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地域医療構想調整会議を3か月に1回程度開催し、具体的な機能分化の議論を—医療計画見直し検討会(2)

2017.2.17.(金)

 本年度(2016年度)中にすべての都道府県で地域医療構想が策定されるが、構想実現に向けて「地域医療構想調整会議」を3か月に1回程度開催し、各医療機関の役割の明確化や、個別医療機関の機能分化や機能転換に関する議論を行う必要がある―。

 17日に開かれた「医療計画の見直し等に関する検討会」では、このような調整会議の進め方についても議題となりました。

 すでに調整会議を開催している地域からは、「研究者などの協力を得て、客観的な視点での分析・解釈を加える」ことや、「介護関係者に参加を求める」ことなどで調整会議の議論が活発になっていることが報告されています。

2月17日に開催された、「第9回 医療計画の見直し等に関する検討会」

2月17日に開催された、「第9回 医療計画の見直し等に関する検討会」

構想実現に向けて、厚労省が「調整会議の開催状況」を定期的にチェック

 いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年に向けて医療・介護ニーズが飛躍的に高まっていきます。このため病院・病床の機能分化・連携の推進が重要課題となっており、各都道府県で▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―の必要病床数などを規定した「地域医療構想」の策定が進められています。

 地域医療構想は本年度(2016年度)中に全都道府県で策定され、今後は「構想の実現」に向けた「地域医療構想調整会議」(以下、調整会議)でどのように機能分化・連携の推進を形作っていくかが重要になります(関連記事はこちら)。

 厚生労働省は、調整会議の具体的な進め方の1例として次のようなスケジュール案を提示しました。これを1ルーティンとして、毎年度繰り返すことで、意見の調整を図り構想を実現することが期待されます。

【1回目】4-6月:病床機能報告の結果や医療計画データブック(ナショナルデータベースをもとに厚労省が作成)などを踏まえ、▼各医療機関の役割の明確化▼不足する医療機能の確認―などを行う

【2回目】7-9月:機能・事業ごとの不足を補うため、「地域で整備が必要な医療機能」を具体的に示し、次回の病床機能報告(10月)に向けて「各医療機関の方向性」を確認する

【3回目】10-12月:機能ごとに「具体的な医療機関名」をあげた上で、機能分化・連携・転換について具体的に決定していく

【4回目】1-3月:次年度の調整会議に向けて、具体的な医療機関名や進捗評価(指標も含めて)、地域医療介護総合確保基金の活用などを含めた「取りまとめ」を行う

地域医療構想調整会議の進め方(案)、これを2017年度以降、毎年度繰り返し、構想実現を目指すことになる

地域医療構想調整会議の進め方(案)、これを2017年度以降、毎年度繰り返し、構想実現を目指すことになる

 もちろん、このスケジュール案はあくまで「1例」であり、地域ごとに違う進め方をすることが可能です。ただし厚労省医政局地域医療計画課の担当者は「概ね3か月に1回程度、調整会議を開催してもらい、その進捗状況を定期的に報告してもらう」との考えを示しています。繰り返しになりますが、「地域医療構想の実現」が目標であり、調整会議で各医療機関のベクトル(構想の実現に向けたベクトル)を揃えていくことが極めて重要であるからです。

 また国は、「病床機能の分化・連携に向けた好事例」や「調整困難事例」を都道府県から収集し、それを整理し、地域にフィードバックするなどの支援を行います。17日には、すでに調整会議を開催している地域から報告された意見も紹介されました。

 好事例としては、「大学などの研究者の協力を得て、客観的な視点からの分析・解釈を加える」「診療報酬に関するデータも共有する」「調整会議『以外』の場を設け、意見交換を密に行う」「介護関係者などの参加を募る」ことによって、調整会議の議論が活発になり、地域の課題に関する情報共有が円滑に行えている状況が報告されています。

 逆に「困った」点としては、「データブックが使いこなせない」「各論(個別医療機関の議論)が進みにくい」「人数が多すぎると議論が進みにくい」「『構想=病床削減』と考える委員がいると議論がずれてしまう」といった事例が報告されました。

 データブックは、NDB(ナショナルデータベース、レセプトと特定健康診査のデータを整理したもの)をもとに作られたデータ集です。この点、市川朝洋構成員(日本医師会常任理事)らからも「使用者・使用範囲に制限があり(データの機微性に鑑み、県の担当者や研修修了者などしか使用できない)、使いにくい」との指摘がありました。これに対し厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、「医師会が専門家と協力して、病院データなどを分析した資料を提示し、活用している地域もある。そういった好事例も紹介していきたい」「症例数が少ない場合などは個人特定の恐れがあり、実数を出していないが、『○○の検討をするために必要である』といった具体的な要望があれば、例外的な実数提示についても検討したい」との考えを示しています。

青森県は「非常に具体的な地域医療構想」が策定されたが、地域の特殊性によるもの

 多くの都道府県ではすでに地域医療構想が策定されていますが、その中でも青森県では「津軽構想区域において、▼国立病院機構弘前病院と弘前市立病院を統合し、新たな中核病院を整備する▼黒石病院、大鰐病院、板柳中央病院などは、病床規模の縮小や回復期・慢性期へ機能転換する―という、非常に具体的な構想が示されています。

青森県が策定した地域医療構想、津軽構想区域について極めて具体的な機能分化・転換方針が示されている

青森県が策定した地域医療構想、津軽構想区域について極めて具体的な機能分化・転換方針が示されている

 厚労省医政局の神田裕二局長は、青森県の構想について「政策医療の大部分を公立病院が担っており、機能転換する病院は稼働率が芳しくないという事情があり、議論が早く進んだ」との特殊性を説明しています。

 この点について西澤寛俊構成員(全日本病院協会会長)は、「機能分化は、各病院が報告した病棟の機能と、病棟ごとの診療データ(2016年度分からレセプトに病棟コードが付与された)とを見て議論していくはずだ。まだ病棟ごとの診療データは出ておらず(本年度内に示される見込み)、青森県はスピード違反ではないか」と指摘しました。都道府県、さらには構想区域ごとに事情が異なるため、「機能分化・転換が円滑に進む」地域と「調整に時間がかかる」地域とがあり、地域ごとに柔軟な進め方が求められそうです。

都道府県・市町村担当者、有識者が集う「協議の場」で、医療・介護計画の整合性確保

 ところで2018年度からは、医療計画だけでなく、新たな介護保険事業(支援)計画もスタートします。在宅医療提供体制などについては両計画に関係が深いため、厚労省は両計画の上位指針である「総合確保方針」を改訂し、「都道府県と市町村の担当者が協議する場(協議の場)を設け、両計画の整合性を図る」よう求めています。

2018年度から新たな医療計画と新たな介護保険事業(支援)計画がスタートするため、両計画の整合を図る「協議の場」の設置と運用が極めて重要となる

2018年度から新たな医療計画と新たな介護保険事業(支援)計画がスタートするため、両計画の整合を図る「協議の場」の設置と運用が極めて重要となる

 具体的には、医療計画・介護保険事業(支援)計画を具体的に検討していく『前』には『協議の場』を設置し、▼医療計画と介護保険事業(支援)計画で対応すべき需要(在宅医療や介護サービス)▼具体的な整備目標・見込み量の在り方(例えば訪問看護ステーションについて地域偏在がある場合などには都道府県が積極的に調整・支援する)(関連記事はこちら)▼目標の達成状況の評価―などを市町村・都道府県双方の担当者に加えて、地元医師会や介護事業者などの有識者を交えて調整することが求められます。

   
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