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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

臓器移植後の拒絶反応抑制に用いるプログラフの「若年性特発性関節炎」治療使用など認める―支払基金・厚労省

2022.3.2.(水)

「臓器移植における拒絶反応の抑制」などに用いる「シクロスポリン」(製品名:ネオラール内用液10%、同10mgカプセルほか)について、「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」と「二次性血球貧食性リンパ組織球症」に対する投与を審査上認める―。

やはり「臓器移植における拒絶反応の抑制」などに用いる「タクロリムス水和物」(製品名:プログラフカプセルほか)について、「ラスムッセン脳炎」と「若年性特発性関節炎」に対する投与を審査上認める―。

抗がん剤の「エトポシド」(製品名:ベプシド注100mg、ラステット注100mg/5mLほか)について、「造血幹細胞移植の前治療」に用いることを審査上認める―。

こうした審査情報を社会保険診療報酬支払基金(支払基金)が2月28日に公表しました(支払基金の審査情報提供サイトはこちら(ページの最終部分(p.410-p.441)に、今回の事例が追加された))。厚生労働省も同日に、事務連絡「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」を示しています。

薬理作用等に照らし、審査における「医薬品使用の柔軟な取扱い」を一定程度認める

保険診療においては、医薬品の使用は「薬事・食品衛生審議会(薬食審)で有効性・安全性が認められた傷病」(添付文書に記載された傷病)に限定されます。添付文書に規定されていない傷病への医薬品使用(適応外使用)を無制限に認めたのでは医療費の高騰・医療費財源の不適切な配分につながることはもとより、何より「医療安全の確保」ができなくなってしまうためです。したがって、「適応外使用」が行われた場合には、一連の診療はすべて自由診療となり、「全額自己負担」となるのが原則です(混合診療の禁止)。

しかし医療現場では、「医学的・薬学的知見に照らし、薬食審で認められていない傷病にも一定の効果がある」と強く推測されるケースがあります。こうした場合には、例外的にレセプト審査において一定の柔軟な対応(適応外使用であっても保険診療と扱うことを認める)がなされることがあります(いわゆる「55年通知」(旧厚生省保険局長による1980年(昭和55年)発出の通知)に基づく適応外使用など)。

もっとも、こうした例外的な取り扱いを野放図に認めれば「全国一律の診療報酬」の原則に反します。現に、地方独自の審査ルール(都道府県ルール、例えば「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認める」「地域によって、疾患別リハビリテーションを1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)」など)が存在しており、是正に向けた取り組みも進められています。また「審査の透明性」という面でも大きな問題があります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

そこで支払基金では、こうした「例外的な取り扱い」に関する審査ルールを明確にし、適宜、医療関係者らに情報提供しています支払基金の審査情報提供サイトはこちら((ページの最終部分(p.410-p.441)に、今回の事例が追加された))。

クリアボーンを「心シンチグラムによる心アミロイドーシスの診断」に用いること認める

今般、支払基金は次の11の審査ルールを明確にしました。

(1)放射線医薬品基準ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)【注射薬】(製品名:クリアボーンキット、クリアボーン注)について、「心シンチグラムによる心アミロイドーシスの診断」に対する投与を審査上認める

(2)「エトポシド」(製品名:ベプシド注100mg、ラステット注100mg/5mLほか)について、「造血幹細胞移植の前治療」に対する投与を審査上認める

(3)「シクロスポリン」(製品名:ネオラール内用液10%、同10mgカプセルほか)について、「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」に対する投与を審査上認める

(4)「アザチオプリン」(製品名:アザニン錠、イムラン錠)について、「全身型重症筋無力症」に対する投与を審査上認める

(5)「アリピプラゾール」(製品名:エビリファイ錠ほか)について、「ジル・ドゥ・ラ・トゥーレット症候群」に対する投与を審査上認める

(6)「タクロリムス水和物」(製品名:プログラフカプセルほか)について、「ラスムッセン脳炎」に対する投与を審査上認める

(7)「カルバマゼピン」(製品名:テグレトール錠ほか)について、「発作性運動誘発舞踏アテトーシス」に対する投与を審査上認める

(8)「ミコフェノール酸 モフェチル」(製品名:セルセプトカプセルほか)について、▼ステロイド依存性ネフローゼ症候群▼頻回再発型ネフローゼ症候群―に対する投与を審査上認める

(9)「タクロリムス水和物」(製品名:プログラフカプセルほか)について、「若年性特発性関節炎」に対する投与を審査上認める

(10)「シクロスポリン」(製品名:サンディミュン点滴静注用250mg)について、「二次性血球貧食性リンパ組織球症」に対する投与を審査上認める

(11)「デキサメタゾンパルミチン酸エステル」(製品名:リメタゾン静注2.5mg)について、「二次性血球貧食性リンパ組織球症」に対する投与を審査上認める



まず(1)の放射線医薬品基準ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)【注射薬】(製品名:クリアボーンキット、クリアボーン注)は「骨シンチグラムによる骨疾患の診断」に用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様と推定される」として、「心シンチグラムによる心アミロイドーシスの診断」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量
▼クリアボーンキット:心シンチで使用する場合には、被験者に555-740MBqを肘静脈内に注射し、2・3時間後に心シンチをとる
▼クリアボーン注:被験者に555-740MBqを肘静脈内に注射し、2・3時間後に心シンチをとる

ベプシド注等を「造血幹細胞移植の前治療」に用いること認める

また(2)の「エトポシド」(製品名:ベプシド注100mg、ラステット注100mg/5mLほか)は肺小細胞がんや悪性リンパ腫、急性白血病などの幅広いがん治療に用いることが認められています。今般、「薬理作用が同様であり、妥当と推定される」として、「造血幹細胞移植の前治療」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量:▼同種造血幹細胞移植前治療として、体重1kgあたり1日15-30mgを点滴静注し2日間投与▼自己造血幹細胞移植前治療として、体体積1立米あたり1日500mgを点滴静注し3日間、または同じく1日400mgを点滴静注し4日間投与―する(疾患・患者の状態で適宜減量)
▽造血幹細胞移植に十分な知識・経験を有する医師の下で行う
▽強い骨髄抑制により致命的な感染症等が発現する恐れがあり、▼重症感染症を合併している患者には投与しない▼本剤投与後、患者の観察を十分に行い、感染症予防ための処置(抗感染症薬の投与等)を行う―点に留意する

ネオラール等を「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」治療に用いること認める

また(3)の「シクロスポリン」(製品名:ネオラール内用液10%、同10mgカプセルほか)は「臓器移植における拒絶反応の抑制」「ネフローゼ症候群」「全身型重症筋無力症」「アトピー性皮膚炎などに用いることが認められています。今般、「薬理作用が同様と推定される」として、「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量:通常、シクロスポリンとして1日量「体重1kgあたり5mg」を1日2回にあけて経口投与する(徐々に減量し、維持量は同じく3mgを標準とする)。症状により適宜増減
▽副作用発現を予防するため、定期的な血中濃度のモニタリングを行い、投与量の調節を行う
▽重症例や副腎皮質ステロイド剤、経静脈的免疫グロブリン療法などが無効な症例に限り投与を認める

アザニン錠等を「全身型重症筋無力症」治療に用いること認める

他方(4)の「アザチオプリン」(製品名:アザニン錠、イムラン錠)は、「臓器移植における拒絶反応の抑制」「潰瘍性大腸炎の寛解維持」「治療抵抗性のリウマチ性疾患」「自己免疫性肝炎」に用いることが認められています。今般、「薬理作用が同様であり、妥当と推定される」として、「全身型重症筋無力症」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量
▼成人:アザチオプリンとして体重1kgあたり1-2mg相当量(1日量)
▼小児:アザチオプリンとして体重1kgあたり0.5-1mg相当量(1日量)で導入し、1日につき「体重1kgあたり0,5mg」ずつ増量する(最大体重1kgあたり2.5mgまで)
▼NUDT15遺伝子多型でArg/Cys、 His/Cys、Cys/Cys型の患者においては「脱毛」「白血球減少」などの副作用のため「低用量」が推奨される
▽▼Nudix hydrolase 15(NUDT15)遺伝子多型でCys/Cys型を有する患者では、本剤投与後に「脱毛」「白血球減少」などの副作用発現の可能性が高くなる。より安全に使用するため、本剤投与前に「NUDT15遺伝子多型検査」を行うことが望ましい
▽参考ガイドライン:▼重症筋無力症診療ガイドライン2014▼自己免疫性神経筋接合部疾患の治療ガイドライン▼重症筋無力症管理の国際的コンセンサス―

エビリファイ等を「ジル・ドゥ・ラ・トゥーレット症候群」治療に用いること認める

また(5)の「アリピプラゾール」(製品名:エビリファイ錠ほか)は「統合失調症」や「双極性障害における躁症状の改善」などに用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様であり、妥当と推定される」として、「ジル・ドゥ・ラ・トゥーレット症候群」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量
▼体重50kg未満:1日2mgで開始し、1日5mgを標的用量とし、最大量は1日10mgまで増量可
▼体重50kg以上:1日2mgで開始し、1日10mgを標的用量とし、最大量は1日20mgまで増量可
▼標的用量以上への増量については、投与量の調整は1週間以上の間隔で徐々に増量をお行う必要がある。なお、症状により適宜増減する
▽薬理作用から高プロラクチン血症の危険はないが、頻度が多い副作用として鎮静、傾眠、体重増加への注意が必要である。特に継続使用において体重増加など代謝面への注意が必要である。他の抗精神病薬に比べ錐体外路症状の出現頻度は少ないが、注意は必要である

プログラフ等を「ラスムッセン脳炎」治療に用いること認める

まず(6)の「タクロリムス水和物」(製品名:プログラフカプセルほか)は「臓器移植における拒絶反応の抑制」「重症筋無力症」「関節リウマチ」「潰瘍性大腸炎」などに用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様であり、妥当と推定される」として、「ラスムッセン脳炎」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量:タクロリムスとして、成人には1日3mg・小児には1日体重1kgあたり0.1mgで開始し、1日1回夕食後に経口投与する
▽血中濃度(トラフ値)をモニターし、開始後3か月間は月に1回「1mlあたり5.1±2.73ng」の範囲にあるかを確認する。2か月間経過した時点で効果が不十分で血中濃度上昇が不十分な場合、投与量を増量する。3か月経過した時点で効果が十分ある場合は減量する

テグレトールを「発作性運動誘発舞踏アテトーシス」治療に用いること認める

また(7)の「カルバマゼピン」(製品名:テグレトール錠ほか)は「精神運動発作」「てんかんの痙攣発作」「躁病」「三叉神経痛」などに用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様で、妥当と推定される」として、「発作性運動誘発舞踏アテトーシス」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量:抗てんかん薬としての通常の維持用量(1につき小児100-600mg、成人200-600mg)を下回る少量を使用する。学童期で1日50-100mgを維持量し、成人でも小児と同様の維持用量で効果を継続することができる。1日1回または2回に分けて経口投与する。なお、症状による適宜増減する
▽少量でも、特に投与初期には薬疹を来す可能性を考慮しておく
▽本病には少量で有効であるため、傾眠の副作用を軽いと考えられるが、一定の注意を怠らない

セルセプトをステロイド依存性ネフローゼ症候群などの治療に用いること認める

他方、(8)の「ミコフェノール酸 モフェチル」(製品名:セルセプトカプセルほか)は「臓器移植における拒絶反応の抑制」「ループス腎炎」などに用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様であり、妥当と推定される」として、▼ステロイド依存性ネフローゼ症候群▼頻回再発型ネフローゼ症候群―に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量
▼小児:通常、ミコフェノール酸 モフェチルとして、体表面積1平米当たり1日1000-1200mg(または体重1kg当たり24-36mg、最大2000mg)を2回に分けて経口投与する
▼成人:通常、ミコフェノール酸 モフェチルとして、1日1000-2000mgを2回に分けて経口投与する。年齢、症状による適宜増減するが「1日3000mg」を上限とする

プログラフなどを「若年性特発性関節炎」治療に用いること認める

さらに(9の「タクロリムス水和物」(製品名:プログラフカプセルほか)は「臓器移植における拒絶反応の抑制」「重症筋無力症」「関節リウマチ」「潰瘍性大腸炎」などに用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様で、妥当と推定される」として、「若年性特発性関節炎」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量:通常、タクロリムスとして体重1kgあたり1日0.05-0.15mgを1日1回夕食後に経口投与する。関節リウマチに対する上限量「3mg」を超えない。
▽難治例や既存治療で効果不十分な場合に限り認める
▽顆粒とカプセルの生物学的同等性は検証されていない
▽若年性特発性関節炎の治療に精通している医師が使用する
▽薬物代謝酵素CYP3A4で代謝される薬剤との併用で血中濃度が上昇する
▽免疫抑制作用を有する薬剤との併用で、過度の免疫抑制による感染症・リンパ腫の発症に注意する

サンディミュン点滴静注を「二次性血球貧食性リンパ組織球症」治療に用いること認める

また(10)の「シクロスポリン」(製品名:サンディミュン点滴静注用250mg)は「臓器移植における拒絶反応の抑制」「ネフローゼ症候群」「全身型重症筋無力症」「アトピー性皮膚炎などに用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様であり、妥当と推定される」として、「二次性血球貧食性リンパ組織球症」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量:体重1kg当たり1位置1-1.5mgを持続点滴静注する
▽血圧上昇により▼可逆性後頭葉白質脳症症候群▼高血圧性脳症―などの中枢神経障害(1%未満)を発症することがある
▽マクロファージ活性化症候群では高用量のステロイド薬と併用するため、より一層の注意が必要で、厳密な血圧管理と血中濃度のモニタリングが可能な環境下で使用する

メタゾン静注を「二次性血球貧食性リンパ組織球症」治療に用いること認める

さらに(11)の「デキサメタゾンパルミチン酸エステル」(製品名:リメタゾン静注2.5mg)は「関節リウマチ」に用いることが認められています。今般、「薬理作用(殺菌作用)が同様であり、妥当と推定される」として、「二次性血球貧食性リンパ組織球症」に対する投与が審査上認められることになりました。

この場合、次にように使用することが求められます。
▽用法・用量:デキサメタゾンとして体表面積1平米当たり1日10mgを2回に分けて投与開始し、数日ごとに漸減する

【更新履歴】「若年性特発性関節炎」と「若年性突発性関節炎」と記載しておりました。申し訳ございません。記事は修正済です。



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