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リュープリン注射用やカソデックス錠等を「アンドロゲン受容体陽性唾液腺がん」治療に用いることなどを保険診療上認める—支払基金・厚労省

2024.2.27.(火)

「パパベリン塩酸塩【注射薬】」(パパベリン塩酸塩注40㎎「日医工」など)を「開頭術時の脳血管攣縮に対して局所に使用」することを保険診療の中で認める—。

「ドセタキセル水和物・ドセタキセル【注射薬】」(タキソテール点滴静注用など)と「ゲムシタビン塩酸塩【注射薬】」(ジェムザール注射用など)との併用を「進行軟部肉腫」治療に用いることを保険診療の中で認める—。

「リュープロレリン酢酸塩【注射薬】」(リュープリン注射用など)を「アンドロゲン受容体陽性唾液腺がん」治療に用いることを保険診療の中で認める—。

「ビカルタミド【内服薬】」(カソデックス錠ほか)を「アンドロゲン受容体陽性唾液腺がん」治療に用いることを保険診療の中で認める—。

「デスモプレシン酢酸塩【内服薬】」(ミニリンメルトOD錠60μg)について、「尿浸透圧あるいは尿比重低下に伴う夜尿症に対して1日1回60μg製剤を経口投与」することを保険診療の中で認める—。

社会保険診療報酬支払基金(支払基金)が、2月26日に公表した「医薬品の適応外使用に関する特例ルール」において、こうした点が明らかにされました(支払基金の審査情報提供サイトはこちら(薬剤、386番以降が今回の追加分))。厚生労働省も同日に、事務連絡「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」を示しています。

薬理作用等に照らし、審査における「医薬品使用の柔軟な取扱い」を一定程度認める

保険診療において、医薬品の使用は「薬事・食品衛生審議会(薬食審)で有効性・安全性が認められた傷病」(添付文書に記載された傷病)に限定されます。添付文書に規定されていない傷病への医薬品使用(適応外使用)は原則として保険診療の中では認められず、すべてが自由診療となります(混合診療の禁止)。医薬品使用を無制限に認めたのでは医療費の高騰・医療費財源の不適切な配分にもつながってしまうためですつながることはもとより、何より「医療安全の確保」ができなくなってしまうためです。

ただし医療現場では「医学的・薬学的知見に照らし、薬食審で認められていない傷病にも一定の効果がある」と強く推測されるケースがあります。こうした場合には、例外的にレセプト審査において柔軟な対応(適応外使用であっても保険診療と扱うことを認める)がなされることがあります(いわゆる「55年通知」(旧厚生省保険局長による1980年(昭和55年)発出の通知)に基づく適応外使用など)。

もっとも、こうした例外的な取り扱いを野放図に認めれば「全国一律の診療報酬」の原則に反し、結果「混合診療の解禁」にもつながりかねません。現に、地方独自の審査ルール(都道府県ルール、例えば「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認める」「地域によって、疾患別リハビリテーションを1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)」など)が存在しており、是正に向けた取り組みも進められています。また「審査の透明性」という面でも大きな問題があります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

そこで支払基金では、こうした「例外的な取り扱い」に関する審査ルールを明確にし、適宜、医療関係者らに情報提供しています支払基金の審査情報提供サイトはこちら)。



今般、支払基金は薬剤について、次の5件の審査ルール(特別ルール)を明確にしました。

(1)▼胃炎、胆道(胆管・胆のう)系疾患に伴う内臓平滑筋の痙れん症状▼急性動脈塞栓、急性肺塞栓、末梢循環障害、冠循環障害における血管拡張と症状の改善—に用いる「パパベリン塩酸塩【注射薬】」(主な製品名:パパベリン塩酸塩注40㎎「日医工」など)について、「原則として、『開頭術時の脳血管攣縮に対して局所に使用』した場合に、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(血管拡張作用)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽当該使用例の用法・用量
→開頭手術の術中において40mgのパパベリン塩酸塩注1Aを生理食塩水で計5-20mLになるように溶解し、数滴を攣縮した血管に対して滴下・浸透させる。
▽適切な希釈液を用いる
▽止血が得られていない部位には用いない
▽大量のパパベリン塩酸塩が術野に拡散されないよう留意する



(2)乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、頭頸部がん、卵巣がん、食道がん、子宮体がん、前立腺がんの治療に用いる「ドセタキセル水和物・ドセタキセル【注射薬】」(主な製品名:タキソテール点滴静注用20mg、同80mg、ほか後発品あり)、および非小細胞肺がん、膵がん、胆道がん、尿路上皮がん、手術不能または再発乳がん、がん化学療法後に増悪した卵巣がん、再発または難治性の悪性リンパ腫の治療に用いる「ゲムシタビン塩酸塩【注射薬】」(主な製品名:ジェムザール注射用200mg、同1g、ほか後発品あり)について、「原則として『進行軟部肉腫』に対して使用(両剤の併用)した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(ドセタキセル水和物・ドセタキセル:有糸分裂阻害作用、ゲムシタビン塩酸塩:DNA合成阻害作用)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽ドセタキセル水和物・ドセタキセルの当該使用例における用法・用量
→「ゲムシタビンとの併用において、ドセタキセルとして8日目に1回、体表面積1平米当たり70mgを1時間以上かけて点滴静注する」ことを、3週1コースとして投与を繰り返す

▽ゲムシタビン塩酸塩の当該使用例における用法・用量
→「ドセタキセルとの併用において、ゲムシタビンとして1日目および8日目に1回、体表面積1平米当たり900mgを30分以上かけて点滴静注する」ことを3週1コースとして投与を繰り返す

▽ほか、「軟部腫瘍診療ガイドライン2020」などを参考にする



(3)子宮内膜症、過多月経、下腹痛、腰痛・貧血等を伴う子宮筋腫における筋腫核の縮小・症状の改善、中枢性思春期早発症、閉経前乳がん、前立腺がんの治療に用いる「リュープロレリン酢酸塩【注射薬】」(主な製品名:リュープリン注射用3.75mg、同キット3.75mgほか)、前立腺がん、閉経前乳がん、球脊髄性筋萎縮症の進行抑制に用いる「リュープロレリン酢酸塩【注射薬】」(主な製品名:リュープリンSR注射用キット11.25mgほか)、前立腺がん、閉経前乳がんの治療に用いる「リュープロレリン酢酸塩【注射薬】」(主な製品名:リュープリンPRO注射用キット22.5mgほか)について、「原則として『アンドロゲン受容体陽性唾液腺がん』に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする。

→薬理作用(下垂体-性腺機能抑制作用)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽当該使用例の用法・用量(以下のいずれかで投与する)
▼通常、成人には4週に1回リュープロレリン酢酸塩として3.75mgを皮下に投与する
▼通常、成人には12週に1回リュープロレリン酢酸塩として11.25mgを皮下に投与する
▼通常、成人には24週に1回リュープロレリン酢酸塩として22.5mgを皮下に投与する

▽アンドロゲン受容体陽性の場合に限り、当該使用例を認める



(4)前立腺がんの治療に用いる「ビカルタミド【内服薬】」(主な製品名:カソデックス錠80mg、同OD錠80mg、ほか後発品あり)について、「原則として『アンドロゲン受容体陽性唾液腺がん』に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(アンドロゲン受容体に対するアンドロゲンの結合阻害作用)が同様と推定される

→当該使用における留意事項
▽アンドロゲン受容体陽性の場合に限り、当該使用例を認める



(5)中枢性尿崩症等の治療に用いる「デスモプレシン酢酸塩【内服薬】」(主な製品名:ミニリンメルトOD錠60μgほか)について、「原則として『尿浸透圧あるいは尿比重低下に伴う夜尿症に対して1日1回60μg製剤を経口投与』した場合、当該使用事例を審査上認める」こととする

→薬理作用(抗利尿作用)が同様で、妥当と推定される

→当該使用における留意事項
▽「夜尿症診療ガイドライン2021」(日本夜尿症・尿失禁学会)を参照する



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