医薬品納入の「未妥結減算」、妥結率向上も「単品単価取引を阻害」―中医協の薬価・材料専門部会
2015.6.10.(水)
来年度には、診療報酬だけでなく薬価や保険医療材料価格についても見直しが行われます。中央社会保険医療協議会は10日、薬価専門部会と保険医療材料専門部会を開き、今後の検討スケジュールと、薬価調査・材料価格調査の大枠を固めました。続いて開かれた総会でも了承されています。
前回の2014年度改定で200床以上の病院と薬局を対象に導入された診療報酬・調剤報酬の「未妥結減算」について、妥結率が向上したものの、現場の取引を阻害する可能性も指摘されています。
「未妥結減算」は、医薬品の納入価格が「病院や薬局」と販売業者の間で決まっていない(未妥結)と、薬価調査の信頼性に影響が出るため、妥結率が50%未満の場合「初診料や再診料などを引き下げる」というものです。
未妥結減算については、厚労省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」の嶋口充輝座長(慶應義塾大学名誉教授)から「妥結率が向上した」という効果を認めたものの、一方で「(妥結を急ぐあまり)単品単価取引が進展せず、特定の卸、特定の品目、特定の期間のみ妥結する形態が出ている」という談話を発表しています。
これを受け、支払側の白川委員(健康保険組合連合会副会長)や診療側の長瀬輝詮委員(日本精神科病院協会副会長)は「業界ヒアリングの中で、医薬品の流通実態を説明してもらう必要がある」と要望しました。
なお、財務省などが提案している「毎年の薬価・材料価格改定」に対しては、業界から強い反論意見が出ていることも報告されています。
薬価制度・材料価格制度については、2年に一度、(1)算定ルールの見直し(2)価格の見直し―という2つの大きな改定が行われます。
(1)の算定ルールに関しては、薬価・材料価格のそれぞれについて、次のような課題が整理され、今後、関係者からのヒアリングなども行い、各専門部会で議論を深めていくことになっています。なお、医薬品・材料のいずれにおいても、「費用対効果評価」の試行導入も検討課題に含まれています。
【薬価算定ルールの課題】
▽新薬創出・適用外薬解消等促進加算の検証、在り方の検討(改定前薬価の80%を維持するための同加算は、現在、試行導入となっており、加算によって製薬メーカーの新薬創出にどれだけの効果があるかを検証する)
▽長期収載品や後発医薬品の在り方(後発医薬品の使用促進に向け、長期収載品の価格設定ルールに、いわゆるZ2と呼ばれる『特例引下げ』が導入されたが、その効果を検証する)
▽医薬品におけるイノベーションの評価
▽個別の算定事例に基づく薬価算定基準の課題
【材料価格算定ルールの課題】
▽内外価格差の是正(参照している外国価格が適正かどうか、原価計算方式の特例をどう認めていくかなど)
▽イノベーションの評価(迅速な保険導入に対する評価や、機能区分の特例等について実績を把握し、今後の在り方を検討する)
(2)の価格見直しは、主に公定価格(薬価、材料価格)と実際の流通価格の差を是正するために行われるものです。医薬品については、11年度時点で公定価格と流通価格の差(かい離率)は8.4%でした。厚労省は実際の流通価格を把握するために、改定の前年に薬価調査と材料価格調査を行います。
今年度も、医薬品については「2015年度中の1か月」(前回は9月)、保険医療材料については「15年度中の5か月(ダイアライザーやフィルムは1か月)」(前回は5-9月)分の流通価格を、医薬品や材料の販売業者(全数)と、病院や診療所、薬局など(抽出)を対象に調べることが決まりました。
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