2018年度改定で長時間麻酔管理加算、ロボット支援の対象術式を大幅に拡大せよ—外保連
2017.12.7.(木)
2018年度の次期診療報酬改定に向けて、▼ロボット支援下内視鏡手術の術式拡大▼【長時間麻酔管理加算】の対象術式の拡大▼手術・処置における休日・時間外・深夜加算の施設基準緩和―などを強く要望する—。
外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は12月5日、記者懇談会を開き、厚生労働省にこうした要望を行う考えを明確にしました(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
また、「外保連試案2018」も公表。大規模な実態調査を踏まえて手術、処置、検査に必要なコストを精緻化したほか、新たに「内視鏡試案」を盛り込んでいます。
手術・処置における「休日・時間外・深夜加算」の要件も見直すべき
外保連は、100の外科系学会で構成される組織で、主に外科系診療の適正かつ合理的な診療報酬のあるべき姿を学術的な視点に立って研究し、提言を行っています。2018年度の次期改定に向けても、新たな術式などの保険収載や報酬水準の見直し(コストを適正に評価した引き上げ)などを、中央社会保険医療協議会の医療技術評価分科会などで提案しています(新規提案179件、改定要望238件)。
12月5日の記者懇談会では、これらの中から大きく次の3点をピックアップし、詳説が行われました。
まず1つ目は、ロボット支援下内視鏡手術の拡大です。「da vinci」システムなどを用いたロボット支援下内視鏡手術は、現在、▼K843-4【腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)】9万5280点▼K773-5【腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術(内視鏡手術用支援機器を用いるもの)】7万730点―の2術式のみが保険収載されています。
この点、外保連はロボット支援下内視鏡手術には「既存技術と同程度の有効性・安全性がある」「操作性が高く、立体的な視野が確保されており、術者の負担軽減や技術習得の速さなどの利点がある」点を強調し、▼中咽頭▼喉頭・下咽頭▼肺▼胸腺▼縦隔▼食道▼胃▼直腸▼子宮▼膀胱―の悪性腫瘍手術などにも拡大すべきと強く求めています。ただし「既存技術に比べた優越性」に関するエビデンスが必ずしも明確でないため、中医協でどう判断されるのか、今後の議論を待つ必要があります。
2つ目は、L009【麻酔管理料(I)】の【長時間麻酔管理加算】について、▼頭蓋内手術・脊椎手術▼気道系・肺手術▼肺移植術、生体部分肝移植術▼食道がん手術▼心臓手術▼悪性腫瘍手術―の113術式へと大幅に対象術式を拡大せよとの要望です。
山田芳嗣麻酔委員長(東京大学病院麻酔科・痛みセンター科長)は、「メジャーな術式が含まれていない。現在は、K017【遊離皮弁術(顕微鏡下血管柄付きのもの)】、K379-2【副咽頭間隙悪性腫瘍摘出術】の2「経側頭下窩によるもの(下顎離断によるものを含む。)」、K558【ロス手術(自己肺動脈弁組織による大動脈基部置換術)】、K645【骨盤内臓全摘術】など一部の術式にしか適用されていない」と述べ、「手術時間の『中央値+1SD』が7時間超である手術すべてに加算を適用すべき」と強く訴えています。
3つ目は、「手術・処置における休日・時間外・深夜加算の施設基準緩和」要望です。2014年度の診療報酬改定で、医療従事者の負担軽減の一環として、「手術・処置における休日・時間外・深夜加算を取得するためには、予定手術日の前日に当直などを行う日が、加算取得診療科の合計で年間12日以内としなければならない」旨の規定が創設されました。予定手術日前は当直を免除せよ、との考えに基づく規定です。
しかし、「この規定が厳しすぎ、負担軽減にならない」との指摘が医療現場から出たことを受け、2016年度改定では、「予定手術日の前日に当直などを行う日が、▼毎日の当直人数が6人以上▼病院全体で届け出ている—場合には年間24日以内としなければならない」旨の見直し(緩和)が行われました。しかし、毎日、当直医6人を確保できる病院はごくわずかで、「緩和になっていない」との声もあります。
瀬戸泰之実務委員長(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授)は、「外保連で調査を行ったが、2016年度改定後に取得できた病院もわずかである。さらなる見直し・緩和が必要」と強く訴えています。具体的には「毎日の当直人数が6人以上」という規定について当直医の人数を緩和することが考えられます。
もっとも、この規定の背景には「時間外、深夜などの手術は一般病院では実施せず、当直を代替する医師を確保できる大病院のみとすべき」という機能分担の狙いもあるようです。岩中督・会長(埼玉県病院事業管理者)はこうした点も踏まえ、どういった緩和・見直しを要望していくのかが重要ポイントになるとの考えを示しています。
また岩中会長は「働き方改革が求められているが、今の診療報酬ではとても夜勤などに対応できない。2018年度の次期改定でインセンティブを付けるとともに、応召義務などに根本的な対応をすべき」とも強調しました。
実態調査に基づいた手術時間の精査など行い、外保連試案を2018年度版に改訂
外保連試案は、▼手術試案▼処置試案▼検査試案▼麻酔試案▼内視鏡試案―の5部構成となっており、それぞれの医療技術について「必要なコスト(人数、時間、医療材料など)」「技術の難易度」から求められる費用(診療報酬点数の要望)はどの程度かを詳細に記載しています。
今般、2018年度版が公表され、そこでは旧版から大きく次の4点の見直しが行われました。
(1)2016年10月に実態調査を行い、手術時間を大幅に見直した(時間延長が267術式、時間短縮が154術式)
(2)軟性内視鏡を用いた検査、処置、手術について内視鏡試案に行こうした
(3)手術などに共通して必要な医療材料(覆布、ガウン、手袋、電気メスなど)を29種類の基本セットとして定めた(保険償還できない)
(4)項目の並び順、コーディングを見直し、全術式を科学的に分類した(従前は整形外科、形成外科、皮膚科領域では部位別の並べ替えが行われていなかった)
外保連試案は、手術点数見直しの際に重要参考資料となるほか、DPCのII群要件にもなっており、今後も精緻化が進められていきます。
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