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2018年度診療報酬改定に向け、外保連試案を大幅に見直し『第9版』へ

2016.12.15.(木)

 2018年度の診療報酬改定で、手術や処置、麻酔、検査の点数がさらに適切に設定されるよう、現在、1000施設弱における手術時間の分析を行っている。これを素に外保連試案を大幅に見直し、『第9版』(現在は第8.3版)を近くリリースする―。

 外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の岩中督会長(埼玉県立小児医療センター病院長)は、13日に開催した記者懇談会でこのような発表を行いました。

外保連の岩中督・会長(埼玉県立小児医療センター病院長)

外保連の岩中督・会長(埼玉県立小児医療センター病院長)

外保連試案の改訂に向け、1000弱の施設における手術時間を分析

 外保連は、100の外科系学会で構成される組織で、主に外科系診療の適正かつ合理的な報酬(診療報酬)のあるべき姿について学術的な視点に立って研究し、提言を行っています。とくに、手術などの診療行為について▼難易度▼必要なスタッフ数(医師、看護師など)▼時間▼材料費―など客観的な指標をベースに設定した、言わば「望ましい償還価格」といえる『外保連試案』は、実際の点数設定においても相当程度活用されています(関連記事はこちら)。

 ただし岩中会長や、瀬戸泰之実務委員長(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授)らは、「外保連試案と診療報酬に乖離のある項目も少なくない」点を強調します。例えば、人件費が診療報酬を超過している項目、材料費が診療報酬を超過している項目が少なくありません。このため外保連では2018年度改定に向けて、次のような対応をとる方針です。

外保連の瀬戸泰之・実務委員長(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授)

外保連の瀬戸泰之・実務委員長(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授)

(1)各試案(手術試案、処置試案、検査試案、麻酔試案)のさらなる精緻化

▽手術試案について実態調査中

▽検査・処置・手術を横断する内視鏡試案の策定

▽2016年度改定で評価されなかった麻酔試案のさらなる周知

▽放射線画像診断検査、とくに診断料の評価

(2)診療報酬と試案の突合と整理

▽関連学会との連携

▽行政との意見交換

(3)介護報酬との同時改定における影響予測とその対策

(4)増分費用効果比(ICER)

 

 このうち(1)について岩中会長は、「現在、1000弱の施設における手術時間の分析を行っている。これらの客観的データをもとに、外保連試案を大幅に見直し、近く『第9版』をリリースする。例えば整形外科における関節手術1つをとっても、部位が異なれば難易度が変わってくる。第9版では術式名も大きく変わる見込みである」との考えを明らかにしました。

 さらに(3)の同時改定対策について岩中会長は、「財源も潤沢ではなく、厳しい改定になると予想される。外科医がしっかり働いている部分を適切に評価することを求める」との見解を示しています。

 また(4)は、現在、中央社会保険医療協議会で議論されている費用対効果評価に関連する内容です。この点、瀬戸実務委員長は「『新たな評価軸』の1つにも費用対効果評価を位置づけており、今後、ますます重要に成ると考えられる。ロボット手術などが対象になると思うが、費用と効果の増加の増加を外保連としてもしっかり捉えていく必要がある」とコメントしています。

帝王切開術の点数、2014年度改定前水準への引き上げを

 帝王切開術については、最近の改定で点数が次のように大きく変動しています。

▼緊急帝王切開:2008年度まで1万7800点→10年度1万9340点(プラス1540点)→12年度2万2160点(プラス2820点)→14年度2万140点(マイナス2020点)→16年度2万2200点(プラス2060点)

▼選択帝王切開:2008年度まで1万5000点→10年度1万9340点(プラス4340点)→12年度2万2160点(プラス2820点)→14年度2万140点(マイナス2020点)→16年度2万140点(増減なし)※

※ただし2016年度改定で、複雑な場合(前置胎盤の合併、32週未満の早産、胎児機能不全、常位胎盤早期剥離、開腹歴あり)の加算2000点を創設

 2014年度改定で大きく点数が引き下げられていますが、これは外保連試案において「帝王切開の手術時間が短くなった」ことに由来すると考えられています。しかし、日本産科婦人科学会では「母子の良好な予後のために、努力して手術時間を短くした。これを持って減点されるのは医療政策上の矛盾である」と指摘。外保連でもこの点を重視し、試案の中に「新たな評価軸」を設定し、2016年度改定では帝王切開術について増点が行われました。

 しかし、日本産科婦人科学会社会保険委員会の関裕行委員は、今回の増点を評価した上で、「学会加盟の12病院と12診療所を対象に調査を行ったところ、9病院・9診療所では2014年度改定前の水準にまで回復していない」とし、2018年度改定に向けて「少なくとも2012年度の点数設定に戻す」よう要望していく考えを強調しました。

日本産科婦人科学会社会保険委員会の関博之委員

日本産科婦人科学会社会保険委員会の関博之委員

 

 また。日本麻酔科学会の齋藤繁常務理事と天谷文昌社会保険部会会員からは、【長時間麻酔管理加算】(7500点)について▼適応手術を拡大する(例えば、K169頭蓋内腫瘍摘出術、K403-2気管形成術、K529-1食道悪性腫瘍手術、K675胆嚢悪性腫瘍手術など)▼麻酔管理料IIでも算定可能とする―よう求めています。

 麻酔管理料は、I(常勤の麻酔科標榜医が、麻酔前後の診察を行い、硬膜外麻酔や脊椎麻酔などを行うことを評価する)とII(常勤の麻酔科標榜医の指導の下に、麻酔担当医師が麻酔前後の診察を行い、硬膜外麻酔や脊椎麻酔などを行うことを評価する)に分かれていますが、齋藤常務理事は「8時間を超えるような長時間の手術では、麻酔科標榜医以外を含めた複数の麻酔担当医師が関わる」とし、現実に即した点数設定を要望しました。

日本麻酔科学会の齋藤繁常務理事(写真向かって左)と同学会社会保険部会の天谷文昌部会員(同向かって右)

日本麻酔科学会の齋藤繁常務理事(写真向かって左)と同学会社会保険部会の天谷文昌部会員(同向かって右)

 

 さらに日本耳鼻咽喉科学会の春名眞一手術委員は、最近の改定で「内視鏡を用いた副鼻腔手術」が相当程度適切に評価されるようになった点について、厚労省の対応を評価するとともに、2018年度改定に向けて「耳の手術、とくに『鼓室形成手術』について、難易度などに基づく細分化」の要望に向けた検討を行っていることを明らかにしています。

日本耳鼻咽喉科学会の春名眞一手術委員

日本耳鼻咽喉科学会の春名眞一手術委員

 
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