救命救急センターの充実段階評価、評価基準を毎年度厳しくしていく―社保審・医療部会 第59回(1)
2018.1.24.(水)
全国に約300か所ある救命救急センターは、機能に応じて毎年ランク付けされている(充実段階評価)。この評価基準を毎年度厳しくしていき、地域の救急医療関係者との連携などを強力に促す―。
1月24日に開催された社会保障審議会・医療部会で厚生労働省は、このような方針を示し、おおむね了承を得ました。現在の評価基準では、すべての救命救急センターが最も高い「A評価」となってしまっており、評価方法や指標を見直すことが決まっています。厚労省は、早ければ今年(2018年)の実績評価から、見直し後の基準を活用する考えです。
現行の評価方法では、救命救急センターに地域貢献促す効果などに疑問
救命救急センターの安定的な運営を確保するため、国や都道府県が運営費の一部を補助しています。また、診療報酬上も【救命救急入院料】の加算(1日1000点)が設けられています。ただし、救命救急センター自ら機能向上に向けた努力を行ってもらうため、これらの補助金や診療報酬には、充実段階評価に基づいた次のような差が設けられています。
▼十分な機能を有していると判断され充実段階評価が「A評価」であれば、補助金も診療報酬(加算)も満額が支給される
▼機能が不十分である状態が2年間続き、充実段階評価が「B評価」であれば、補助金が1割カット・診療報酬(加算)が5割カットされる
▼機能が不十分である状態が3年間以上続き、充実段階評価が「C評価」であれば、補助金が2割カットされ、診療報酬(加算)は算定できなくなる
この点、従前から、ほとんどの救命救急センターが充実段階評価「A評価」であり、「充実段階を評価する指標が適切とは言えないのではないか」との指摘があります。例えば、今年度(2017年度)にいたっては、すべての救命救急センターが「A評価」となっています。
また、現在の評価指標には、「救急科専門医の数」などの体制面の充実が重視されており、地域の救急医療体制の中での関係者間の連携などを促すことができていないという課題も指摘されています(評価項目などはこちら)。
このため、「医療計画の見直し等に関する検討会」が2016年12月、「救命救急センターの充実段階評価を見直す」「地域連携を評価する観点の指標をより多く取り入れる」といった意見を取りまとめています。
地域関係者との連携など促す
今般、厚労省は充実段階評価の見直し案を医療部会に提示。そこでは、「地域のニーズに合わせて、ドクターカーなどで医師を救急現場に派遣できる体制」や「地域の救急医療体制の関係者(都道府県や医師会、救急医療機関、消防機関など)との症例検討会や勉強会の定期開催」などを加え、評価項目を現行の37項目から45項目に増やし、「各救命救急センターの取り組み」をより適切に評価できるものとしています(評価項目の見直し案はこちら)。また、これまでの「A・B・Cの3段階評価」から、「S評価」を加えた「S・A・B・Cの4段階評価」への見直しも行われ、より細かく評価できることが期待されます。
「S評価」は「他のセンターと比べて規範となるセンター」(厚労省医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室の徳本史郎室長)という位置付けで、新しい評価項目で「100点満点中90点以上」かつ「是正を要する項目(全20項目)のいずれにも該当しない」救命救急センターが対象です。
一方、「A評価」は機能が適切である救命救急センターの評価で、「S評価」には達しませんが、「是正を要する項目(全20項目)のうち4項目のみに該当する」病院があてはまります。
また、「B評価」は機能が一定の水準に達していない救命救急センターの評価で、「是正を要する項目のうち5項目以上8項目以内に該当してしまう」ことが基準となります。
「C評価」も機能が一定の水準に達していない救命救急センターの評価ですが、「B評価」の基準も満たせず、「是正を要する項目のうち9項目以上に該当してしまう」救命救急センターが対象となります。
前述のとおり、2017年度の充実段階評価結果は「すべての救命救急センターがA評価」でしたが、見直し後の指標で評価し直すと、▼S評価が11施設(3.8%)▼A評価が241施設(84.8%)▼B評価が30施設(10.5%)▼C評価が2施設(0.7%)―となり、「より適切に救命救急センターの取り組みを評価する」という目的が達成されるであろうことが分かります。
さらに、「S評価」や「A評価」を取得するための基準は毎年度厳しくなります。例えば、「是正を要する項目のうち3項目に該当してしまう」救命救急センターは、見直し1年目は「A評価」となりますが、2年目以降は「B評価」に分類されます。
診療報酬上の加算や補助金の水準が今後の論点
厚労省が示した充実段階評価の見直し案は、医療部会でおおむね了承され、早ければ今年(2018年)の実績評価から用いられる見通しです。ただし、山口育子委員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)と吉川久美子参考人(日本看護協会常任理事、菊池令子委員:日本看護協会副会長の代理出席)が、専門的な教育を受けた看護師(例えば急性・重症患者看護分野の専門看護師)らの配置を評価基準に加えるべきと主張しており、評価項目のさらなる改善に向けた「今後の検討課題」に位置付けられています。
また、医療部会に先立ち、1月22日に充実段階評価の見直し案について議論した「医療計画の見直し等に関する検討会」では、岡留健一郎委員(日本病院会副会長)が、現場の作業時間を増やさないように配慮するよう求めています。
なお、1月24日の中央社会保険医療協議会で厚労省は、2018年度の次期診療報酬改定で【救命救急入院料】の加算について、充実段階評価の見直しを踏まえて、次のとおり2段階から3段階へと改める案を示しています。
▼救急体制充実加算1:充実段階評価が「S評価」の救命救急センターが対象
▼救急体制充実加算2:充実段階評価が「A評価」の救命救急センターが対象。点数は加算1より低い
▼救急体制充実加算3:充実段階評価が「B評価」の救命救急センターが対象。点数は加算2より低い
現行の2段階の加算に、「S評価」の救命救急センターを対象とする上位区分が設けられる形ですが、これまでの診療報酬改定論議では支払側委員が、「S評価を設けて加算で重点的に評価するのであれば、A・Bなどの評価を引き下げる必要がある」と主張しており、今後の点数設定が注目されます。
また、救命救急センターへの補助金の減算率が、どのように見直されるのか(例えば、「A評価」の救命救急センターに、見直し前と同水準の補助金や加算が与えられるか)も今後の焦点となります。
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