Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 看護モニタリング

10歳代までは白血病、20歳代は胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、30歳代では乳がんが多い―国がん

2018.6.8.(金)

 小児(0-14歳)およびAYA世代(ここでは15-39歳)に多いがんは、小児では▼白血病▼脳腫瘍▼リンパ腫▼胚細胞腫瘍・性腺腫瘍▼神経芽腫—、15-19歳では▼白血病▼胚細胞腫瘍・性腺腫瘍▼リンパ腫▼脳腫瘍骨腫瘍—、20-29歳では▼胚細胞腫瘍・性腺腫瘍▼甲状腺がん▼白血病▼リンパ腫▼子宮頸がん―、30-39歳では▼乳がん▼子宮頸がん▼胚細胞腫瘍・性腺腫瘍▼甲状腺がん▼大腸がん―などである―。

 国立がん研究センター(国がん)は5月30日に、こういったデータ分析結果を示しました(国がんのサイトはこちらこちら)。

年間のがん罹患数、小児2100人、15-19歳900人、20歳代4200人、30歳代1万6300人

 昨年(2017年)から新たながん対策推進基本計画(第3期計画)がスタートしており、そこでは5年間(がん対策推進基本計画は概ね5年計画である)の全体目標として▼科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実▼患者本位のがん医療の実現▼尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築―を掲げています(関連記事はこちら)。

こうした目標を達成するために、(1)がん予防(検診の受診率向上など)(2)がん医療の充実(3)がんとの共生(仕事と治療の両立など)(4)がん研究や人材育成などの基盤整備―という4つの分野別施策を設け、このうち(2)の「がん医療の充実」の中に「小児・AYA世代のがん」対策が盛り込まれています。

小児とは、冒頭に示したように0-14歳を、AYA世代とは「思春期」(Adolescent)と「若年成人」(Young Adult)を合わせた世代のことで、ここでは15-39歳をさします。小児・AYA世代では、例えば「罹患しやすいがんの種類が異なる」「難治性のがんも少なくない」「小児では教育と治療の両立が必要となる」「AYA世代では、とくに妊孕性(精子保存や卵巣組織凍結保存など)を考慮しなければならない」など、成人世代とは異なる対策が求められます。

 国がんは今般、小児・AYA世代のがん対策充実に向けた第一歩として、2009-11年に新たにがんと診断された小児・AYA世代のがん罹患率を人口集団ベースで集計し、分析を行いました。27府県(青森、秋田、山形、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、石川、福井、山梨、長野、岐阜、愛知、滋賀、京都、和歌山、島根、岡山、広島、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分)のデータを対象としており、2007年の前回分析(15府県)よりも母集団が拡大されています。

 まず人口10万人当たりのがん罹患率を見ると、▼小児(0-14歳)では12.3▼15-19歳では14.2▼20-29歳では31.1▼30-39歳では91.1—となっています。2013年における平均がん罹患率は、男性805.6・女性556.3で「小児やAYA世代でがんに罹患する人は少ない」ことが分かりますが、「症例が集積できず、研究がなかなか進まない」ことにもつながります。

小児・AYA世代におけるがん罹患率の状況(青の折れ線グラフが男性、赤の折れ線グラフが女性、緑の折れ線グラフが男女計)

小児・AYA世代におけるがん罹患率の状況(青の折れ線グラフが男性、赤の折れ線グラフが女性、緑の折れ線グラフが男女計)

 
また罹患率を日本全体の人口にあてはめ、「1年間のうちにがんと診断される小児・AYA世代の患者数」を推計すると、▼小児(0-14歳)では約2100人▼15-19歳では約900人▼20-29歳では約4200人▼30-39歳では約1万6300人―となります。

 なお、2007年の推計に比べて患者数が増加していますが、国がんでは「がん登録の精度が向上したことが原因」と見ています(適切にがん症例を把握できるようになっている)。

 
この点、国では、こうした少ない小児がんの症例数を集約し、効果的な治療法などの開発に向けて「小児がん拠点病院」を設けており、現在、▼北海道大学病院(北海道札幌市)▼東北大学病院(宮城県仙台市)▼埼玉県立小児医療センター(埼玉県さいたま市)▼国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)▼東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)▼神奈川県立こども医療センター(神奈川県横浜市)▼名古屋大学医学部付属病院(愛知県名古屋市)▼三重大学医学部付属病院(三重県津市)▼京都大学医学部附属病院(京都府京都市)▼京都府立医科大学付属病院(京都府京都市)▼大阪府立母子保健総合医療センター(大阪府和泉市)▼大阪市立総合医療センター(大阪府大阪市)▼兵庫県立こども病院(兵庫県神戸市)▼広島大学病院(広島県広島市)▼九州大学病院(福岡県福岡市)—の15病院が指定されています。

小児がんの4割弱は白血病、30歳代では女性乳がんが22%に

次に、がんの種別に罹患率を見てみると、次のような状況です。10歳代までは白血病、20歳代は胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、30歳代になると女性乳がんが第1位となっています。

【小児0-14歳】
(1)白血病:38%(2)脳腫瘍:16%(3)リンパ腫:9%(4)胚細胞腫瘍・性腺腫瘍:8%(5)神経芽腫:7%
【15-19歳】
(1)白血病:24%(2)胚細胞腫瘍・性腺腫瘍:17%(3)リンパ腫:13%(4)脳腫瘍:10%(5)骨腫瘍:9%
【20-29歳】
(1)胚細胞腫瘍・性腺腫瘍:16%(2)甲状腺がん:12%(3)白血病:11%(4)リンパ腫:10%(5)子宮頸ががん:9%
【30-39歳】
(1)女性乳がん:22%(2)子宮頸がん:13%(3)胚細胞腫瘍・性腺腫瘍:8%(4)甲状腺がん:8%(5) 大腸がん:8%

小児・AYA世代のがん患者の内訳(男女合計)、10歳代までは白血病(白部分)、20歳代は胚細胞腫瘍・性腺腫瘍(濃い目の橙色部分)、30歳代になると女性乳がん(薄い桃色部分)が第1位である

小児・AYA世代のがん患者の内訳(男女合計)、10歳代までは白血病(白部分)、20歳代は胚細胞腫瘍・性腺腫瘍(濃い目の橙色部分)、30歳代になると女性乳がん(薄い桃色部分)が第1位である

小児・AYA世代のがん患者の内訳(男性)

小児・AYA世代のがん患者の内訳(男性)

小児・AYA世代のがん患者の内訳(女性)

小児・AYA世代のがん患者の内訳(女性)

 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

がんの5年生存率・10年生存率は前年調査より若干低下、乳がんでは向上―国がん
第3期がん対策推進基本計画を閣議決定、ゲノム医療推進や希少・難治がん対策など打ち出す
第3期がん対策基本計画案を了承、2020年までに受動喫煙をゼロにする—がん対策推進協議会

胸部食道がん、平均値では胸腔鏡手術のほうが開胸手術よりも術後日数が長い―CQI研究会
ベンチマークと臨床指標でがん医療の均てん化を推進―CQI研究会、8月開催
大腸がんの在院日数、短縮傾向もなお病院格差-CQI研究会が経年分析
乳がんの治療法、放射線実施率など格差鮮明―CQI研究会、臨床指標20項目を調査
前立腺がん手術、在院日数最短はダヴィンチ、合併症発生率は?―第10回CQI研究会

医療経済学者がキャンサーナビゲーターになった(1)―「アジアの疾病」
医療経済学者がキャンサーナビゲーターになった(2)―「戦場を失くした戦士」
がん患者の不安と徹底して向き合い導く「キャンサーナビゲーション」って何だ?
優れた医療を日本に-全米屈指のクィーンズメディカルセンターでGHCが研修(1)
医療スタッフの生産性向上は日本でも必須の課題に-全米屈指のクィーンズメディカルセンターでGHCが研修(2)
がん医療の臨床指標を定め、自院と他院のベンチマークすることで医療の質が向上―がん研有明病院とGHCが共催セミナー
ステージ3Bの医療経済学者、がんで逝った友への鎮魂歌

2013年のがん罹患率、前年に続き減少し361.9、地域特性を踏まえたがん対策を—国がん
がんの5年生存率、全体で65.2%、乳がんで92.7%、肺がんで39.1%―国がん
がんの5年生存率、前立腺や乳がんでは9割超えるが、膵がんでは9.2%にとどまる―国がん
2014年のがん登録、最多は大腸がんで9万4596件―国立がん研究センター
今年(2016年)のがん罹患者は101万2000例、がんでの死亡は37万4000人―国立がん研究センター
2012年の人口10万人当たりがん患者は365.6、男性では胃がん、女性では乳がんが最多―国立がん研究センター
患者の免疫状態を正確に測定する新手法開発、抗体薬の効率的開発に期待―国立がん研究センター
乳がん・肺がん・肝臓がん、5年生存率に比べて10年生存率は大きく低下―国立がん研究センター
治療抵抗性の乳がん患者に対する新治療法、治験を開始―国立がん研究センター
がん罹患数98万例、死亡者数は37万人に―国立がん研究センター15年推計

希少がんの「四肢軟部肉腫」を適切に治療できる施設リストを公開―国がん

【2018年度診療報酬改定答申・速報6】がん治療と仕事の両立目指し、治療医と産業医の連携を診療報酬で評価
ACP等の普及に向けて多くの提案、「医師少数地域での勤務経験」の活用法に期待集まる―社保審・医療部会(2)
無痛分娩の安全性確保に向け、麻酔科専門医等の配置や緊急時対応体制などを要請―社保審・医療部会(1)