早期の在宅復帰を目指し、入院前からの【入退院支援】を診療報酬で評価―中医協総会 第386回(4)
2018.1.25.(木)
お伝えしているとおり、1月24日の中央社会保険医療協議会・総会で2018年度診療報酬改定の「個別改定項目」(いわゆる短冊)が示されました。個別改定項目は多岐にわたり、この日は「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」が議論の対象となっています。
メディ・ウォッチでは、「急性期入院医療の再編・統合」「後方病床の再編・統合」「DPC制度改革」について、既にご紹介しております(関連記事はこちらとこちらとこちら)。今回は、その他の「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」に関する項目を見てみましょう。
目次
退院支援を【入退院支援】に名称変更、小児では「加算」の新設も
入院医療全般について「在院日数の短縮」「在宅復帰の推進」が重視されています。早期退院は「医療費の適正化」という効果に加え、▼院内感染やADL低下のリスク軽減▼早期の日常生活(職場)復帰による患者QOLの向上―などのメリットもあり、急性期から慢性期に至る、すべての入院医療において推進することが望まれます。
この一環として、2018年度改定では「入院前からの退院支援」の評価が行われ、現在の【退院支援加算】を【入退院支援加算】に名称変更します。
その上で、【入退院支援加算】を算定するであろう予定入院患者に対し、外来で▼身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握▼褥瘡に関する危険因子の評価▼栄養状態の評価▼持参薬の確認▼入院中に行われる治療・検査の説明▼入院生活の説明▼退院困難な要因の有無の評価—を含む支援を行い、入院中の看護や栄養管理などに係る療養支援計画を立て、患者・関係者と共有することを【入院時支援加算】として新たに評価します(関連記事はこちら)。
この加算を届け出るためには、▼入退院支援加算の届け出▼入退院支援加算1-3の施設基準で求められる人員(入退院支援部門への専従看護師等配置など)▼入退院支援部門への「入院前支援を行う担当者」の病床規模に応じた必要数の配置▼地域連携体制―などが求められます。
グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)では、かねてからこの点に着目し「入院サポートセンター」の創設を提唱しています(関連記事はこちら)。
このほか【入退院支援加算】に関して、▼入退院支援加算1と2に【小児加算】(15歳未満の患者が対象)を新設する▼入退院支援加算2の届け出医療機関でも【地域連携診療計画加算】(いわゆる地域連携パスを用いた連携の評価)を算定可能とする—などの見直しが行われます。
また在宅復帰を促進するために、7対1病棟や地域包括ケア病棟の施設基準には「在宅復帰率」が盛り込まれています。ただし「7対1病棟のほとんどが在宅復帰率8割以上をクリアしており形骸化している」との指摘があり、定義や基準値、さらに名称が下図のように見直されます。
多機関での情報連携を推進するため、退院時共同指導などを見直し
早期の在宅復帰促進や適切な医療提供のためには「情報連携」が極めて重要です。2018年度改定でも「情報連携」をさらに進めるため、例えば次のような見直しが行われます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▼退院時共同指導において、現行の「医師・看護職員」以外にも▽薬剤師▽管理栄養士▽理学療法士等▽社会福祉士—が、退院後の在宅療養で必要な説明や指導を行うことなどを評価する
▼退院時共同指導料2のうち「入院医療機関と在宅療養を担う3者以上の関係機関とが共同指導を行った場合の評価」について、入院医療機関側の看護職員が共同指導を行った場合も評価対象とする(現在、入院医療機関側の医師が共同指導を行う場合のみ評価)
▼退院時共同指導料2のうち「入退院支援加算を算定する患者に係る退院後の診療等の療養に必要な情報の提供に対する評価」について、自宅以外の場所に退院する患者も算定可能とする
▼入退院時の連携を評価する▽在宅患者緊急入院診療加算▽精神科救急搬送患者地域連携受入加算▽入退院支援加算1▽精神疾患診療体制加算▽退院時共同指導料1▽退院時共同指導料2▽在宅患者連携指導料▽在宅患者緊急時等カンファレンス料▽施設入所者共同指導料—について、「特別の関係」(開設者が同一など)の場合でも算定可能とする
▼ケアマネジャーへの退院前2週間以内の診療情報の提供について、介護支援等連携指導料を算定していない患者に限り【診療情報提供料(Ⅰ)】を算定可能とする
▼退院に向けた医療機関等と訪問看護ステーションの退院時共同指導の評価(訪問看護療養費の【退院時共同指導加算】)を充実し、両者が「特別の関係」にある場合でも算定可能とする
▼患者の入院・入所にあたり、主治医が「訪問看護ステーションからの情報」を併せて入院・入所医療機関等に情報提供する場合、主治医については診療情報提供料(Ⅰ)の【療養情報提供加算】、訪問看護ステーションについては訪問看護療養費の【訪問看護情報提供療養費3】として新たに評価する
紹介状なし患者から特別負担を徴収する病院、400床以上の地域支援病院に拡大
外来医療については、大病院と中小病院・診療所の機能分化とともに、地域包括ケアシステムの構築に向けた「かかりつけ機能の強化」の推進を目指します。
まず外来機能分化を進めるために、「紹介状なしに外来受診した場合の特別負担徴収が義務づけられる病院」の対象が、これまでの▼特定機能病院▼許可病床数500床以上の地域医療支援病院—から、▼特定機能病院▼許可病床数400床以上の地域医療支援病院—に拡大されます(つまり許可病床数400-499床の地域医療支援病院が新たに対象となる)。ただし、公立病院などでは特別負担徴収のために条例改正が必要なケースもあるため、これらの病院では「6か月間の経過措置」が設けられます(これらの病院では徴収開始が2018年10月からとなる)。なお特別負担の金額は、これまでどおり▼初診5000円以上▼再診2500円以上―です(関連記事はこちら)。
また、「紹介率・逆紹介率が低く、紹介状なし患者について初診料・外来診療料を減額する病院」の対象を、これまでの▼特定機能病院▼許可病床数500床以上の地域医療支援病院(これら2者は紹介率50%未満・逆紹介率50%未満)▼許可病床数500床以上の病院(前2者と一般病床200床未満は除く、この場合逆紹介率40%未満・逆紹介率30%未満)—から、▼特定機能病院▼許可病床数400床以上の地域医療支援病院▼許可病床数400床以上の病院(前2者と一般病床200床未満は除く)—に拡大されます。
ほか、「病床数500床以上」が要件となっている規定(地域包括ケア病棟の新設を1病棟に限定する、など)についても「病床数400床以上」に拡大されます。つまり400-499床の病院では、2018年4月以降「地域包括ケア病棟の新設」は1病棟に限定されることになるので、留意が必要です。
なお、機能分化に関連して、入院患者が「高度な放射線治療機器等を有する他医療機関」を受診する場合には、入院料の減額規定が緩和(通常は10%減額)されます。新たながん対策推進基本計画において「高度な放射線治療については、集約化を進める」方針が明確化されたことなどを受けたものです。
地域包括診療料など「かかりつけ患者への訪問診療」実績を踏まえた段階的評価に
かかりつけ機能の推進については、次のような見直しが行われます(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
▼【地域包括診療料】や【地域包括診療加算】などの「医師配置要件」(現在、常勤2名)について「常勤1名と非常勤医師の組み合わせ」でもよいと緩和する
▼【地域包括診療料】や【地域包括診療加算】などについて、「自院の外来を経て訪問診療に移行した患者への訪問診療実績」「直近1か月の初診・再診・往診・訪問診療患者に対する往診・訪問診療患者の割合が一定未満」である医療機関の評価を充実する(診療料1・2、加算1・2と細分化する)
▼【地域包括診療加算】(再診料の加算)において、加算1では上記の「訪問診療実績」に加えて24時間の往診体制を確保することとし、訪問診療実績がなく24時間の連絡体制を敷く場合を【加算2】とする
▼【地域包括診療料】や【地域包括診療加算】などの要件である「患者の受診医療機関」「処方医薬品」の把握について、医師の指示を受けた看護師等でも実施可能であることを明確化する
▼地域包括診療料などの算定患者が入院・入所した場合、当該クリニック等が「入院・入所先医療機関等と医薬品の適正使用に係る連携を行う」ことを、【薬剤適正使用連携加算】(地域包括診療料などの加算)として新たに評価する
▼【小児かかりつけ診療料】について、「地域の在宅当番医制等に協力する医師を配置する医療機関」では、夜間・休日の相談等に係る要件について「地域の在宅当番医等を案内する」ことでもよしとする
▼【小児科療養指導料】について、「15歳未満の患者」の対象疾患に「医療的ケア児に該当する状態の患者」を追加するほか、小児科医が作成した治療計画に基づいて「小児科医以外の医療従事者」が指導を行う場合も算定可能とする
▼【生活習慣病管理料】について、療養計画書の記載項目の追加(血圧目標や保険者からの依頼に基づく情報提供など)、学会等の診療ガイドライン等の診療支援情報等に関する要件の追加などを行う
▼かかりつけの医療機関(▽(認知症)地域包括診療加算▽(認知症)地域包括診療料▽小児かかりつけ診療料▽在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所・同病院に限る)▽施設入居時等医学総合管理料(同)—を届け出たクリニックと200床未満の病院)では、初診時に、新たに【機能強化加算】を算定可能とする
複数医療機関・チームによる訪問診療を解禁、一方で往診などの適正化も
また在宅医療については、患者が希望に応じて「入院医療と在宅医療を選択できる」体制を構築することが目指されており、これを診療報酬でも後押しするために、たとえば次のような見直しが行われます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
▼在宅時医学総合管理料などの算定要件を満たす医療機関の依頼を受けて、他の医療機関が訪問診療を行った場合の【在宅患者訪問診療料】を新設する(これまでは算定不可)
▼在宅療養支援診療所以外のクリニックが、かかりつけ患者に対し、他医療機関と連携して24時間の往診体制・連絡体制を構築することを、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の新たな加算【継続診療加算】として評価する
▼医療的ケアが必要な小児が学校へ通学する際に、訪問看護ステーションから訪問看護に係る情報を学校へ提供することを、新たに訪問看護療養費の【訪問看護情報提供療養費2】として評価する
▼訪問看護ステーションが、喀痰吸引等を行う介護職員などの支援を行うことを、新たに【看護・介護職員連携強化加算】として評価する(診療報酬および訪問看護療養費)
▼医療機関に勤務する看護職員の研修や人材交流の受入れ」「重症の在宅療養患者への訪問看護の提供」など、地域の訪問看護提供体制確保に重要な役割を担う訪問看護ステーションを、新たに【機能強化型訪問看護管理療養費3】として評価する
▼訪問診療・訪問看護におけるターミナルケアにおいて、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等を踏まえた対応を要件として追加し、評価の充実などを行う
▼機能強化型在宅療養支援診療所・病院、機能強化型訪問看護ステーションにおける「看取り等の実績」要件について、一定期間の訪問診療などを提供した後、あらかじめ患者・家族から聴取した意向に基づいて、一定期間内の入院中に死亡した場合を含める(予め「最期の最期は、家族に迷惑をかけないよう入院する」と患者が希望している場合なども、看取りと見做す)
▼特別養護老人ホームが【看取り介護加算】(介護報酬)を算定する場合でも、訪問してターミナルケアや看取り医療などを提供する外部医療機関に在宅患者訪問診療料の【在宅ターミナルケア加算】の算定を認める(訪問看護ステーションでも同様)
一方、在宅医療については「不適切な提供がなされているケースもある」と指摘されます(例えば、医療機関が介護施設などと契約し、入所者に不必要な訪問診療を提供するなど)。このため、次のような適正化や要件の厳格化が行われることにも留意しなければいけません。
▼併設介護施設等への訪問診療について、在宅患者訪問診療料を適正化する
▼月2回以上の訪問診療を行う場合の在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料について対象を重症患者(▽要介護が一定以上▽認知症高齢者の日常生活自立度が一定以上▽週一定以上の訪問看護を受ける▽訪問診療・看護時に処置(簡単なものを除く)を行っている▽特定施設入居者では、医師の指示を受けて、看護師がたんの吸引、胃ろう・腸ろうの管理などの処置を行っている—)に限定する(ただし点数は引き上げ、逆に月1回訪問の場合には点数を引き下げ)
▼往診料は、「患者・家族等が医療機関に電話などで【直接】往診を求め」かつ、「医師が往診の必要性を認めた」場合で、さらに「可及的速やかに患家に赴く」場合でなければ算定できないことを明確化する
▼在宅時医学総合管理料等の要件において、末期のがん患者について「患者のケアマネジャーに対して病状や予後などを情報提供する」旨を追加する
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