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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

無痛分娩の安全性確保に向け、麻酔科専門医等の配置や緊急時対応体制などを要請―社保審・医療部会(1)

2018.4.11.(水)

 我が国でも硬膜外麻酔を用いて、陣痛や分娩時の激痛を抑える、いわゆる「無痛分娩」が増加している。その安全性を確保するため、無痛分娩施設には▼無痛分娩を熟知した専門職配置(麻酔科専門医など)▼産婦のそばへの救急用医薬品の常備▼年1回程度の危機対応シミュレーション実施―などを求める通知を発出する―。

 4月11日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こういった報告が厚生労働省から行われました。早ければ4月中にも、関連通知が発出される見通しです。

4月11日に開催された、「第61回 社会保障審議会 医療部会」

4月11日に開催された、「第61回 社会保障審議会 医療部会」

無痛分娩の安全性確保、委員からは「少子化対策」への糸口との期待も

4月11日の医療部会では、(1)医療法・医師法改正案(2)オンライン診療の実施ガイドライン(3)検体検査の精度管理(4)「人生の最終段階における医療」の普及啓発(5)無痛分娩―の各テーマについて、厚労省から報告を受けました。本稿では、(3)と(5)に焦点を合わせ、ほかは別稿でご紹介します。

 まず(5)の無痛分娩は、硬膜外麻酔などで陣痛や分娩時の激痛を抑えるもので、増加傾向にあります(2008年には分娩中の2.6%に過ぎなかったが、2014年には4.6%、15年には5.3%、16年には6.1%に増加)。

同時に、無痛分娩における事故も目立ってきており、昨年(2017年)4月には日本産科婦人科学会において「無痛分娩を行う際には適切に対応できる体制を整えるべき」との緊急提言が行われました。

厚労省でも研究班が立ち上げられ、「無痛分娩の実態把握」を行うとともに、「安全管理体制の構築」に向けた検討を実施。今般、その提言に基づいた厚労省の対応方針が医療部会に報告されたものです。

まず、研究班は、無痛分娩を取り扱う施設(分娩取扱い施設の3割程度)に対しては、次のような体制を敷くべきと提言しています。
▼無痛分娩を熟知した専門職(「産婦人科専門医」「麻酔科専門医」「麻酔科標榜医」のいずれか)を配置し、2年に1回程度、最新知見を得るために講習会受講を求める。また、当該専門職は、産後3時間までは「産婦に5分程度でアクセスできる」範囲に待機することなどを求める
▼産婦のそばに救急用の医薬品を準備する
▼年に1回程度、危機対応シミュレーションを実施する
▼無理分娩に関する診療実績、診療体制、担当医の研修歴・講習会受講歴などをホームページ等で公開する
▼有害事象発生時に、各都道府県の産婦人科医会への報告する

 厚労省は、関係学会や医師会・病院団体等と詳細を詰め、早ければ4月中にも体制整備等に関する通知を発出する構えです。また都道府県による立入検査(医療法第25条)で、こうした体制が整備されているかをチェックすることで、体制整備の実効性を確保する考えも示しています。

 
 また関係学会や医師会・病院団体に対して、研究班は、▼産科麻酔の知識・技術を維持、更新するための講習会開催▼産科麻酔を担う人材育成のための研修プログラムの策定・実施▼産科麻酔認定医制度の検討▼情報公開を行っている無痛分娩取扱い施設のリスト作成と、ホームページでの公開▼情報収集・分析と各医療機関へのフィードバック▼無痛分娩に関する検討の場(無痛分娩に関するワーキンググループ)の設置・開催―などを行うよう要望しています。

 厚労省では、予算事業「周産期医療関係者研修」の中に「産科麻酔研修」を加え、学会等による講習会開催などを支援する考えです。

 今般の提言や厚労省の対応は、「無痛分娩の安全性を確保する」ことが狙いですが、委員は「少子化対策への糸口」とも受け止めているようです。加納繁照委員(日本医療法人協会会長)や井上隆委員(日本経済団体連合会常務理事)は「フランスでは無痛分娩の割合が65.4%にのぼっている。育児支援と併せて、無痛分娩が『分娩の重要な選択肢』となるように支援すべき」旨の考えを述べています。

 なお菊池令子委員(日本看護協会副会長)は、「無痛分娩について正しい知識が普及していない。『麻酔分娩』と呼ぶべきではないか」と問題提起しています。

医療機関内で検体検査を実施する場合、検体検査の精度確保責任者配置が必要に

 また(3)の検体検査については、従前、▼医療機関内での検体検査については品質・精度管理規定がなかった▼検体検査の分類が法律事項で見直しにくく、技術進歩に追いつかない―といった課題がありました。これを解決するために、2017年の医療法等改正において▼医療機関内での検体検査について品質・精度管理規定を設ける▼検体検査の分類を省令事項とし、遺伝子検査などを追加する―との見直しが行われました。

厚労省は検討会を設置し、具体的な精度管理基準などを議論。今般、次のような検討結果が医療部会に報告されたものです(関連記事はこちら)。

【医療機関が自ら検体検査を実施する場合の精度確保基準(案)】
(a)医師または臨床検査技師を「精度確保責任者」として配置する(他業務との兼任可能)
(b)精度確保に係る各種標準作業所・日誌等を作成する(検査機器保守管理作業日誌、測定作業日誌、外部精度管理台帳など)
(c)▼内部精度管理の実施▼外部精度管理調査の受検▼適切な研修の実施―などに努める(努力義務)

【遺伝子関連検査・染色体検査の精度確保基準(案)】
(A)遺伝子関連検査・染色体検査の責任者(当該業務経験を有する医師または臨床検査技師)を配置する(病院全体の検体検査部門における精度確保責任者との兼任可能、上記(a)参照)
(B)内部精度管理、適切な研修を実施する
(C)「外部精度管理調査の受検」または「施設間における検査結果の相互確認」に努める(努力義務)
(D)ISO15189などの第三者認証取得が推奨される(当面)

【検体検査分類の見直し(案)】
現行:▼微生物学的検査(細菌培養同定、薬剤感受性、病原体遺伝子)▼血清学的検査(血清学、免疫学)▼血液学的検査(血球算定、血液像、出血・凝固、細胞性免疫、染色体、生殖細胞系列遺伝子、体細胞遺伝子)▼病理学的検査(病理組織、免疫組織化学、細胞、分子病理学、体制細胞遺伝子)▼寄生虫学的検査▼生化学的検査(生化学、尿・糞便等一般)

見直し案:▼微生物学的検査(細菌培養同定、薬剤感受性)▼免疫学的検査(免疫血清学、免疫血液学)▼血液学的検査(血球算定・血液細胞形態、血栓・止血関連、細胞性免疫)▼病理学的検査(病理組織、免疫組織化学、細胞、分子病理学)▼生化学的検査(生化学、免疫化学、血中薬物濃度)▼尿・糞便等一般検査(尿・糞便等一般、寄生虫)▼遺伝子関連検査・染色体検査(病原体核酸、体細胞遺伝子、生殖細胞系列遺伝子、染色体)

 今後、詳細を厚労省内で詰め、今年(2018年)6月頃に省令を公布。周知期間を経て、12月頃に施行となる見込みです。

 
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