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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

地域医療構想出揃う、急性期の必要病床数は40万632床、回復期は37万5246床—地域医療構想ワーキング(3)

2017.5.11.(木)

 全都道府県で地域医療構想の作成が完了し、2025年における病床の必要量は、全国ベースで▼高度急性期:13万455床▼急性期:40万632床▼回復期:37万5246床▼慢性期:28万4488床—の合計119万821床となる—。

 このような状況が、10日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織、以下、ワーキング)の資料から明らかになりました(関連記事はこちらこちら)。

 2016年の病床機能報告では、▼高度急性期:17万254床▼急性期:58万416床▼回復期:13万9062床▼慢性期:35万4359床―となっています。両者の性格は異なり、単純比較することはできませんが、「急性期から回復期への機能転換が必要」な状況は明らかと考えられます。

5月10日に開催された、「第4回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

5月10日に開催された、「第4回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

全体として急性期が過剰で、回復期が不足する状況が改めて浮き彫りに

 地域医療構想では、2025年における患者数を高度急性期や急性期の機能別の推計し、それをもとに必要な病床数を推計し、その実現に向けた方策(機能分化の推進など)を具体的に記載します(関連記事はこちらこちら)。

 各都道府県で2016年度中に地域医療構想の作成が完了したため、今般、厚生労働省が構想区域(主に2次医療圏)ごとに、機能別の必要病床数(病床の必要量)を一覧で公開しました(厚労省のサイトは(関連記事はこちら)。これを全国ベースで集計すると、▼高度急性期:13万455床▼急性期:40万632床▼回復期:37万5246床▼慢性期:28万4488床—の合計119万821床となっています。

 冒頭に述べたように、2016年の病床機能報告結果の数値とは大きく異なっており、地域医療構想の必要病床数のほうが、▼全体で5万7000床ほど少ない▼高度急性期・急性期・慢性期のベッド数が多い▼回復期が少ない—ことが分かります。

 例えば「急性期」機能の病棟にも、高度急性期から回復期(中には慢性期)と幅広い状態の患者が入院しているため、地域医療構想で推計された病床数と、病床機能報告から集計される病床数とが一致することはありません。この点を踏まえても、「急性期から回復期への機能転換の必要性」の高さは再認識することができます。

 ただし、臨床現場には「回復期とは何かが不明確である」との意見もあり、今後、具体的な判断基準などをめぐる議論が続けられるでしょう。なお、病床機能報告ではレセプトをもとにした診療データも報告することになっていますが、これが「急性期、とくに外科系に偏っている」という問題もあります。回復期の判断基準の明確化などに向けて、今後のワーキングで、回復期や慢性期、さらに内科系に関連の深い項目の追加についても検討される可能性があります。

高度急性期、必要病床数だけでなく「地域の実情」を踏まえた整備が必要

 構想区域別の必要病床数を眺めていると、「高度急性期の必要病床数がゼロ床」としている地域がいくつかあります。南檜山構想区域(北海道)や有田構想区域(和歌山県)、安芸構想区域(高知県)など9区域(7都県)がこれに該当しますが、ここでは「2025年に高度急性期の患者がゼロになる」わけではなく、「広域(県全体)で高度急性期機能をカバーする」と判断したものと推察されます。

9区域(7都県)では、高度急性期の必要病床数をゼロと見込んでいる

9区域(7都県)では、高度急性期の必要病床数をゼロと見込んでいる

 

 たしかに、患者の居住地に近いところで高度急性期から慢性期までの全機能が揃っていることが理想かもしれませんが、高度急性期病棟を維持するためには設備はもちろん、人的なコストもかかります。今後、少子化が進行する中では看護師をはじめとする医療人材の確保が全国的に難しいことなどに鑑みれば、「広域(県全体)で高度急性期機能をカバーする」との7都県の判断は『英断』と評価するに値するのではないでしょうか。

 高度急性期病床については、2015年の病床機能報告の病床数よりも、2025年の必要病床数のほうが多い区域が205あります。「高度急性期病床が不足している」区域ももちろんあると思われますが、上記のような点も考慮し、「各区域の実情を踏まえ、地域医療構想調整会議で十分に議論することが必要ではないか」と厚労省地域医療計画課の担当者もコメントしています。

205の構想区域では、高度急性期病床について「必要数に比べて、現在の病床数のほうが少ない」状況である

205の構想区域では、高度急性期病床について「必要数に比べて、現在の病床数のほうが少ない」状況である

 

 なお、高度急性期と急性期を合算すると、「病床が不足している」地域は1区域にとどまり、しかも該当する小豆区域(香川県)では「高度急性期、急性期ともに必要病床数はゼロ床」としています。前述のとおり「広域(県全体)でカバーする」との考えに立つものと言えます。

 

 一方、回復期についてはほとんどの構想区域で「病床が不足している」状況にあり、機能分化の必要性をここでも再認識することができます。

回復期については、ほとんどの構想区域で「2025年に向けて整備が必要」という状況が明確になっている

回復期については、ほとんどの構想区域で「2025年に向けて整備が必要」という状況が明確になっている

病棟単位の機能分化、北海道の深川地域の実例が紹介される

 地域医療構想では、必要病床数だけでなく、機能分化の進め方なども可能な限り記載することになっています。青森県や岐阜県の構想では、具体的な病院名を示し、「どの病院がどの機能を担うのか」にまで言及している点に注目が集まりました(関連記事はこちら)。

 10日のワーキングで、厚労省はこの2県に加えて、新たに北海道と沖縄県の構想についても紹介しています。

 北海道の北空知区域では、急性期機能が過剰になる一方で、回復期が大きく不足するとの推計がなされたことを受け、▼深川市立病院に地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟などを整備する▼深川第一病院にも地域包括ケア病棟を整備する—などの具体的な機能転換計画が明らかにされています。

北海道の地域医療構想では、深川地域(北空知区域)における病棟単位の機能分化を実名で記載している

北海道の地域医療構想では、深川地域(北空知区域)における病棟単位の機能分化を実名で記載している

 

 また沖縄県の北部区域では、現在、急性期医療の中心的な役割を担っているが、規模が中程度の▼県立北部病院▼北部地区医師会病院—を再編・統合し、地域医療の中核的な機能を担うような病院の設置に向けた検討を行うことを示しています。

 青森県や岐阜県では「病院単位の機能分化」計画が示されていますが、北海道では「病棟単位の機能分化」計画となっている点に注目が集まります。相澤孝夫構成員(日本病院会副会長)は、「1つの病院にはさまざまな機能の病棟があるが、病院単位でイメージがつけば、住民も医療機関も困る。『この病院は急性期病院』などと決めることはやめてほしい」と強調しており、北海道の事例は、この指摘にも応える内容と言えそうです。今後の調整会議論議において、大きな示唆を与える資料となるでしょう。

 
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