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医師事務作業補助体制加算、より実効ある「負担軽減」策が要件に―中医協総会 第387回(2)

2018.1.29.(月)

 医療従事者のさらなる負担軽減に向けて、2018年度の次期診療報酬改定では、医師事務作業補助体制加算を届け出るためには、「病院勤務医の負担軽減・処遇改善」計画の策定を義務付けることとし、計画の中には「終業から始業までのインターバル確保」や「予定手術前日の当直免除」などの項目を含める―。

1月24日・26日の中央社会保険医療協議会・総会で示された個別改定項目(いわゆる短冊)には、こういった項目が盛り込まれています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

今回は、1月26日に議論された「新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実」「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の強化」の中から、気になるものをピックアップしてみましょう。

1月26日に開催された、「第387回 中央社会保険医療協議会 総会」

1月26日に開催された、「第387回 中央社会保険医療協議会 総会」

総合入院体制加算などの「負担軽減」策は、医師だけでなく全医療従事者が対象に

 「医療従事者の負担軽減」は、毎回の改定で重点項目に据えられるとともに、安倍内閣が進める「働き方改革」にも関連する重要項目です。

まず【医師事務作業補助体制加算】について、現在でも施設基準の中で「医療従事者の負担軽減」に関する取り組みを行うことが求められていますが、この内容が厳しく見直されます。具体的には、次のような取り組みを行うことが必要となります。

▼「勤務医の勤務状況を把握し、その改善の必要性などを提言する」責任者を配置する

▼勤務医の勤務時間(特別の関係にある医療機関での勤務時間も含める)・当直を含めた夜間の勤務状況を把握し(客観的手法を用いることが望ましい)、その上で「特定個人に業務負担が集中しないよう配慮した勤務体系」を策定し、職員に周知徹底する

▼多職種からなる役割分担推進委員会・会議を設置し、「勤務医の負担軽減・処遇改善に資する計画」を作成する(委員会・会議は、計画達成状況の評価時や、その他必要に応じて開催する。安全衛生委員会などを活用しても差し支えない)

▼勤務医の負担軽減・処遇の改善に関する取組事項の公開(院内掲示など)

役割分担推進委員会・会議による「勤務医の負担軽減・処遇改善に資する計画」の作成と、取組事項の公表が「厳格化」の柱と言えます。前者の計画には、「医師と医療関係職種、医療関係職種と事務職員等における役割分担の具体的内容」(▽初診時の予診の実施▽静脈採血などの実施▽入院の説明実施▽検査手順の説明実施、服薬指導など)を定めるほか、▼連続当直を行わない勤務体制の実施▼終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)▼予定手術前日の当直・夜勤への配慮▼当直明けの業務内容に対する配慮▼交替勤務制・複数主治医制の実施▼短時間正規雇用医師の活用—のうちの一定以上を定めることなどが求められます。

医療現場、とくに医師の間で【医師事務作業補助体制加算】は「負担軽減に有用である」と高く評価されています。その施設基準の中で「負担軽減・処遇改善の取り組み強化」を求めることで、成果が上がると期待されます。

 
また、こうした見直しは【総合入院体制加算】などの「負担軽減・処遇改善」体制でも行われ、次の2点が注目されます。

▼負担軽減・処遇改善体制の対象を「勤務医」から「勤務する医療従事者全体」に拡大する

▼役割分担推進委員会・会議で「医療従事者の負担軽減・処遇改善に資する計画」を作成し、その計画の中には▽外来診療時間の短縮、地域連携などの外来縮小の取組み(許可病床数400床以上の病院では必須)▽院内保育所の設置(夜間帯保育や病児保育が望ましい)▽医師事務作業補助者配置による勤務医負担軽減▽勤務医の時間外・休日・深夜対応の負担軽減・処遇改善▽看護補助者配置による看護職員負担軽減—の一定以上を盛り込む

▼勤務医の負担軽減・処遇の改善に関する取組事項の公開(院内掲示など)

医師の常勤を要件とする診療報酬、点数の性質を見極めて「常勤換算」も可能に

 医療従事者の負担軽減に関連して「常勤」要件の緩和が行われます。例えば【新生児治療回復室入院医療管理料】では、施設基準の中で「院内に専任の小児科常勤医師が常時1名以上配置されている」ことが規定されています。夜間に患児が急変した場合などに迅速な対応を可能とするための規定ですが、「非常勤医師が活躍する場が狭められている」「小児科でフルタイムで勤務できる医師は限られており、回復室の設置を困難にしている」との課題もあるようです。そこで厚労省は、「専門性の高さ」(医師確保が難しい)と「夜間における緊急対応の必要性の低さ」(必ずしも常勤である必要性が低い)とを勘案し、次の診療報酬項目において「常勤医師」要件を「複数の非常勤医師による常勤換算を認める」と緩和する考えを示しました(関連記事はこちら)。

【小児科】▼新生児治療回復室入院医療管理料▼小児入院医療管理料—など
【産婦人科】▼ハイリスク分娩管理加算(ただし医師3名のうち常勤換算は2名まで)
【リハビリ科】▼心大血管疾患リハビリ料(初期加算含む)▼脳血管疾患等リハビリ料(同)▼廃用症候群リハビリ料(同)▼運動器リハビリ料(同)▼呼吸器リハビリ料(同)▼難病患者リハビリ料▼がん患者リハビリ料▼認知症患者リハビリ料▼リンパ浮腫複合的治療料▼集団コミュニケーション療法料—など
【精神科】▼認知症ケア加算▼救急患者精神科継続支援料—など
【麻酔科】▼麻酔管理料(Ⅱ)(医師5名のうち常勤換算は4名まで)
【その他】▼糖尿病合併症管理料▼移植後患者指導管理料▼遺伝カウンセリング加算—など

急性期一般入医療や地域包括ケア病棟、夜間の看護体制強化を評価する加算を施設

 また、看護職員の負担軽減に向けて「看護補助者との業務分担・共同」推進に向けて、次のような見直しが行われます。

▼看護補助者の配置に係る加算(急性期看護補助体制加算、看護補助加算)の施設基準において、「定期的に看護・看護補助の業務内容を見直す」「身体的拘束などの行動制限を最小化する」取り組みを義務化する

▼看護補助者の配置に係る加算(急性期看護補助体制加算、看護補助加算)の施設基準において、当該看護補助者は「基礎知識を習得できる内容を含む院内研修を年1回以上受講した者」に限定する

▼7対1と10対1の中間的評価など(急性期一般入院料2から6)において、夜間看護職員配置を充実させている病棟を評価する【看護職員夜間16対1配置加算2】を新設する。加算2を届け出るためには、別に定められる「看護職員の負担軽減・処遇改善体制」の整備などが必要である

▼認知症等の患者が一定割合以上入院する地域包括ケア病棟において、夜間の看護職員配置を評価する【看護職員夜間配置加算】を新設する

▼障害者施設等入院基本料(7対1、10対1)において、【看護補助加算】【夜間看護体制加算】を新設する

▼【夜間75対1看護補助加算】の対象病棟を、13対1一般病棟(専門病院含む)から、「13対1入院基本料を算定する全ての病棟」に広げる

オンライン診察料や医学管理料を新設、対象患者は限定

 2018年度の診療報酬改定では、テレビ電話会議システムなどを活用した「オンライン診察・医学管理」を正面から評価することとしています。例えば、慢性疾患で定期的にクリニック外来を受診する患者などでは、自覚症状もなく、仕事の忙しさなどから、ついつい受診を先延ばししにし、最終的に治療から脱落してしまうケースが少なくないと指摘されます。そこで、スマートフォンのテレビ電話機能などを活用して、オンラインで受診することが可能となれば、治療からの脱落を防ぐことができるのではないかと期待されるのです。これは、医療従事者の負担軽減にも一役買うのではないかと期待されています(関連記事はこちら)。

 ただし「対面診療の原則」を否定するものではなく、対象患者はオンライン診察料・医学管理料では「▼特定疾患療養管理料▼てんかん指導料▼難病外来指導管理料▼糖尿病透析予防指導管理料▼地域包括診療料▼認知症地域包括診療料▼生活習慣病管理料▼在宅時医学総合管理料—などを算定する初診以外の患者で、かつ、当該管理に係る初診から一定期間以上(厚労省保険局医療課の迫井正深課長は「半年程度」とコメント)を経過した患者」に限定されます。

【オンライン診療料】
患者の同意を得て、対面診療とオンライン診療を組み合わせた療養計画に沿って、対面診療を行う医師と同じ医師がオンライン診察を行う場合に算定可能

【オンライン医学管理料】
患者の同意を得て、対面診療とオンライン診療を組み合わせた療養計画に沿って、医学管理を行う場合に算定可能(1か月に1回)

【在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料】
在宅療養患者(施設入居者等を除く)に対し、同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的な訪問診療を1回のみ行い、かつ、当該月において訪問診療日以外にオンラインでの医学管理を行った場合に、在宅時医学総合管理料の所定点数に加えて算定できる

オンライン機器・システムの仕様(どのような規格を満たしていなければならないか)については、今後検討されます。

 なお、1月26日の中医協総会で診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「現在、治療を継続している患者、医療機関に不利益が及ばないよう配慮すべき」との注文を付けており、解釈通知などの書きぶりが注目されます。

 
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