支払側の双方が、これまでの各論までの議論を振り返った「意見」を提示しました。膨大な内容なので、ポイントを絞って眺めてみます。

【入院医療】の再編・統合、重症患者割合などが争点に

 入院医療については、急性期から長期療養に至るまでの入院料(一般病棟入院基本料、療養病棟入院基本料、地域包括ケア病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料)の再編・統合案が厚生労働省から提案されています。具体的には、急性期から長期療養までのそれぞれの段階で、看護配置などに応じた【基本部分】と、診療実績(重症患者割合やアウトカム評価など)に応じた【段階的評価部分】とを組み合わせて評価するという仕組みです(関連記事はこちらこちらこちら)。

7対1・10対1の再編・統合(橙色部分)にとどまらず、回復期機能(13対1・15対1・地域包括ケア、回復期リハ、緑色部分)、慢性期機能(療養、灰色の部分)についても入院料の再編・統合が行われる見通し

7対1・10対1の再編・統合(橙色部分)にとどまらず、回復期機能(13対1・15対1・地域包括ケア、回復期リハ、緑色部分)、慢性期機能(療養、灰色の部分)についても入院料の再編・統合が行われる見通し

 
 これについて支払側は、「将来の医療ニーズの変化に対応する医療の提供体制確保を推進する観点から、弾力的で円滑な選択・変更が可能となるよう、『看護職員配置等に応じた評価』(基本部分)と『診療実績に応じた段階的な評価』(実績部分)との組み合わせによる新たな評価体系を導入すべき」とし、厚労省提案を正面から受け入れています。

 一方で診療側は「看護職員配置数により格差がつく評価体系を改めるべき」とはするものの、▼医療機関の設備投資・維持管理費用について明確に評価する▼看護師だけでなく多種の医療従事者の人件費についても適切に評価する—ことを求めており、厚労省の再編・統合案に対しては「賛否」を留保しています。具体的な議論は、後述する重症患者割合などの数字を待つことになるでしょう。

 とくに急性期入院医療を担う7対1・10対1の再編・統合案では、【段階的評価部分】の診療実績について、当面「重症患者割合」(重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者の割合)を用いる方針が示されています。この点、▼現行の7対1相当・10対1相当の病院で重症度、医療・看護必要度とEF統合ファイル(DPCデータ)とを選択できる▼中間的な評価の病院ではEF統合ファイルを用いる—こととしてはどうかとの考えも示されました。

各入院料は、看護配置などに応じた【基本部分】と、診療実績などに応じた【段階的評価部分】との組み合わせとして設定されることになりそうだ

各入院料は、看護配置などに応じた【基本部分】と、診療実績などに応じた【段階的評価部分】との組み合わせとして設定されることになりそうだ

 
 重症度、医療・看護必要度には「評価のための研修を受けなければならず、評価者で結果にバラつきが出る」「看護職員の負担が大きい」といった課題が指摘され、より標準的な指標と言えるEF統合ファイルへの置き換えが検討されているのです。

この点について支払側は、「2018年度改定においても、可能な限りにおいてEF統合ファイルの積極的な活用を図るべき」との考えを明示。診療側は、「EF統合ファイルを使った重症患者割合の分布や相関などを引き続き詳細に検証し、多職種配置を基本とした新たな評価指標の創設に向けて検討を行うべき」と、やや慎重な姿勢を示しています。

 さらに、最大の論点とも目される「重症患者割合の基準値」(現在、7対1では25%以上)については、支払側は▼7対1相当は重症度、医療・看護必要度の評価項目見直しなどを踏まえて「30%以上」にまで引き上げるべき▼EF統合ファイルを用いた際の基準値は、定義の変更・判定基準の追加における基準値の変動、機能の明確化などを総合的に勘案し、適切な基準値を設定すべき—と指摘しましたが、診療側は具体的なコメントを避けています。

 このほか支払側は、▼200床未満の10対1や回復期リハビリ病棟1・2などでDPCデータ提出を要件化する▼退院支援加算において「在院日数の短縮」などのアウトカム要件も追加する—ことなどを要望していく考えを示しました。

一方、診療側は、▼月平均夜勤72時間ルールについて計算方法を緩和する▼入院患者が他医療機関を受診した場合、当該「他医療機関」での診療報酬請求を認める▼医療安全管理・院内感染症対策等に対する評価を充実する▼急性期看護補助体制加算を入院全期間において算定できるようにする▼ICUにおける患者の病態に応じて日数を延長する▼患者の生命維持や治療に不可欠で代替困難な薬剤や放射線治療等の高額医療を特定入院料の包括から除外する—ことなどを求めていく考えを示しました。

【外来医療】、支払側は生活習慣病などの医学管理についてアウトカム評価を提唱

外来医療について、これまでの中医協では「生活習慣病の重症化予防」「地域包括診療料などの普及促進」などが議題に上がっていますが、両側ともにより広い視点で見解を示しています。

支払側は、▼医師と保険者、行政等が連携し、患者を医師の継続的な医学管理の下に置くことにより、生活習慣病の重症化予防からの脱落を防止する▼生活習慣病等の医学管理料について、医師が患者の特定健診の受診の有無を確認する等、保険者との連携を要件化するとともに、アウトカム評価を導入する▼紹介状なしに外来受診した場合に特別負担徴収が義務化される病院を、原則200床以上の医療機関に拡大する▼地域包括診療料などで在宅医療提供などを別建て評価する場合には、現行点数を引き下げる—ことが必要と指摘。

一方、診療側は、▼小児科外来診療料について「医師の技術料を十分評価した点数へ引き上げ」「対象年齢の拡大」「高点数の検査や診療情報提供料の包括からの除外」を行う▼初・再診料、外来診療料について、医師の技術を適正に評価し、コストに見合った点数に引き上げる▼再診料を2010年度改定前の水準(71点)に引き上げる▼地域包括診療料などの要件を緩和し、点数を引き上げる—よう求めました。

また外来に限定されませんが、厚労省は「オンライン診察」を診療報酬上で明確に位置付けることも提案しました(関連記事はこちら)。この点、支払側は、▼ガイドラインを策定し、主治医が行うことを基本とする▼算定上限を月1回までとし、定額報酬とする—ことなどが必要とコメントしていますが、診療側は具体的な言及は避けています。今後の動きを見極める姿勢に徹していると考えられそうです。

【在宅医療】、複数医療機関による訪問診療の「要件」が今後のポイントに

 在宅医療について支払側の意見を眺めると、▼在総管における「重症患者」以外の患者像をより明確にし、軽度患者では訪問診療料も包括化する▼併設する有料老人ホーム等の入居者を訪問診療する場合について、新たな評価を設ける▼診療報酬上に「人生の最終段階の医療の決定プロセスに関するガイドライン」の普及を要件として位置づける▼複数医療機関による訪問診療については、主治医と異なる診療科の医師が訪問した場合のみ可能とし、患者1人当たりの算定回数上限を設ける—よう要望しています。

 一方、診療側は、▼「1患者1医療機関」を見直し、主治医の専門以外の診療科の協力によるチーム医療を可能とする▼同一患者の異なる疾患に対して、各専門医療機関がそれぞれ異なる注射剤に対し、在宅自己注射指導管理を行った場合に、それぞれの算定を認める―ことなどが必要と述べました。

手術点数、診療側は「時間短縮=適正化」ではない点を強調

このほか支払側は2018年度次期改定に向けて、▼回復期リハビリ病棟における実績指数(リハビリの効果に着目したアウトカム評価)を引き上げるとともに、入院料やリハビリ充実加算の算定要件とする▼維持期・生活期のリハビリテーションの介護保険への移行を進める▼抗不安薬等について、精神科を標榜していない医療機関における診療報酬上の取り扱いを見直す▼人工腎臓に係る6時間以上の慢性維持透析を評価する一方、6時間未満の透析の評価については適正化を図る▼医療従事者の専従要件緩和などは限定的な取り扱いとする▼外来患者への相談支援に対する診療報酬上の評価については、慎重に算定要件・施設基準の検討を進める—ことが必要と述べています。

また診療側は、▼夜間休日救急搬送医学管理料の増額・要件緩和、救急医療管理加算のさらなる評価、院内トリアージ実施料の要件緩和を行う▼診療情報提供料(I)を、行政・保健・福祉関連機関等へ情報提供した場合などでも算定可能とする▼コンピュータ断層診断の要件を見直し、他医療機関撮影のCT等読影は初・再診にかかわらず評価する▼処置・手術・麻酔における「休日加算1」「時間外加算1」「深夜加算1」について要件を見直す(当直明け外科医が手術に参加するあり方の見直しを行う)▼先端医療機器の導入や医師の研鑽の結果による手術の効率化や手術時間の短縮を正しく評価する(時間短縮=適正化では困る)▼同一手術野で複数手術を行った場合でも、手技料をそれぞれ算定可能とする▼自動縫合器・自動吻合器加算の適応手術を拡大する▼放射線治療計画の策定や放射線物質の適切な管理等に対して、放射線治療計画チーム加算を新設する—ことなどを求めました。

 
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