DPCで「アナペイン注2mg/mL」は麻酔の薬剤料として出来高算定可能―支払基金・厚労省
2018.2.27.(火)
DPC制度において、手術終了間際(術中)あるいは手術終了直後(術後)に、麻酔覚醒時の疼痛対策(術後鎮痛)を目的として使用される「アナペイン注2mg/mL」は、「麻酔の薬剤料」として出来高算定を原則として認める—。
こうした審査情報を社会保険診療報酬支払基金(支払基金)が2月26日に公表しました(支払基金のサイトはこちら)。厚生労働省も同日に、事務連絡「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」を関係団体等に向けて行っています。
糖尿病確定診断後の患者へのインスリン(IRI)の連月算定は、原則不可
医薬品の保険診療における使用は、薬事・食品衛生審議会(薬食審)で有効性・安全性が認められた傷病に対するケースに限定されます。医療安全を確保すると同時に、医療保険財源の適正配分を確保するためです。
もっとも医療現場においては、医学的・薬学的知見に照らして「薬食審で認められていない疾病にも一定の効果があると強く推測される」ケースがあり、レセプト審査において一定の柔軟な取り扱いもなされています(いわゆる「55年通知」(旧厚生省保険局長による1980年発出の通知)に基づく適応外使用など)。
一方で、地方独自のルール(都道府県ルール)があることも指摘されており、例えば、「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認める」「地域によって、疾患別リハビリテーションを1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)」などのルールが存在すると言われています。
こうした地方独自ルールを放置していたのでは、「全国一律の診療報酬」に反するとともに、「審査の透明性」が確保できません(関連記事はこちらとこちらとこちら)。そこで支払基金では、審査に関するルールを適宜明確にし、医療関係者らに情報提供しています(支払基金の審査情報提供サイトはこちら)(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
今般は、次の3点の審査ルールが明確にされました。
(1)糖尿病確定診断後の患者に対するインスリン(IRI)の連月算定は、原則として認めない。ただし、症状詳記等から▼薬剤変更時▼コントロール不良例▼治療方針の評価および決定―など「連月の算定の必要性が医学的に判断できる場合」には、例外的に認める
(2)▼急性肝炎▼慢性肝炎▼肝硬変に対する「グルカゴンGノボ注射用1mg(溶解液付)」と「ヒューマリンR注カート300単位」の併用投与(GI療法)は、原則として認めない
(3)DPCにおいて、「アナペイン注2mg/mL」は「麻酔の薬剤料(医科診療報酬点数表第11部第3節)」として、その算定を原則として認める
まず(1)については、2006年3月の審査情報提供事例(第2次提供事例)で、「糖尿病と診断されても、その型別の判断が困難な症例もある。糖尿病の病態把握、特にインスリン抵抗性を知るために、一定間隔での経過観察が必要な場合もある。まれな病型だがslowly progressive I型糖尿病は、発症初期に一見II型糖尿病のような臨床症状を呈する」ことから、「原則として糖尿病確定後の患者に対しインスリン(IRI)は認められる」とされました。
もっとも、支払基金は今般、「インスリン(IRI)は、インスリン分泌能の評価を行い、病型診断(I型等)を行う検査であり、病型の診断が既に行われ症状が安定している患者に対し頻回に実施する検査ではない」として、糖尿病確定診断後の患者に対しIRIを連月算定することは原則として認めないと判断しました。
ただし、症状詳記などから、▼薬剤剤変更時▼コントロール不良例▼治療方針の評価・決定―など「連月の算定の必要性が医学的に判断できれば認める場合もある」と注記しています。
また(2)の「グルカゴンGノボ注射用1mg(溶解液付)」と「ヒューマリンR注カート300単位」の併用療法(GI療法)では、肝細胞再生の促進効果が期待されます。しかし、支払基金は、「▼急性肝炎▼慢性肝炎▼肝硬変―には、他に確立した治療薬や治療法がある」と判断し、これらの疾患に対する併用療法は「原則認められない」との取り扱いを決定しています。
なお、「劇症化に進むおそれがある急性肝炎」の場合等にも配慮し、「症例によっては詳記等から判断するケースもある」ことを注記しています。
さらに(3)の局所麻酔剤「アナペイン注2mg/mL」の効能効果は術後鎮痛で、「手術終了間際(術中)あるいは手術終了直後(術後)に、麻酔覚醒時の疼痛対策(術後鎮痛)」を目的として使用されます。
L003【硬膜外麻酔後における局所麻酔剤の持続的注入】について、2016年度診療報酬算定に関する医療課長通知では、「当該持続的注入において使用された薬剤は、術前、術中、術後にかかわらず、同第11部麻酔の第3節薬剤料としての算定となる」ことが明らかにされ、同じく疑義解釈(その1)では、「DPCで、手術に係る費用として別途算定可能な薬剤(包括評価の範囲に含まれない手術や麻酔に伴う薬剤・特定保険医療材料)の範囲は、医科点数表に定める手術(第10部)・麻酔(第11部)により算定される薬剤・特定保険医療材料である」ことが示されました。
支払基金は、こうした診療報酬算定上の規定や、▼硬膜外麻酔は「手術開始前から始まり、手術終了後も麻酔覚醒まで継続する▼術後であっても、まだ硬膜外麻酔持続的注入は継続している—と判断し、その際に使用した「アナペイン注2mg/mL」は麻酔の項目としてDPCにおいて、出来高で算定可能と決定したものです。
請求事務上はもちろん、臨床現場でも上記2点にご留意ください
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