乳がんの疑い患者(同一病変)に対し、【乳腺腫瘍画像ガイド下吸引術】を「複数回」算定することは原則「不可」—支払基金
2025.5.8.(木)
【特定疾患療養管理料】と【慢性維持透析患者外来医学管理料】との併算定は、原則認められる—。
【肝炎ウイルス関連検査】や【微生物核酸同定・定量検査】の各項目について、B型肝炎等を持つ患者と持たない患者とで、算定の可否を整理する—。
高血圧や前胸部痛のある患者に対しては、【心電図検査】の「四肢単極誘導及び胸部誘導を含む最低12誘導」などを算定できるが、胃炎や気管支喘息の患者では原則として算定を認めない—。
胃炎の患者に対して「トリメブチンマレイン酸塩製剤」(セレキノン錠等)を投与し、薬剤料を算定することは認められるが、胃潰瘍や胃がんの患者には原則として認められない—。
乳がんの疑い患者(同一病変)に対し、【乳腺腫瘍画像ガイド下吸引術】を「複数回」算定することは原則として認められない—。
社会保険診療報酬支払基金(支払基金)が4月30日に「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)」を追加し、こうした点を明確化しました(支払基金のサイトはこちら(今回追加分)とこちら(一般的な取り扱い(医科)全体))。
診療報酬の規定・原則、医学的ガイドラインに照らし、審査の取り扱いの統一化・標準化を進める
医療保険制度の財源は「公費(税金)、保険料、患者の自己負担」であり、有限であることから、「医療提供・医療費の支払いは公平・公正に行われる」ことが強く求められます。この公平・公正を担保するルールが療養担当規則や診療報酬点数表・施設基準とその解釈などによって定められています。
患者の状態を含めた医療現場の実態は極めて多様であり、また診療報酬算定ルールにも一定の曖昧さもありますが、いわゆる地方独自の審査ルール(都道府県ルール、例えば「山間部などでは冬期に高齢者の通院が困難になるので、薬剤の1回処方量を多くすることを認める」「地域によって、疾患別リハビリテーションを1日6単位までしか認めない(診療報酬点数上は9単位まで算定可能)」など)が放置されれば「審査の透明性」という面でも大きな問題があります(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)。
そこで支払基金では「一般的な審査ルール」(全国統一ルール)を明確化し、適宜、医療関係者らに情報提供しています(支払基金の審査情報提供サイトはこちら(一般的な取り扱い(医科)全体))。
今般、支払基金は新たに33の医科に関する「一般的な審査ルール」(一般的な取り扱い(医科))を明らかにしました。診療報酬点数表や施設基準の解釈、各学会ガイドライン等に照らした判断結果で、多くは「国民健康保険団体連合会(国保連)の審査でも同様」です。
【医学管理等】
▽B000【特定疾患療養管理料】と、B001【特定疾患治療管理料】の「15 慢性維持透析患者外来医学管理料」との併算定は、原則「可」(国保も同様)
【検査】
▽B型肝炎、C型肝炎等(疑い含む)がない次の輸血前検査の算定は、原則「可」
・D013【肝炎ウイルス関連検査】の「1 HBs抗原定性・半定量」と「3 HBs抗原」
・D013【肝炎ウイルス関連検査】の「6 HBc抗体半定量・定量」
・D013【肝炎ウイルス関連検査】の「5 HCV抗体定性・定量」
▽B型肝炎、C型肝炎、HIV感染症等、HTLV-1感染症(疑い含む)がない次の輸血前検査の算定は、原則「不可」
・D023【微生物核酸同定・定量検査】の「4 HBV核酸定量」
・D023【微生物核酸同定・定量検査】の「15 HCV核酸定量」
・D023【微生物核酸同定・定量検査】の「18 HIV-1核酸定量」
・D012【感染症免疫学的検査】の「58 HIV-2抗体(ウエスタンブロット法)」
・D012感染症免疫学的検査の「13 HTLV-I抗体定性」、「31 HTLV-Ⅰ抗体」
▽B型肝炎、C型肝炎等(疑い含む)がない次の輸血後検査の算定は、原則「可」
・D023【微生物核酸同定・定量検査】の「4 HBV核酸定量」
・D013【肝炎ウイルス関連検査】の「5 HCVコア蛋白」
▽B型肝炎、HIV感染症等、HTLV-1感染症(疑い含む)がない次の輸血後検査の算定は、原則「不可」
・D013【肝炎ウイルス関連検査】の「2 HBs抗体定性、HBs抗体半定量」、「3 HBs抗体」
・D013【肝炎ウイルス関連検査】の「6 HBc抗体半定量・定量」
・D023【微生物核酸同定・定量検査】の「18 HIV-1核酸定量」
・D012【感染症免疫学的検査】の「58 HIV-2抗体(ウエスタンブロット法)」
・D012感染症免疫学的検査の「13 HTLV-I抗体定性」、「31 HTLV-Ⅰ抗体」
▽以下の傷病名に対するD014【自己抗体検査】の「3 抗甲状腺マイクロゾーム抗体半定量」、「11 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体」の算定は、原則「可」(国保も同様)
・バセドウ病(初診時または診断時)
・甲状腺機能亢進症(初診時または診断時)
・慢性甲状腺炎・橋本病(初診時または診断時)
・甲状腺機能低下症(初診時または診断時)
・無痛性甲状腺炎(初診時または診断時)
▽以下の傷病名に対するD014【自己抗体検査】の「3 抗甲状腺マイクロゾーム抗体半定量」、「11 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体」の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・甲状腺機能異常(経過観察時(定期チェック))
・亜急性甲状腺炎(経過観察時(定期チェック))
・急性化膿性甲状腺炎
・甲状腺がん(術後)
・悪性甲状腺腫瘍(術後)
・結節性甲状腺腫(経過観察時(定期チェック))
▽以下の傷病名に対するD014【自己抗体検査】の「3 抗サイログロブリン抗体半定量」、「10 抗サイログロブリン抗体」の算定は、原則「可」(国保も同様)
・バセドウ病(初診時または診断時)
・甲状腺機能亢進症(初診時または診断時)
・慢性甲状腺炎・橋本病(初診時または診断時)
・甲状腺機能低下症(初診時または診断時)
・無痛性甲状腺炎(初診時または診断時)
▽以下の傷病名に対するD014【自己抗体検査】の「3 抗サイログロブリン抗体半定量」、「10 抗サイログロブリン抗体」の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・甲状腺機能異常(経過観察時(定期チェック))
・亜急性甲状腺炎(経過観察時(定期チェック))
・急性化膿性甲状腺炎
▽混合性結合組織病(疑い含む)に対し、D014【自己抗体検査】の「5 抗核抗体(蛍光抗体法)定性」の算定は、原則「可」
▽全身性エリテマトーデス(SLE)に対し、D014【自己抗体検査】の「5 抗核抗体(蛍光抗体法)定性」の算定は、原則「可」
▽甲状腺機能低下症疑いに対し、D014【自己抗体検査】の「27 抗TSHレセプター抗体(TRAb)」の算定は、原則「不可」(国保も同様)
▽顕微鏡的多発血管炎(MPA)に対し、診断時にD014【自己抗体検査】の「33 抗好中球細胞質プロテイナーゼ3抗体(PR3-ANCA)」の算定は、原則「可」(国保も同様)
▽以下の傷病名に対し、D208【心電図検査】の「1 四肢単極誘導及び胸部誘導を含む最低12誘導」、「5 その他(6誘導以上)」の算定は、原則「可」(国保も同様)
・高血圧症
・前胸部痛(初診時
▽以下の傷病名に対するD208【心電図検査】の「1 四肢単極誘導及び胸部誘導を含む最低12誘導」、「5 その他(6誘導以上)」の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・胃炎
・気管支喘息
・肋間神経痛
・高尿酸血症
▽以下の場合、ミダゾラム注射液(ドルミカム注射液等)、フルニトラゼパム製剤(サイレース静注)またはジアゼパム(セルシン注射液等)の算定は、原則「可」(国保も同様)
・上部、下部消化管内視鏡検査時
・上部、下部消化管内視鏡手術時
▽D216-2【残尿測定検査】の「1 超音波検査によるもの」と、D215【超音波検査(記録に要する費用を含む)】の「2 断層撮影法(心臓超音波検査を除く)」の「ロ その他の場合」の「(1) 胸腹部」との併算定は、原則「可」
【画像診断】
▽「単なるルート確保」を目的とした画像診断時のリンゲル液の算定は、原則「不可」(国保も同様)
【投薬】
▽以下の傷病名「のみ」に対するアミオダロン塩酸塩【内服薬】(アンカロン錠等)の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・不整脈
・心室期外収縮
・心不全
・心不全のない心房細動
・肥大型心筋症のない心房細動
▽高血圧症がない医科の傷病名に対するロサルタンカリウム(ニューロタン錠等)の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・糖尿病
・糖尿病性腎症
▽ワーファリンとの併用による心臓弁置換術後の血栓・塞栓の抑制の患者「以外」における以下の傷病名に対するジピリダモール製剤(ペルサンチン錠100mg)単独の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・狭心症
・心筋梗塞(急性期を除く)
・その他の虚血性心疾患
・うっ血性心不全
▽以下の薬剤を胃粘膜保護剤として処方した場合の算定は、原則「可」(国保も同様)
・薬効分類番号2330の健胃消化剤
・防御因子増強剤(セルベックスカプセル、ムコスタ錠等)
▽以下の薬剤を胃粘膜保護剤として処方した場合の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・薬効分類番号2325のH2 遮断剤
・ドンペリドン(ナウゼリン錠等)、チキジウム臭化物(チアトンカプセル等)
▽以下の薬剤を処方した場合の胃粘膜保護剤としてのプロトンポンプ・インヒビター(タケプロンカプセル等)の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・ワルファリンカリウム(ワーファリン錠等)
・合成副腎皮質ホルモン剤(プレドニゾロン錠等)
・解熱鎮痛消炎剤(ロキソニン錠等)
▽難治性逆流性食道炎に対するプロトンポンプ・インヒビター(PPI)【内服薬】の初期治療量の継続投与は、原則「可」(国保も同様)
▽胃炎に対するトリメブチンマレイン酸塩製剤(セレキノン錠等)の算定は、原則「可」(国保も同様)
▽以下の傷病名に対するトリメブチンマレイン酸塩製剤(セレキノン錠等)の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・胃潰瘍
・胃がん
・胃がん術後
・逆流性食道炎
・十二指腸潰瘍
▽小児の喘息性気管支炎に対し、急性増悪(発作)時の気管支喘息治療剤または気管支拡張薬(短時間作用性β2刺激薬、テオフィリン薬)の投与は、原則「可」(国保も同様)
▽インフルエンザが確定した、以下の患者の治療時におけるオセルタミビルリン酸塩【カプセル】(タミフルカプセル)1日1回75mg の算定は、原則「可」(腎機能障害(慢性腎不全)がある患者に対する投与期間は5日間)(国保も同様)
・腎機能障害(慢性腎不全)がある患者
・透析を実施している患者
▽適応傷病名と以下の傷病名等がある患者に対する小柴胡湯エキス(ツムラ小柴胡湯エキス顆粒等)の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・肝硬変
・肝がん
・インターフェロン製剤を投与中の患者
▽肺結核またはその他の結核症(既感染者を含む)の記載がない、以下の傷病名等に対するイソニアジド(イスコチン錠等)の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・生物学的製剤投与中
・免疫不全状態
・HIV感染症
▽2型糖尿病に対する同一種類の経口血糖降下薬(以下の薬剤)の併用投与は、原則「不可」(国保も同様)
・チアゾリジン薬
・ビグアナイド薬
・α-グルコシダーゼ阻害薬
・SGLT2阻害薬
・DPP-4阻害薬またはGLP-1受容体作動薬
・スルホニル尿素(SU)薬またはグリニド薬(速攻型インスリン分泌促進薬)
▽神経障害性疼痛と以下の傷病名が併記されている場合のプレガバリン(リリカカプセル・OD錠)の算定は、原則「可」(国保も同様)
・反射性交感神経性ジストロフィー
・頸椎症
【注射】
▽入院患者における以下の傷病名に対するアシクロビル【注射薬】(ゾビラックス点滴静注用等)の算定は、原則「可」
・単純ヘルペス、単純疱疹
・帯状疱疹
・水痘
【処置】
▽爪下血腫に対するJ059-2【血腫、膿腫穿刺】の算定は、原則「不可」(国保も同様)
→J000【創傷処置】の「1 100平方センチメートル未満」の算定が妥当
▽急性前立腺炎に対するJ069【前立腺液圧出法】の算定は、原則「不可」(国保も同様)
▽以下の場合のJ113【耳垢栓塞除去】(複雑なもの)とJ095【耳処置(耳浴及び耳洗浄を含む)】の併算定は、原則「可」(国保も同様)
・別疾患に対して同側に行った場合
・別疾患に対して対側に行った場合
※なお、「同一疾患に対して同側に行った場合」は、原則「不可」
【手術】
▽乳がんの疑い(同一病変)に対し、K474-3【乳腺腫瘍画像ガイド下吸引術(一連につき)】の「複数回」算定は、原則「不可」(国保も同様)
▽冠動脈慢性完全閉塞に対する経皮的冠動脈形成術用カテーテル用ガイドワイヤー(一般用)の算定は、原則「可」(国保も同様)
▽以下の検査等に対する経皮的冠動脈形成術用カテーテル用ガイドワイヤー(一般用)の算定は、原則「不可」(国保も同様)
・D206【心臓カテーテル法による諸検査(一連の検査について)】の「1 右心カテーテル」または「2 左心カテーテル」時
・K599【植込型除細動器移植術】時
・閉塞性動脈硬化症
・透析シャント狭窄時
▽血栓除去用カテーテル(バルーン付き・一般型)を用いたK608【動脈塞栓除去術】の「2その他のもの(観血的なもの)」の算定は、原則「可」(国保も同様)
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