かかりつけ機能持つ診療所など、初診料の評価アップへ―中医協総会 第382回(2)
2018.1.10.(水)
かかりつけ医機能を持つ医療機関について、初診に係るコストを考慮した評価を行ってはどうか。また、薬価調査の正確性を担保するために、▼単品単価契約率▼一律値引き契約状況—などの報告義務を医療機関や薬局に課し、これを怠った場合に初・再診料、外来診療料、調剤基本料を減額する仕組みを設けてはどうか―。
1月10日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点についての議論も行われました。
かかりつけ機能は地域包括診療料などで評価されるが、算定対象は限定的
2013年8月に取りまとめられ、現在進められている社会保障・税一体改革のベースとなっている「社会保障制度改革国民会議報告書」では、外来医療の機能分化を進める方針が打ち出されています。
「診療所や中小病院が一般外来を受け持ち、大病院は紹介・専門外来に特化すべき」との方針で、これまでの診療報酬改定等でも▼紹介状なしに大病院外来を受診した患者の特別負担(初診5000円以上、再診2500円以上)▼主治医機能を評価する【地域包括診療料】や【地域包括診療加算】などの創設・拡充―など、外来医療の機能分化に向けた見直しが行われてきています。
2018年度の次期改定においても、当然、同じ方向が打ち出されており、▼紹介状なし外来受診患者から特別負担を徴収する病院の拡大▼【地域包括診療料】などの要件緩和▼オンライン診察・医学管理の診療報酬上の評価新設―などが既に議論されています。
1月10日の中医協総会では、これらに加えて、「かかりつけ医機能のさらなる評価」案が厚生労働省保険局医療課の迫井正深課長から提示されました。2018年度の次期診療報酬改定に向けた基本方針や、政府の財政再建に向けた計画(経済・財政再生計画)の改革工程表に盛り込まれた「かかりつけ医機能の推進」をさらに強化していく狙いが見て取れます。
かかりつけ医機能については、昨年(2017年)2月の中医協総会で議論されており、そこでは、次のような機能を診療報酬で評価していくことが重要であるとの共通認識が醸成されています(生活習慣病の指導管理を例に)。
(1)日常的な医学管理と重症化予防:▽疾病教育▽生活指導▽治療方針の決定▽服薬管理▽服薬指導(薬剤師と連携)▽治療効果の評価▽重症化の予防・早期介入―など
(2)必要に応じた専門医療機関などとの連携:▽専門医療機関への紹介、助言▽合併症に応じた療養指導▽急性増悪への対応―など
(3)在宅療養支援・介護との連携:▽在宅医療を行う場合の管理・療養指導▽服薬管理▽服薬指導(薬剤師との連携)▽要介護状態などに応じた療養指導▽介護との連携▽急性増悪への対応▽看取り支援―など
こうした機能を評価する診療報酬項目として、上述した【地域包括診療料】【地域包括診療加算】などがありますが、算定対象は「高血圧症、脂質異常症、糖尿病、認知症のうち2疾患以上を有する患者」(地域包括診療料など)、「認知症と他疾患を合併する患者」(認知症地域包括診療料など)に限られています。また、そもそも「施設基準などが厳しい」と指摘され、2016年度の前回診療報酬改定で緩和したものの、届け出医療機関数は2016年7月時点で6000施設に届いていません(2018年度改定で緩和される見込み)。
また2016年度の前回診療報酬改定では、小児患者に総合的な診療・医学管理を提供する医療機関を評価する【小児かかりつけ診療料】が創設されましたが、こちらも施設基準の厳しさなどにより、届け出医療機関数は2016年7月時点で876施設にとどまっています(同じく2018年度改定で緩和される見込み)。
さらに在宅版のかかりつけ機能を評価する診療報酬項目として【在宅時医学総合管理料】が設定されるなど、「かかりつけ医を評価する診療報酬」はありますが、「限定的な評価」にとどまっているとの指摘もあります。
そこで迫井医療課長は、初診に係るコスト(診療時間が再診に比べて若干長め)に着目し、「初診患者の診療を担う機能については、大病院ではなく、『患者が気軽に相談できる機能』や『専門医療機関へ紹介できる機能』を有する医療機関による、より的確で質の高い診療機能を評価してはどうか」との論点を提示しました。具体的な制度設計は、今後の議論を待つ必要がありますが、例えば、「患者が気軽に相談できる機能」や「専門医療機関へ紹介できる機能」を持つ医療機関(診療所や中小病院)について、【初診料の加算】(かかりつけ医機能加算など)を新設することなどが考えられそうです。
この提案を診療側委員は歓迎。松本純一委員(日本医師会常任理事)は「継続的な診療を行っている再診患者でも、新たな病気を発見した場合には、初診患者と同様にコストがかかる。今後は、この点の評価も検討してほしい」と求めています。
これに対し支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)や平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は、「かかりつけ医機能の推進」という方向性には異論を唱えていないものの、「対象医療機関の要件」を厳格に規定するよう要望。
また幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「同じ診療行為について、医療機関の基準などで報酬が差別化されることに違和感を覚える」と述べ、「慎重な制度設計」(厳格な施設基準設定など)を求めています。
さらに間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は「『患者が気軽に相談できる機能』や『専門医療機関へ紹介できる機能』は、かかりつけ医として当然の機能ではないか。そこを評価して患者に負担増を強いることに違和感を覚える」と指摘しました。
このように、方向性そのものは「概ね了承された」と言えますが、具体的にどう点数をつけ、施設基準などをどう設定するかでは、診療側・支払側で意見の隔たりもあり、今後の詰めの議論に注目が集まります。ちなみに、2016年の初診料算定回数は2億1300万件(6月の1か月分で1770万件あり、これを12倍)程度と推測されます。「全診療所が対象となる」と仮定した場合、新加算が1点であれば21億円余り、2点であれば43億円弱、3点であれば64億円弱、の医療費増が見込まれる計算です。
単品単価取引の状況などの報告を義務化、怠れば初・再診料や外来診療料を減額
現在は2年に一度、医薬品の公的価格の見直し(薬価改定)が行われています(今後は毎年度)。医療機関や薬局が、卸業者から購入している価格(市場実勢価格)と、公定価格(患者や保険者の負担)である薬価との乖離を、合理的な範囲で埋めていくことが薬価改定の重要な目的の1つです。
その際、「価格交渉の途中で、まだ購入価格・販売価格が決まっていない」という医療機関・薬局が多ければ、市場実勢価格を適切に把握できません(薬価改定も適切に行えない)。
このため、2014年度の診療報酬改定において、「価格妥結率の低い医療機関や薬局では、基本診療料(初・再診料、外来診療料、調剤基本料)を減算する」規定(未妥結減算)が導入され、スピーディな価格交渉が推進されています。
しかし価格交渉を急ぐあまり、本来であれば「A医薬品は●円で、B医薬品は◆円で」という「単品単価取引」が阻害され、「X医療機関は、まとめて薬価から●%引きで購入する」などといった、いわゆる「総価山買い取引」が増えてきてしまったとの指摘もあります(関連記事はこちらとこちら)。
そこで今般、厚労省保険局医療課の中山智紀薬剤管理官は、▼単品単価契約率▼一律値引き契約状況—などの報告義務を医療機関や薬局に課し、これを怠った場合に初・再診料、外来診療料、調剤基本料を減額する仕組みを設けてはどうか、との提案を行いました。
上記の未妥結減算とセットの減算規定となる見込みで、「価格妥結率50%未満」または「▼単品単価契約率▼一律値引き契約状況—などの報告義務懈怠」の、いずれか、あるいは双方に該当する場合には、初・再診料、外来診療料、調剤基本料を減額されます(減額されないためには、価格妥結率を50%以上とし、報告義務を果たすことが必要)。
この報告状況を分析し、2020年度改定以降に「▼単品単価契約率が低い▼一律値引き契約が多く行われている—医療機関・薬局における減算」(いわば総価山買い減算)が導入される可能性もあります。
このほか、未妥結減算に関連して、▼留意事項に「原則、全品目を単品単価契約とする」「医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉を慎む」旨を明記する▼妥結率の報告期間について、現在の「10月の1か月間」から「10-11月の2か月間」に緩和する▼調剤報酬における、「未妥結減算」(25%減算)と「かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能を発揮していない場合の減算」(50%減算)とを、後者に統合する形で簡素化する—との見直し案も提示され、概ね了承されています。
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