ロボット支援手術を、胃がんや肺がん、食道がんなど12術式にも拡大―中医協総会 第384回(1)
2018.1.17.(水)
ロボット支援下内視鏡手術は、現在、腎がん・前立腺がんにおいて保険収載されているが、2018年度の次期診療報酬改定において、▼胃がん▼肺がん▼食道がん▼直腸がん▼子宮がん—など12の術式にも拡大する。また陽子線治療・重粒子線治療については、▼骨軟部腫瘍▼前立腺がん▼頭頸部がん—を対象とする技術について保険収載する—。
1月17日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった事項が了承されました。ロボット支援下内視鏡手術の点数は、既存の術式と同程度に設定される見込みなため、「da vinci」システムなどの導入が広がるかどうかは未知数です。
目次
学会からの要望や先進医療について、有効性・安全性の面で保険収載の是非を検討
2年に一度行われる診療報酬改定では、新たな医療技術のうち有用性・安全性が確認されたものについて保険収載が行われます。日々進歩する医療技術の成果・果実を一般国民に還元する狙いがあります。
中医協の下部組織である「診療報酬調査専門組織・医療技術評価分科会」では、学会などから提案された794件の医療技術と、25件の先進医療について有効性・安全性を審査。このうち307件(新規技術107件、既存技術200件)について、2018年度の次期診療報酬改定で「保険収載することが妥当」と判断しています。これまでは「医学会が保険収載を要望している技術」は医療技術評価分科会で、先進医療については先進医療会議で有効性・安全性を審査していましたが、より横断的・総合的な技術評価を行うため、医学会からの要望、先進医療のいずれについても医療技術評価分科会で審査することとなりました(関連記事はこちら)。
保険収載される技術の中から、目立つものを拾ってみましょう。
ロボット支援手術、既存技術と有効性が同じなら、点数も同程度に設定
まずda vinciシステムなどを活用したロボット支援下内視鏡手術の、大幅な術式拡大が注目されます。
現在、ロボット支援下内視鏡手術は、腎がん(K773-5【腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)】:7万730点)、前立腺がん(K843-4【腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)】:9万5280点)について保険収載されていますが、2018年度からは次の12術式にも拡大されることになりました。
(1)胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術
(2)胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術
(3)胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術(肺葉切除、または1肺葉を超えるもの)
(4)胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術
(5)胸腔鏡下弁形成術
(6)腹腔鏡下胃切除術
(7)腹腔鏡下噴門側胃切除術
(8)腹腔鏡下胃全摘術
(9)腹腔鏡下直腸切除・切断術
(10)腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術
(11)腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)
(12)腹腔鏡下膣式子宮全摘術
ただし、新たに保険収載されるロボット支援下内視鏡手術は、既存の内視鏡下手術や開腹手術に比べて「優越性」に関するエビデンスは明確になっていません。そこで医療技術評価分科会では、「保険収載後も個別事例を記録・分析したり、関係学会のレジストリに参加するなどして、優越性を検証していく必要がある」との注文を付けており、算定要件や施設基準などに盛り込まれる可能性があります。
ところで、100の外科系学会で構成される外科系学会社会保険委員会連合(外保連)では、ロボット支援下内視鏡手術について、「既存技術と同程度の有効性・安全性がある」「操作性が高く、立体的な視野が確保されており、術者の負担軽減や技術習得の速さなどの利点がある」点を強調。上記の12術式のほかに、▼中咽頭▼喉頭・下咽頭▼胸腺▼縦隔—への保険適用拡大も求めていました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。2020年度以降に、さらに保険適用が拡大される可能性もありそうです。
なお、医療技術評価分科会では「既存技術に比べて優越性を示すまでには至っていない手術については、既存技術と同程度の点数とすべき」との見解も示しており、既存の内視鏡手術などと同点数となる技術も少なくないでしょう。このため、「da vinci」システムなどの導入がどれほど進むかは未知数です。
ただし、症例蓄積・分析などによって「優越性」が立証されれば、今後、点数が引き上げられる可能性もあります。
陽子線・重粒子線治療、頭頸部がんなどへも保険適用拡大
先進医療は、有効性・安全性が一定程度確立している技術について、保険診療と保険外診療との併用を認める仕組みです(先進医療に該当する部分の費用は自己負担としたまま、入院などの費用について公的医療保険を使用できる)。すべての先進医療は、「症例数を集めることで有効性・安全性のエビデンスを蓄積し、保険収載を目指す」技術で、2018年度の次期改定では、▼一部の陽子線治療▼一部の重粒子線治療▼EBウイルス感染症迅速診断(リアルタイムPCR法)▼前眼部三次元画像解析▼急性リンパ性白血病細胞の免疫遺伝子再構成を利用した定量的PCR法による骨髄微小残存病変(MRD)量の測定▼金属代替材料としてグラスファイバーで補強された高強度コンポジットレジンを用いた3ユニットブリッジ治療▼内視鏡下甲状腺悪性腫瘍手術▼腹腔鏡下広汎子宮全摘術▼ロボットを用いた腹腔鏡下胃切除術—の9技術についてエビデンスが確認され、保険収載が決まりました。
このうち陽子線治療、重粒子線治療については、2016年度の前回改定で▼陽子線治療(小児腫瘍に対するもののみ)▼重粒子線治療(切除非適応の骨軟部腫瘍のみ)—が保険収載され、さらに今般、▼切除非適応の骨軟部腫瘍に対する陽子線治療▼頭頸部悪性腫瘍(口腔・咽喉頭の扁平上皮がんを除く)に対する陽子線治療・重粒子線治療▼前立腺がんに対する陽子線治療・重粒子線治療—について、既存技術に比べた優越性(前2者のみ)・同等性が確認され、保険収載が決定しています。
従前、陽子線治療・重粒子線治療は、施設ごとにまちまちの計画で実施されており、エビデンス構築が遅々として進みませんでした。そこで2016年度の前回改定で、先進医療として継続するために「学会の示した統一方針に則って実施する」「全症例について、学会のデータベースに登録する」ことなどが義務付けられ、今般の「エビデンス構築→保険収載」につながったと言えます。
このほか、新たに保険収載される医療技術を眺めると、▼同種死体小腸移植術(新規)▼自動縫合器・自動吻合機加算の適応拡大(既存)▼帝王切開術の複雑加算への多胎の追加(既存)▼鼓室形成術(耳小骨温存術、耳小骨再建術)(新規)▼咽頭形成術(チタンブリッジを用いた)(新規)—などが目立ちます。
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