2020年度改定に向け、特定機能病院も含めた入院医療の評価体系を検討せよ―中医協総会 第388回(2)
2018.1.31.(水)
2020年度の診療報酬改定に向けて、2018年度の今回改定で再編・統合した「急性期一般入院料」「地域一般入院料」「療養病棟入院基本料」などの重症度、医療・看護必要度、医療区分、リハビリテーション実績指数などの指標や、看護配置状況について調査検証するとともに、特定機能病院を含めて評価体系を検討していく必要がある―。
1月31日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった内容を盛り込んだ「答申書附帯意見」案を了承しました。
目次
新点数の答申と同時に、「次期改定への宿題」を確認
中医協総会では2018年度診療報酬改定に向けた議論を一通り終え、2月7日に予定される次回会合で新点数などの答申を行う予定です。
診療報酬改定は「医療現場の課題解決」にあると言っても過言ではないでしょう(もちろん、新規の医療技術の保険収載なども重要な目的です)。ただし、一度の改定ですべての課題を解決できるわけではなく、また大きな見直しを行った場合には、その後の状況を調べ「改定の意図に沿った効果が現れているか」を確認する必要があります。
このため中医協総会では、新点数などの答申とともに「附帯意見」を表明します。いわば「次期改定に向けた宿題事項の確認」という位置づけです。
1月31日には、次のような附帯意見案が取りまとめられました。20項目もありますので、ポイントを絞って眺めてみましょう。
急性期一般入院料など、再編・統合の効果・影響を検証せよ
まず入院医療については、再編・統合される▼急性期一般入院基本料(現行の7対1・10対1)▼地域一般入院基本料(現行の13対1・15対1)▼療養病棟入院基本料—など(救急医療に関する評価を含む)について、▽在宅復帰・病床機能連携率(現在の在宅復帰率を見直し)▽重症度、医療・看護必要度(厳格化やDPCデータの活用など)▽医療区分(一部厳格化)▽リハビリテーション実績指数(回復期リハ病棟全般の評価に活用)—などの各指標や、看護配置状況について調査・検証することを求めています。
歴史的大改定となる「入院料の評価体系」見直しであり、例えば「経過措置明け直後の状況」「経過措置明けから一定期間経過後」など、何段階かに分けて状況を調べることが期待されます。
さらに、「特定機能病院」など、その他の病棟の評価体系も含めて「入院医療機能をより適切に評価する指標や、その測定方法」「医療機能の分化・強化、連携の推進に資する評価」の在り方を引き続き検討することも求めています。
急性期一般入院料(7対1・10対1の再編・統合)には特定機能病院は含まれておらず、2018年度改定後には、いわゆる高度急性期・急性期の病棟について「一般病院」と「特定機能病院」とで評価体系が異なってきます。2020年度改定に向けて、どのような検討が行われるのか注目が集まります。
またDPCについては、2018年度改定で(暫定)調整係数の機能評価係数IIへの置き換えが完了し、各DPC病院の係数に占める機能評価係数IIの割合がさらに高まります(現在の75%置き換えから、100%置き換えになり単純計算で1.3倍となる)。このため、機能をより高めるDPC病院では係数の向上(収益増に直結し、経営がより安定します)が期待されますが、機能強化をおろそかにしているDPC病院では経営が不安定になる可能性もあります。この点を踏まえ、中医協総会では「DPC制度の適切かつ安定的な運用について、引き続き推進する」よう求めています。
外来の機能分化、かかりつけ機能の評価などの影響を検証せよ
2018年度改定では、従前の改定に続き「地域包括ケアシステムの推進」も最重要項目の1つに据えられ、「かかりつけ機能の推進」(地域包括診療料などの細分化や要件緩和など)、「外来の機能分化」、「在宅医療のきめ細かな評価」などの見直しが行われます。
ただし、中医協総会では診療側・支払側の双方から、改定内容を越える要望も出ており、2020年度改定に向けて次のような点が「宿題」となりました。
▼紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担の対象医療機関の範囲拡大(500床以上の地域医療支援病院→400床以上の地域医療支援病院)▼地域包括診療料等の見直し(かかりつけ患者が在宅移行した場合の継続的診療実績などに応じた細分化や要件の緩和など)▼かかりつけ医機能を有する医療機関の新たな評価(初診料における【機能強化加算】の新設など)—などの影響を調査・検証し、「かかりつけ医機能を有する医療機関」と「専門医療機関」との機能分化・連携強化に資する評価の在り方を引き続き検討する
▼「かかりつけ医機能を有する医療機関を含む在宅医療提供体制の確保」「患者特性に応じた質の高い在宅医療と訪問看護の推進」に資する評価の在り方を引き続き検討する
また2018年度改定では、ICT技術の普及を背景にした【オンライン診療料】等を新設するなど、慢性期疾患の指導管理の在り方に関する見直しも行われます。この点に関しては、次のような点を2020年度改定に向けて検討することになります。
▼生活習慣病管理料を含む生活習慣病の診断・治療に係る評価の見直しの影響を調査・検証し、エビデンスに基づく生活習慣病の重症化予防のより効率的・効果的な推進の在り方について引き続き検討する
▼オンラインシステム等の通信技術を用いた診療の評価新設(オンライン診療料など)の影響を調査・検証するとともに、「対面診療と適切に組み合わせたICTを活用した効果的・効率的な外来・在宅医療の提供」「遠隔でのモニタリング等」に係る評価の在り方を引き続き検討する
医療・介護連携、2020年度改定でも推進に向けた検討を進めよ
ところで2018年度は、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる2025年に向けて「大きな舵を切れる、事実上最後の同時改定」となります。このため医療・介護連携の推進に向けて、▼医療機関とケアマネジャーとの情報連携強化▼国民の希望に応じた看取りの推進▼リハビリにおける医療・介護連携の強化―などが行われます。これらの効果を見極め、医療(診療報酬)・介護(介護報酬)の両面から再び見直せるのは2024年度になりますが、その前の診療報酬・介護報酬改定でも一定の見直しが可能です。中医協総会は2020年度改定で、次の点を検証・検討するよう要望しています。
▼医療と介護が適切に連携した患者が望む場所での看取りの実現▼維持期・生活期リハビリの介護保険への移行等を踏まえた、切れ目のないリハビリの推進▼有床診療所をはじめとする地域包括ケアを担う医療機関・訪問看護ステーションと、ケアマネジャーや介護施設などの関係者との連携―に資する評価の在り方を引き続き検討する
医師の負担軽減、働き方改革に資する評価体系を検討せよ
2018年度改定では、安倍内閣の進める「働き方改革」にもつながる見直し項目が含まれています。例えば、医師事務作業補助体制加算や総合入院体制加算などにおける「負担軽減・処遇改善」計画の策定や、「常勤換算」の拡大、ICT技術の利活用(対面でのカンファランスをテレビ電話会議に置き換えることを認める)などが目立ちます。
ただし、働き方改革に関しては、これから具体的な負担軽減対策を取りまとめることになっており、2020年度移行の診療報酬改定でも重要テーマになることは間違いありません。そこで中医協総会では、「常勤配置や勤務場所等に係る要件の緩和」などの影響を調査・検証し、「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」に資する評価の在り方を引き続き検討するよう指示しています。
【関連記事】
重症患者割合は「3か月間の平均値」が基本、1割以内変動の救済措置は廃止―中医協総会 第388回(1)
医師事務作業補助体制加算、より実効ある「負担軽減」策が要件に―中医協総会 第387回(2)
現行7対1相当の【急性期一般入院料1】、重症患者割合は30%に決着―中医協総会 第387回(1)
早期の在宅復帰を目指し、入院前からの【入退院支援】を診療報酬で評価―中医協総会 第386回(4)
DPC・II群要件の診療密度、薬剤料は「最も安い後発品」に置き換えて計算―中医協総会 第386回(3)
地域包括ケア病棟、自宅等患者を多く受け入れる中小病院の評価を手厚く―中医協総会 第386回(2)
7対1・10対1を再編した急性期一般入院料、重症患者割合をどう設定するか—中医協総会 第386回(1)
2018年度診療報酬改定で、機能分化や地域包括ケア構築を進めよ―中医協・公聴会
ロボット支援手術を、胃がんや肺がん、食道がんなど12術式にも拡大―中医協総会 第384回(1)
2018年度改定、入院料の再編・統合、かかりつけ機能の評価拡充などが柱に―中医協総会 第382回(3)
かかりつけ機能持つ診療所など、初診料の評価アップへ―中医協総会 第382回(2)
7対1・10対1を再編し7つの急性期入院料を新設、重症患者割合が争点―中医協総会 第382回(1)
【2018年度診療報酬改定総点検3】複数医療機関による訪問診療をどこまで認めるべきか
【2018年度診療報酬改定総点検2】ICTの利活用を推進、オンライン診察等の要件はどうなる
【2018年度診療報酬改定総点検1】入院料を再編・統合、診療実績による段階的評価を導入
2018年度改定、年明けからの個別協議に向け各側がスタンスを表明―中医協総会
麻酔科医の術前術後管理の重要性を勘案し、麻酔管理料の評価充実へ―中医協総会 第379回
「専従」要件の弾力運用、非常勤リハビリスタッフの「常勤換算」を認める―中医協総会 第378回
かかりつけ薬剤師の推進目指すが、「かかりつけ」を名乗ることへの批判も―中医協総会 第377回(5)
介護施設を訪問して入所者を看取った場合の医療機関の評価を拡充―中医協総会 第377回(4)
腹膜透析や腎移植、デジタル画像での病理診断などを診療報酬で推進―中医協総会 第377回(3)
療養病棟入院料も再編、20対1看護、医療区分2・3割合50%がベースに―中医協総会 第377回(2)
「入院前」からの外来で行う退院支援、診療報酬で評価―中医協総会 第377回(1)
薬剤9.1%、材料7.0%の価格乖離、診療報酬本体プラス改定も―中医協総会 第376回(3)
退院支援加算2でも、地域連携診療計画加算の算定を可能に―中医協総会 第376回(2)
7対1から療養までの入院料を再編・統合、2018年度は歴史的大改定―中医協総会 第376回(1)
抗菌剤の適正使用推進、地域包括診療料などの算定促進を目指す—第375回 中医協総会(2)
退院支援加算1、「ICT活用した面会」などを弾力的に認める—第375回 中医協総会(1)
安定冠動脈疾患へのPCI、FFR測定などで「機能的虚血」確認を算定要件に—中医協総会374回(1)
地域包括ケア病棟の評価を2分、救命救急1・3でも看護必要度を測定—中医協総会(2)
7対1・10対1基本料を再編・統合し、新たな入院基本料を創設へ―中医協総会(1)
内科などの有床診療所、より柔軟に介護サービス提供可能に―中医協総会(2)
療養病棟入院基本料、2018年度改定で「療養1」に一本化—中医協総会(1)
訪問看護ステーション、さらなる機能強化に向けた報酬見直しを—中医協総会(2)
病院に併設する訪問看護ステーション、手厚く評価をすべきか—中医協総会(1)
診療報酬でも、「同一・隣接建物に住む患者」への訪問で減算などを検討—中医協総会(1)
紹介状なしに外来受診した場合の特別負担、500床未満の病院にも拡大へ—中医協総会(3)
非常勤医師を組み合わせて「常勤」とみなす仕組みを拡大へ—中医協総会(2)
2016年度改定後に一般病院の損益比率は▲4.2%、過去3番目に悪い—中医協総会(1)
保湿剤のヒルドイド、一部に「極めて大量に処方される」ケースも―中医協総会(3)
生活習慣病管理料、エビデンスに基づく診療支援の促進を目指した見直し―中医協総会(2)
ICT機器用いた遠隔診察、対象疾患や要件を絞って慎重に導入を―中医協総会(1)
臓器移植後の長期入院、患者からの「入院料の15%」実費徴収禁止の対象に―中医協総会
要介護者への維持期リハ、介護保険への完全移行「1年延期」へ―中医協総会(2)
回復期リハ病棟のアウトカム評価、次期改定で厳格化すべきか—中医協総会(1)
統合失調症治療薬クロザピン使用促進に向け、精神療養の包括範囲を見直し—中医協総会(2)
向精神薬の処方制限を2018年度改定で強化、薬剤種類数に加え日数も制限へ—中医協総会(1)
医療安全管理部門への「専従医師」配置を診療報酬で評価すべきか―中医協総会(2)
医療体制の体制強化で守れる命がある、妊婦への外来医療など評価充実へ―中医協総会(1)
抗菌薬適正使用に向けた取り組みや医療用麻薬の投与日数をどう考えるか—中医協総会(2)
小児入院医療管理料、がん拠点病院加算と緩和ケア診療加算を出来高評価に—中医協総会
レセプトへの郵便番号記載、症状詳記添付の廃止、Kコードの大幅見直しなど検討—中医協総会
認知症治療病棟でのBPSD対策や入退院支援の在り方などを検討—中医協総会
2018年度から段階的に診療報酬請求事務の効率化や、診療データ活用などを進める—中医協総会
地域包括ケア病棟、「病院の規模」や「7対1の有無」などと関連させた議論に—中医協総会(1)
医療療養2、介護医療院などへの移行に必要な「経過措置」を検討—中医協総会
オンラインでのサービス担当者会議などを可能にし、医療・介護連携の推進を—中医協・介護給付費分科会の意見交換
要介護・維持期リハビリ、介護保険への移行を促すため、診療報酬での評価やめるべきか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
複数医療機関による訪問診療を認めるべきか、患者の状態に応じた在宅医療の報酬をどう考えるか—中医協(1)
かかりつけ薬剤師指導料、対象患者は高齢者や多剤処方患者に絞るべきか—中医協総会(2)
生活習慣病の重症化予防、かかりつけ医と専門医療機関・保険者と医療機関の連携を評価―中医協総会(1)
訪問看護、2018年度同時改定でも事業規模拡大などが論点に―中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
医療機関での看取り前の、関係者間の情報共有などを報酬で評価できないか―中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
7対1・10対1入院基本料、看護配置だけでなくパフォーマンスも評価する報酬体系に―中医協総会(1)
主治医機能に加え、日常生活から在宅までを診る「かかりつけ医機能」を評価へ―中医協総会(1)
2018年度診療報酬改定に向け、臨床現場でのICTやAIの活用をどう考えるか―中医協総会(1)
2018年度改定に向け入院医療の議論も始まる、機能分化に資する入院医療の評価を検討―中医協総会(1)
2018年度改定に向けた議論早くも始まる、第1弾は在宅医療の総論―中医協総会