7対1病棟は高度急性期・急性期、10対1病棟は急性期・回復期との報告が基本に—地域医療構想ワーキング(1)
2017.6.2.(金)
7対1入院基本料を届け出ている病棟は「高度急性期」または「急性期」、10対1病棟は「急性期」または「回復期」、13対1・15対1病棟は「回復期」または「慢性期」、一部「急性期」として病床機能報告を行うことを基本とする。これらと異なる報告ももちろん可能ですが、その場合には事後に地域医療構想調整会議で状況を確認する—。
2日に開催された地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織以下、ワーキング)には、厚生労働省が膨大なデータをもとにこういった考え方を示しました。構成員から目立った反論はなく、今年度(2017年度)からの病床機能報告ではこの考え方に沿った報告を行うことが求められます(関連記事はこちらとこちら)。
ICUなどの特定入院料と病床機能との紐づけは完了
病床機能報告制度は、一般病床・療養病床を持つすべての病院が「自院の病棟が▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—のいずれの機能を担っていると考えているか」などを毎年、都道府県に報告するものです。すでに都道府県が策定した地域医療構想(2025年における▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―ごとの病床の必要量)と報告内容を照らし合わせ、地域ごとに病床機能分化や連携の推進を目指していきます。
病床機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)については定性的な定義こそ定められていますが、どういった病棟が高度急性期や急性期に該当するのかといった明確な物差しがなく、当初は「療養病棟であるのに高度急性期と報告している」といった事例も散見されました。
そこで厚労省は、施設基準・算定要件に照らし、病棟機能と親和性の高い特定入院料について整理を行い、次のような取り扱いを定め、昨年度(2016年度)の病床機能報告から運用しています。例えば、次のようなものです。
▼救命救急入院料、特定集中治療室管理料、ハイケアユニット入院医療管理料、脳卒中ケアユニット入院医療管理料、小児特定集中治療室管理料、新生児特定集中治療室管理料、総合周産期特定集中治療室管理料、新生児治療回復室入院管理料は「高度急性期機能」
▼回復期リハビリテーション病棟入院料は「回復期機能」
▼特殊疾患入院医療管理料、特殊疾患病棟入院料、療養病棟入院基本料は「慢性期機能」
高度急性期と報告した病棟のほとんどで、看護配置など7対1の施設基準を満たす
厚労省は今般、「病床機能の報告状況」と、各病棟が届け出いている「入院基本料」、「医療提供内容」「人員配置」などを分析したところ、次のような状況が明らかになりました。
【高度急性期と報告した病棟】
▼8割超で看護配置(傾斜配置後の実質配置、以下同)が「7対1相当以上」(実配置では1床当たり0.6人以上)▼9割超で平均在棟日数が「18日以内」(7対1の施設基準を満たす)▼急性期と報告した病棟に比べ、「他院・他病棟からの転院・転棟患者」が多い—ことが分かりました。高度急性期と報告した病棟の多くは、7対1入院基本料の施設基準の一部を満たしていると考えられます。後述のとおり、厚労省は「高度急性期は主に7対1以上」との整理を行いました。
【急性期と報告した病棟】
▼看護配置が4割弱で「7対1相当以上」だが、2割弱で「10対1相当未満」(1床当たり0.4人未満)、1割弱で「13対1相当未満」(1床当たり0.3人未満)▼8割強で平均在棟日数が「21日以内」(10対1の施設基準を満たす)▼高度急性期と報告した病棟に比べ、「他院・他病棟からの転院・転棟患者」が少ない—状況です。
また急性期と報告した病棟について、入院基本料別・診療科別に、病床あたりの「手術件数」「全身麻酔手術件数」を見ると、外科や脳神経外科では「7対1・10対1で13対1・15対1の2倍程度の手術・全麻手術を実施している」ことなども明らかになりました。ここから、急性期と報告している病棟であっても「7対1・10対1と13対1・15対1との間には診療内容の違いがある」ことが伺えます。ここから後述するように「急性期は7対1または10対1」との整理が行われています。
もっとも13対1・15対1病棟であっても、循環器内科や眼科を標榜し、急性期と報告した一部の病棟では、7対1・10対1に引けを取らない件数の手術・全麻手術を実施していることも明らかになっています。このため、「一部の13対1・15対1では急性期と紐づけられる」(急性期機能を果たしている)とされました。この点について中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「地域によって急性期医療を提供するが、看護師不足で13対1・15対1となっている病院もある。そこは認めてあげなければいけない」と述べ、厚労省の判断を評価しています。
【回復期・慢性期】
回復期と報告した病棟については、「その病棟が一般病床か療養病床か」で医療提供内容などに差のあることが分かりました。病床あたりの看護配置が「10対1相当以上」なのは一般病床の病棟では約66%なのに対し、療養病床の病棟では47.6%にとどまります。また平均在棟日数を見ると、一般病床では60日を超える病棟は3割弱にとどまりますが、療養病床の病棟では8割弱を占めます。さらに「他院・他病棟からの転院・転棟患者」割合をみると、療養病床の病棟では9割超で75%以上(100%が8割程度)ですが、一般病床の病棟では7割弱(100%は6割程度)にとどまっています。
さらに慢性期と報告した病棟では、▼96%弱で「25対1相当以上」(1床当たり0.18人以上)の看護配置▼平均在棟日数は8割強で90日超、4割強で300日超▼6割超で「他院・他病棟からの転院・転棟患者」割合が75%以上—となっています。
現在、回復期と報告している病棟のほとんどは「回復期リハビリテーション病棟」と「地域包括ケア病棟」ですが、13対1・15対1病棟も「回復期」「慢性期」と紐づけられることが明確になりました。あわせて厚労省は、本年度(2017年度)の病床機能報告マニュアルの中で「リハビリテーションを提供していなくても回復期機能を選択できる」点をこれまで以上に明確にする考えです。
これらを逆の方向から整理すると、次のようになります。
(1)7対1病棟は「高度急性期」または「急性期」
(2)10対1病棟は「急性期」または「回復期」
(3)13対1・15対1病棟は「回復期」または「慢性期」、一部では「急性期」も
もちろん、これらと異なる組み合わせによる報告の可能ですが、その場合には「事後に、地域医療構想調整会議で『なぜ異なる組み合わせで報告したのか、実際の機能や医療提供ないようはどのようなものか』などを確認する」ことになります(修正報告を迫られるわけではない)。
この考え方に2日のワーキングでは目立った反論は出ておらず、本年度(2017年度)の報告から運用されることになります。
ワーキングでは、今後、病床機能別・診療科別に代表的な診療行為などを分析し「各機能の定量的な基準」を探っていくことになります。厚労省医政局地域医療計画課の担当者は、前回会合でのデータを引き合いに出し、「循環器内科の高度急性期病棟では、1か月に1回以上は、経皮的冠動脈形成術を実施している」といったような基準を探っていく考えを示しています。もっとも相澤孝夫構成員(日本病院会会長)の「どう考えてもおかしいという報告内容は別だが、あまりに精緻化してしまうと窮屈になりすぎる。日本の医療の良い部分を守るために幅を持たせることが必要ではないか」との指摘を受け、地域医療計画課の担当者は「定量的基準は『明らかにおかしい』という部分を明確化していくことになろう」と見通しています。
【関連記事】
地域医療構想出揃う、急性期の必要病床数は40万632床、回復期は37万5246床—地域医療構想ワーキング(3)
病院の急性期度をベンチマーク分析できる「急性期指標」を報告—地域医療構想ワーキング(2)
循環器内科かつ高度急性期にも関わらず、PTCAを1度も実施していない病院がある—地域医療構想ワーキング(1)
病床機能報告の病床数と地域医療構想の必要病床数、「一致する性質のものでない」ことを確認―地域医療構想GL検討会
「救命救急やICUは高度急性期」など、特定入院料と病棟機能との関係を一部整理―地域医療構想GL検討会
高度急性期や急性期の患者数推計の計算式示される、リハの扱いに注意を―地域医療構想策定の関係省令
地域医療構想策定ガイドライン固まる、回復期は175点以上に設定