Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

2018年度診療報酬改定で、機能分化や地域包括ケア構築を進めよ―中医協・公聴会

2018.1.19.(金)

 2018年度の次期診療報酬改定に向けて、「医療機能の分化・強化、連携の推進」や「地域包括ケアシステムの構築」に力を入れる必要がある―。

 1月19日に開催された中央社会保険医療協議会の公聴会で、支払側・診療側を問わず、現場関係者からこういった要望が出されました。

1月19日に開催された、「第385回 中央社会保険医療協議会 総会【公聴会】」

1月19日に開催された、「第385回 中央社会保険医療協議会 総会【公聴会】」

7対1の重症患者割合、病院代表から「現行の基準値を維持せよ」との要望

公聴会は、中医協委員と厚生労働省保険局医療課の担当者が地方に赴き、診療報酬改定に関する一般市民の意見を聞き、改定内容に反映させることが狙いです。2018年度改定に向けた公聴会は、1月19日に千葉県千葉市で開催されました。

意見発表を行ったのは10名で、▼健康保険組合▼労働組合▼協会けんぽ▼国民健康保険―の関係者に患者代表を加えた支払側5名、▼クリニック▼病院▼歯科医院▼薬局▼訪問看護ステーション―の診療側5名、という構成です。

意見は多岐にわたりますが、診療側・支払側双方に共通する内容として、(1)我が国の公的医療保険制度の維持が重要であり、何らかの手を打たなければならない(2)機能分化の推進(3)地域包括ケアシステムの構築(4)治療と仕事の両立支援(5)医療安全の確保―の5点があげられます。

このうち(2)の機能分化に関しては、中医協において「急性期から長期療養に至るまでの入院基本料・入院料の再編・統合」案が議論されています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。とくに急性期については、7対1と10対1を統合し、看護配置などに応じた【基本部分】と重症患者割合などに応じた【実績評価部分】(段階的評価部分)を組み合わせ、7段階の「急性期一般入院料」(仮称)を創設してはどうかとの考えが厚労省から提示されました。

この点について病院代表という立場で出席した川越一男氏(医療法人芙蓉会五井病院理事長)は、「医療経済実態調査結果では7対1病院の経営が極めて厳しい。統合・再編後に最も高い評価となる『急性期一般入院料1』の重症患者割合については、現在の7対1の基準値『25%以上』から引き上げるべきではない」と求めています。

川越氏は、▼地域包括ケア病棟は、当初「中小病院での設置」を想定していたはずであり、この考えに立ち返った「中小病院の地域包括ケア病棟」の評価充実を行うべき▼医療安全に係るコストを踏まえた医療安全対策加算の引き上げを行うべき—とも要望しました。

クリニック代表からは「再診料の2点増点」の要望も

また(3)の地域包括ケアシステム構築に向けては、かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の推進が重要になりますが、クリニック代表の立場で出席した佐藤孝彦氏(医療法人社団孚誠会浦安駅前クリニック院長、千葉県医師会理事)は「2010年度の診療報酬改定で再診料が2点引き下げられたままである(消費増税対応で引き上げが行われているが)。地域医療・地域包括ケアシステムの要であるクリニックの再診料について、基に戻して(2点引き上げて)ほしい」と訴えました。

さらに佐藤氏は、▼医療機関の大きな負担となっている医療廃棄物の処理費用を診療報酬でみてほしい▼残薬につながる長期処方をさらに是正してほしい—とも要望しています。

患者代表から「看護師やMSWも交えた、治療と仕事の両立支援」を求める声

(4)の治療と仕事の両立については、患者代表として出席した香川由美氏(NPO法人患者スピーカーバンク理事長)から、「2018年度改定に向けて主治医と産業医との連携が評価される見込みだが、これにとどまらず、看護師や医療ソーシャルワーカー(MSW)も参画した多職種による患者支援(医療だけでなく、生活面を含めた支援)を診療報酬で評価してはどうか」と提案しました。香川氏はI型糖尿病に罹患していますが、認定看護師が自身の悩みを聞き「●●の問題は◆◆職が担当する、○○の問題は◇◇職が担当する」との振り分けを行ってくれたことが非常に助かったと振り返り、こうした支援が広まることに期待を寄せました。

オンライン診察や医学管理、支払側は積極推進を求めるが、診療側は慎重姿勢

ところで、次期改定では、「ICTの利活用推進」を診療報酬で後押しする方針も明確になっています。その中で注目されているのが、テレビ会議システムなどを活用した「オンライン診療・医学管理」の評価です。例えば、外来医療を受けている慢性疾患患者について、状態が安定してきたことから「毎月の外来受診」を「2か月ごとの外来受診と、2か月ごとのオンライン診察」に置き換え、通院負担を軽減して、治療継続からの脱落を防ぐ、といった考えが浮上しています。

この点について、支払側代表として参画した上野洋一氏(千葉銀行健康保険組合常務理事)は、「例えば生活習慣病患者について、医師・保険者・行政が連携し、治療から脱落しないような環境を整えるべきである。ICTツール(上記オンライン診察など)も活用して、より効率的な医療提供を行う必要がある」と指摘。

一方、クリニック代表の佐藤氏は、「ICTの利便性ばかりが強調されれば、かえって患者に不利益が生じる。診療の原則は『対面』であり、ICTを活用した遠隔診療については安全性・有効性を慎重に見極める必要がある」と述べ、やや慎重な構えを見せました。

 
2018年度の次期改定に向けた国民の意見聴取は「パブリックコメント募集」という形でも行われています(1月19日締め切り)。中医協の田辺国昭会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、公聴会とパブリックコメントの双方の意見も踏まえて、これから「詰めの協議」を行っていく考えを述べています。

 
病院ダッシュボードχ 病床機能報告MW_GHC_logo
 

【関連記事】

ロボット支援手術を、胃がんや肺がん、食道がんなど12術式にも拡大―中医協総会 第384回(1)
2018年度改定、入院料の再編・統合、かかりつけ機能の評価拡充などが柱に―中医協総会 第382回(3)
かかりつけ機能持つ診療所など、初診料の評価アップへ―中医協総会 第382回(2)
7対1・10対1を再編し7つの急性期入院料を新設、重症患者割合が争点―中医協総会 第382回(1)
【2018年度診療報酬改定総点検3】複数医療機関による訪問診療をどこまで認めるべきか
【2018年度診療報酬改定総点検2】ICTの利活用を推進、オンライン診察等の要件はどうなる
【2018年度診療報酬改定総点検1】入院料を再編・統合、診療実績による段階的評価を導入
2018年度改定、年明けからの個別協議に向け各側がスタンスを表明―中医協総会
麻酔科医の術前術後管理の重要性を勘案し、麻酔管理料の評価充実へ―中医協総会 第379回
「専従」要件の弾力運用、非常勤リハビリスタッフの「常勤換算」を認める―中医協総会 第378回
かかりつけ薬剤師の推進目指すが、「かかりつけ」を名乗ることへの批判も―中医協総会 第377回(5)
介護施設を訪問して入所者を看取った場合の医療機関の評価を拡充―中医協総会 第377回(4)
腹膜透析や腎移植、デジタル画像での病理診断などを診療報酬で推進―中医協総会 第377回(3)
療養病棟入院料も再編、20対1看護、医療区分2・3割合50%がベースに―中医協総会 第377回(2)
「入院前」からの外来で行う退院支援、診療報酬で評価―中医協総会 第377回(1)
薬剤9.1%、材料7.0%の価格乖離、診療報酬本体プラス改定も―中医協総会 第376回(3)
退院支援加算2でも、地域連携診療計画加算の算定を可能に―中医協総会 第376回(2)
7対1から療養までの入院料を再編・統合、2018年度は歴史的大改定―中医協総会 第376回(1)
抗菌剤の適正使用推進、地域包括診療料などの算定促進を目指す—第375回 中医協総会(2)
退院支援加算1、「ICT活用した面会」などを弾力的に認める—第375回 中医協総会(1)
安定冠動脈疾患へのPCI、FFR測定などで「機能的虚血」確認を算定要件に—中医協総会374回(1)
地域包括ケア病棟の評価を2分、救命救急1・3でも看護必要度を測定—中医協総会(2)
7対1・10対1基本料を再編・統合し、新たな入院基本料を創設へ―中医協総会(1)
内科などの有床診療所、より柔軟に介護サービス提供可能に―中医協総会(2)
療養病棟入院基本料、2018年度改定で「療養1」に一本化—中医協総会(1)
訪問看護ステーション、さらなる機能強化に向けた報酬見直しを—中医協総会(2)
病院に併設する訪問看護ステーション、手厚く評価をすべきか—中医協総会(1)
診療報酬でも、「同一・隣接建物に住む患者」への訪問で減算などを検討—中医協総会(1)
紹介状なしに外来受診した場合の特別負担、500床未満の病院にも拡大へ—中医協総会(3)
非常勤医師を組み合わせて「常勤」とみなす仕組みを拡大へ—中医協総会(2)
2016年度改定後に一般病院の損益比率は▲4.2%、過去3番目に悪い—中医協総会(1)
保湿剤のヒルドイド、一部に「極めて大量に処方される」ケースも―中医協総会(3)
生活習慣病管理料、エビデンスに基づく診療支援の促進を目指した見直し―中医協総会(2)
ICT機器用いた遠隔診察、対象疾患や要件を絞って慎重に導入を―中医協総会(1)
臓器移植後の長期入院、患者からの「入院料の15%」実費徴収禁止の対象に―中医協総会
要介護者への維持期リハ、介護保険への完全移行「1年延期」へ―中医協総会(2)
回復期リハ病棟のアウトカム評価、次期改定で厳格化すべきか—中医協総会(1)
統合失調症治療薬クロザピン使用促進に向け、精神療養の包括範囲を見直し—中医協総会(2)
向精神薬の処方制限を2018年度改定で強化、薬剤種類数に加え日数も制限へ—中医協総会(1)
医療安全管理部門への「専従医師」配置を診療報酬で評価すべきか―中医協総会(2)
医療体制の体制強化で守れる命がある、妊婦への外来医療など評価充実へ―中医協総会(1)
抗菌薬適正使用に向けた取り組みや医療用麻薬の投与日数をどう考えるか—中医協総会(2)
小児入院医療管理料、がん拠点病院加算と緩和ケア診療加算を出来高評価に—中医協総会
レセプトへの郵便番号記載、症状詳記添付の廃止、Kコードの大幅見直しなど検討—中医協総会
認知症治療病棟でのBPSD対策や入退院支援の在り方などを検討—中医協総会
2018年度から段階的に診療報酬請求事務の効率化や、診療データ活用などを進める—中医協総会
地域包括ケア病棟、「病院の規模」や「7対1の有無」などと関連させた議論に—中医協総会(1)
医療療養2、介護医療院などへの移行に必要な「経過措置」を検討—中医協総会
オンラインでのサービス担当者会議などを可能にし、医療・介護連携の推進を—中医協・介護給付費分科会の意見交換
要介護・維持期リハビリ、介護保険への移行を促すため、診療報酬での評価やめるべきか—中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
複数医療機関による訪問診療を認めるべきか、患者の状態に応じた在宅医療の報酬をどう考えるか—中医協(1)
かかりつけ薬剤師指導料、対象患者は高齢者や多剤処方患者に絞るべきか—中医協総会(2)
生活習慣病の重症化予防、かかりつけ医と専門医療機関・保険者と医療機関の連携を評価―中医協総会(1)
訪問看護、2018年度同時改定でも事業規模拡大などが論点に―中医協・介護給付費分科会の意見交換(2)
医療機関での看取り前の、関係者間の情報共有などを報酬で評価できないか―中医協・介護給付費分科会の意見交換(1)
7対1・10対1入院基本料、看護配置だけでなくパフォーマンスも評価する報酬体系に―中医協総会(1)
主治医機能に加え、日常生活から在宅までを診る「かかりつけ医機能」を評価へ―中医協総会(1)
2018年度診療報酬改定に向け、臨床現場でのICTやAIの活用をどう考えるか―中医協総会(1)
2018年度改定に向け入院医療の議論も始まる、機能分化に資する入院医療の評価を検討―中医協総会(1)
2018年度改定に向けた議論早くも始まる、第1弾は在宅医療の総論―中医協総会