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臓器移植拒絶治療に用いるセルセプト等を「ANCA関連血管炎」や「皮膚禁煙」の治療に用いることなどを保険診療上認める—支払基金・厚労省

2024.10.2.(水)

臓器移植拒絶治療に用いるセルセプト等を「ANCA関連血管炎」や「皮膚禁煙」の治療に用いることなどを保険診療上認める—。

心疾患治療に用いるジゴシン注や、不整脈治療に用いるソタコール錠、タンボコール錠などを「胎児頻脈性不整脈」の治療に用いることなどを保険診療上認める—。

社会保険診療報酬支払基金(支払基金)が、9月30日に公表した「医薬品の適応外使用に関する特例ルール」において、こうした点が明らかにされました(支払基金の審査情報提供サイトはこちら)。厚生労働省も同日に、事務連絡「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」を示しています。

薬理作用等に照らし、審査における「医薬品使用の柔軟な取扱い」を一定程度認める

保険診療において、医薬品の使用は「薬事・食品衛生審議会(薬食審)で有効性・安全性が認められた傷病」(添付文書に記載された傷病)に限定されます。添付文書に規定されていない傷病への医薬品使用(適応外使用)は原則として保険診療の中では認められず、すべてが自由診療となります(混合診療の禁止)。医薬品使用を無制限に認めたのでは医療費の高騰・医療費財源の不適切な配分にもつながってしまうためであるとともに、何より「医療安全の確保」ができなくなってしまうためです。

ただし医療現場では「医学的・薬学的知見に照らし、薬食審で認められていない傷病にも一定の効果がある」と強く推測されるケースがあります。こうした場合には、例外的にレセプト審査において柔軟な対応(適応外使用であっても保険診療と扱うことを認める)がなされることがあります(いわゆる「55年通知」(旧厚生省保険局長による1980年(昭和55年)発出の通知)に基づく適応外使用など)。

もっとも、こうした例外的な取り扱いを野放図に認めれば「全国一律の診療報酬」の原則に反し、結果「混合診療の解禁」にもつながりかねません。現に、地方独自の審査ルール(都道府県ルール、例えば「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認める」「地域によって、疾患別リハビリテーションを1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)」など)が存在しており、是正に向けた取り組みも進められています。また「審査の透明性」という面でも大きな問題があります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

そこで支払基金では、こうした「例外的な取り扱い」に関する審査ルールを明確にし、適宜、医療関係者らに情報提供しています支払基金の審査情報提供サイトはこちら)。



今般、支払基金は薬剤について、次の8件の審査ルール(特別ルール)を明確にしました。

(1)腎移植後の難治性拒絶反応の治療などに用いる「ミコフェノール酸モフェチル」【内服薬】(主な製品名:セルセプトカプセル250、セルセプト懸濁用散31.8%、他後発品あり)について、「ANCA関連血管炎」(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(TおよびBリンパ球増殖の選択的抑制)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽用法・用量
(成人)通常、ミコフェノール酸モフェチルとして1回250-1000mgを1日2回、12時間毎に食後経口投与する(年齢、症状により適宜増減するが、1日3000mgを上限とする)
(小児)通常、ミコフェノール酸モフェチルとして1回、対表面積1平米当たり150-600mgを1日2回、12時間毎に食後経口投与する(年齢、症状により適宜増減するが、1日2000mgを上限とする)
▽「重症、難治症例に対して既存治療で効果不十分な場合」に限り本剤使用を認める
▽副作用として「催奇形性や免疫抑制作用による易感染性」があるため、計画妊娠の啓発や感染症合併時に対する注意、定期的な血球数評価が必要である



(2)腎移植後の難治性拒絶反応の治療などに用いる「ミコフェノール酸モフェチル」【内服薬】(主な製品名:セルセプトカプセル250、セルセプト懸濁用散31.8%、他後発品あり)について、「皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(プリン生合成阻害によるリンパ球細胞の選択的増殖抑制)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽用法・用量
(成人)通常、ミコフェノール酸モフェチルとして1回250-1000mgを1日2回、12時間毎に食後経口投与する(年齢、症状により適宜増減するが、1日3000mgを上限とする)
(小児)通常、ミコフェノール酸モフェチルとして1回、対表面積1平米当たり150-600mgを1日2回、12時間毎に食後経口投与する(年齢、症状により適宜増減するが、1日2000mgを上限とする)
▽「重症、難治症例に対して既存治療で効果不十分な場合」に限り本剤使用を認める
▽副作用として「催奇形性や免疫抑制作用による易感染性」があるため、計画妊娠の啓発や感染症合併時に対する注意、定期的な血球数評価が必要である



(3)造影剤の「イオヘキソール」【注射薬】(主な製品名:オムニパーク240注10mL、オムニパーク300注10mL、同20mL、同50mL、同100mL、オムニパーク350注20mL、同50mL、同100mL、オムニパーク240注シリンジ100mL、オムニパーク300注シリンジ50mL、同80mL、同100mL、同110mL、同125mL、同150mL、オムニパーク350注シリンジ45mL、同70mL、同100mL、他後発品あり)について、▼以下の場合における消化管造影」(狭窄の疑いのあるとき、穿孔の恐れのあるとき(消化器潰瘍、憩室)、その他外科手術を要する急性症状時、胃および腸切除後(穿孔の危険、縫合不全)▼胃・腸瘻孔の造影—に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認めることとする

→薬理作用(イオヘキソールを主成分とする非イオン性低浸透圧ヨード造影剤)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽当該使用例は「15歳までの小児の患者」に認める
▽当該使用例の用法・用量
→通常、小児に下記の用量を1回量とし、経口または注腸投与する
・3か月未満:5-30mL
・3か月-3歳:60mLまで
・4歳-10歳:80mLまで
・10歳以上:100mLまで



(4)X線造影剤の「イオジキサノール」【注射薬】(主な製品名:ビジパーク270注20mL、同50mL、同100mL、ビジパーク320注50mL、同 00mL)について、▼以下の場合における消化管造影(狭窄の疑いのあるとき、穿孔の恐れのあるとき(消化器潰瘍、憩室)、その他外科手術を要する急性症状時、胃および腸切除後(穿孔の危険、縫合不全)▼胃・腸瘻孔の造影—に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認めることとする

→薬理作用(イオジキサノールを主成分とする非イオン性低浸透圧ヨード造影剤)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽当該使用例は「15歳までの小児の患者」に認める
▽当該使用例の用法・用量
→通常、小児に1回、体重1㎏あたり5mL(10-240mL)を経口または注腸投与する



(5)先天性心疾患、弁膜疾患、高血圧症などに基づくうっ血性心不全や心房細動・粗動による頻脈などの治療に用いる「ジゴキシン」【内服薬・注射薬】(主な製品名:ジゴシン注0.25mg、ジゴキシン錠0.125mg、同0.25mg)について、「胎児頻脈性不整脈(持続して胎児心拍数180bpm以上となる上室頻拍、または心房粗動に対して処方・使用した場合、当該使用事例を審査上認めることとする

→薬理作用(Na(ナトリウム)/K(カリウム)ポンプ遮断作用)が同様と推定される

→当該使用における留意事項
▽当該使用例の用法・用量
(急速飽和療法)▼ジゴキシン内服薬1.0mgを2回に分割経口投与▼ジゴキシン注射薬1.0mgを初回0.5mg、8時間毎に0.25mgを2回に分割静脈投与—する
(維持療法)ジゴキシン内服薬1日0.75mgを3回に分割経口投与する(母体血中濃度が1.5-2.0ng/mLになるように適宜増減する)
▽母体および胎児への安全性が担保できる施設においてのみ投与する
▽当該使用例の対象となる妊娠週数は、国内臨床試験で有効性・安全性が確認された妊娠22週以上37週未満とする



(6)不製脈治療に用いる「ソタロール塩酸塩」【内服薬】(主な製品名:ソタコール錠40mg、同80mg、他後発品あり)について、「胎児頻脈性不整脈」(持続して胎児心拍数180bpm以上となる上室頻拍または心房粗動)に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(Kチャンネル遮断作用/β遮断作用)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽当該使用例の用法・用量
→ソタロール塩酸塩として1日160mgから投与を開始し、効果が不十分な場合は1日320mgまで漸増し、1日2回に分けて経口投与する
▽母体および胎児への安全性が担保できる施設においてのみ投与する
▽当該使用例の対象となる妊娠週数は、国内臨床試験で有効性・安全性が確認された妊娠22週以上37週未満とする



(7)不整脈治療に用いる「フレカイニド酢酸塩」【内服薬】(主な製品名:タンボコール錠50mg、同100mg、他後発品あり)について、「胎児頻脈性不整脈」(持続して胎児心拍数180bpm以上となる上室頻拍または心房粗動)に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(Naチャンネル遮断作用)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽当該使用例の用法・用量
→フレカイニド酢酸塩として1日200mgから投与を開始し、効果が不十分な場合は1日300mgまで漸増し、1日2-3回に分けて経口投与する
▽母体および胎児への安全性が担保できる施設においてのみ投与する
▽当該使用例の対象となる妊娠週数は、国内臨床試験で有効性・安全性が確認された妊娠22週以上37週未満とする



(8)排卵障害にもとづく不妊症の排卵誘発、生殖補助医療における調節卵巣刺激、乏精子症における精子形成の誘導に用いる「クロミフェンクエン酸塩」【内服薬】(主な製品名:クロミッド錠50mg)について、生殖補助医療における調節卵巣刺激に対して1日50-100mgを月経周期3日目から投与開始し卵胞が十分発育するまで継続した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(卵胞成熟前のLHサージ抑制による早発排卵防止/抗エストロゲン作用によるFSH増加に伴う卵胞発育促進)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽月経周期3日目からトリガーの前日(概ね10日間)までの経口投与を認める



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