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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

公的病院などの役割、地域医療構想調整会議で「明確化」せよ—地域医療構想ワーキング

2017.11.21.(火)

 公的病院などが地域で果たすべき役割は必ずしも明確になっていないことを踏まえ、▼病床稼働率▼紹介・逆紹介率▼救急対応状況▼医師数▼経営に関する情報▼地域医療介護総合確保基金を含めた各種補助金の活用状況—などを地域医療構想調整会議で共有した上で、個別の「公的医療機関等2025プラン」の確認を徹底する。仮にプランに地域医療構想との不整合がある場合には修正を求める—。

 11月20日に開催された地域医療構想ワーキンググループ(医療計画の見直し等に関する検討会の下部組織以下、ワーキング)で、こういった考えが固まりました(関連記事はこちらこちら)。厚生労働省は、こうした点も含めて、「地域医療構想調整会議を進めるに当たり、都道府県は何をしなければならないのか」という考え方を整理し、近く取りまとめる方針です。

11月20日に開催された、「第9回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

11月20日に開催された、「第9回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

調整会議を円滑かつ効果的に進めるため、都道府県は何をすべきか

2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となるため、医療(特に回復期・慢性期)・介護ニーズがこれから飛躍的に高まります。このため、地域における医療提供体制の再編(機能分化・連携の強化)が必要となり、都道府県は「2025年における高度急性期、急性期、回復期、慢性期の機能別の必要病床数」などをまとめた地域医療構想を策定しています。いわば「2025年における医療提供体制像」に当たるものです。

一方で、一般病床・療養病床を持つすべての病院・有床診療所は「自院の病棟が、高度急性期、急性期、回復期、慢性期のどの機能を担っているのか、また将来担うことになると考えているのか」を毎年、都道府県に報告しなければいけません(病床機能報告)。

地域医療構想の実現に向けた議論が、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で進められます。調整会議の進め方は、これまでにもワーキングで議論されてきましたが、厚労省は、「都道府県が何をしなければいけないのか」「どういう点から検討していけばよいのか」などがより明確になるよう、これまでのワーキングなどの議論を整理する考えを示しています。地域医療構想の実現・達成に向けては、都道府県が医療機関などの関係者と十分に連携することが重要で、そのための「道筋」例を示すものと言えます(関連記事はこちら)。

毎年度、個別病院が地域で果たす役割と、4機能ごとのベッド数を確認していく

 11月20日のワーキングでは、厚労省から「議論の整理」案が提示されました。名称通り、これまでのワーキング論議をまとめたものですが、改めてポイントを眺めてみましょう。

 骨太方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017)では、地域医療構想の達成・実現に向けて「個別病院名や機能転換する病床数などの具体的な対応方針」(以下、対応方針)を地域ごとに策定するよう求めています。厚労省は、この対応方針の中に、2025年における役割・医療機能ごとの病床数について合意を得た全医療機関の▼2025年を見据えた役割▼2025年における機能ごとの病床数—を包含することを求めています。極めて詳細に、個別医療機関の名称・機能ごとの病床数を記載した「地域医療提供体制像」を策定するイメージで、都道府県は「毎年度」、この対応方針を策定することが求められます。

改革プランをベースに、公立病院の役割とベッド数を協議していく

 対応方針策定の前提に、「医療機関の合意」が必要です。例えば民間のA病院に「貴院の病床構成は高度急性期を●床、急性期を●床とします」などの指示を与えることは法制度上も不可能で、また各医療機関が質の高い医療を提供するためには「合意」に基づく機能分化が必須となります。

 ただし、地域の医療機関の機能を一度に議論することは難しいため、厚労省はまず(1)公立病院(2)公的病院等(3)その他の医療機関—の順で、機能分化に向けた議論を進めることを提案しています。公立病院や公的病院などには、救急や周産期などいわゆる政策医療を提供することが求められており、地域によっては「基幹的な役割」を担うケースも多いことから、まず公立病院・公的病院などの機能を明確にすることが、効率的な議論につながると考えられるのです。

まず(1)の公立病院には「新公立病院改革プラン」(新改革プラン)の策定が義務付けられており、これを踏まえた対応方針(どういった機能を持ち、各機能の病床数はどの程度とするのか)を協議することが求められます。

前述のように、公立病院には▼山間へき地・離島などでの一般医療提供▼救急・小児・周産期・災害・精神などの、いわゆる不採算医療提供▼がん・循環器など、民間では限界のある高度・先進医療提供▼研修実施などを含む広域的な医師派遣拠点機能—などが求められますが、地域の状況を踏まえて「なお、これらを公立病院が提供する必要があるか」を確認するよう厚労省は求めています。

公的病院の機能は必ずしも明確でない、2025プランベースに明確化を

(2)の「公的病院等」には、▼公的医療機関(日本赤十字社、社会福祉法人恩賜財団済生会、厚生農業協同組合連合会、北海道社会事業協会が開設する医療機関、ただし公立病院を除く)▼医療法第7条の2第1項第2号から第8号に掲げる者(共済組合、健康保険組合、地域医療機能推進機構、全国健康保険協会)が開設する医療機関▼その他の独立行政法人(国立病院機構、労働者健康安全機構)が開設する医療機関▼地域医療支援病院▼特定機能病院—が含まれます。救急医療などを担う医療機関では今年(2017年)の9月までに、そうでない医療機関では12月までに「公的医療機関等2025プラン」(2025プラン)を策定することが求められます(関連記事はこちら)。個別病院ごとに「地域の課題」「地域における自院の役割」「病床稼働率などの数値目標」を定めるもので、10月末時点で、日赤病院20施設、済生会63施設、国立病院機構91病院などで2025プランが策定されています。

公的医療機関等2025プランの策定状況(2017年10月末時点)

公的医療機関等2025プランの策定状況(2017年10月末時点)

 
2025プランは、地域医療構想の達成・実現を目指すものですが、厚労省は「公立病院に比べて、公的病院等では機能が必ずしも明確になっていない」と指摘し、調整会議で「機能・役割の明確化」を図るよう強調しています。

また、公立病院や公的病院等では、「補助金などの財政補てん」や「税制上の優遇」がなされている点も勘案し、▼病床稼働率▼紹介・逆紹介率▼救急対応状況▼医師数▼経営に関する情報▼地域医療介護総合確保基金を含めた各種補助金の活用状況—などを地域医療構想調整会議で共有した上で、個別「新改革プラン」「2025プラン」の確認を徹底することを求めています。

公的病院等では補助金などの財政補填が行われているほか、税制上の優遇がなされている

公的病院等では補助金などの財政補填が行われているほか、税制上の優遇がなされている

 
ところで、公立病院・公的病院等の役割は全国一律に決めることはできません。例えば、医療資源が豊富な都市部に設置されている公的病院等であれば、他院との機能分化を進め高度急性期や急性期に特化することも可能ですが、医療資源の少ない地域に唯一存在するような公立病院には、高度急性期から回復期、慢性期に至る総合的な医療提供機能が求められます。11月20日のワーキングでは、竹中賢治参考人(全国自治体病院協議会常務理事、福岡市立病院機構理事長兼福岡市民病院長、邉見公雄構成員:全国自治体病院協議会会長の代理出席)がこの点を踏まえ「全国一律ではなく、地域ごとに役割・機能を勘案していく」ことを強く求めました。他の構成員もこの点に賛同しています。

 
 これらに次いで、(3)の「その他の医療機関」の役割を議論していくことになりますが、 各医療機関が「自院の等身大の姿」を認識した上で、「地域における自院の役割」を明確にし、それを調整会議に持ち寄って、機能分化に向けた率直な議論を行うことが期待されます。このため、厚労省は、公立病院・公的病院等だけでなく、その他の医療機関(例えば社会医療法人など)にも、地域における役割などを明確にした改革プランの策定を期待しているようです(現時点では義務ではない)。

 
 なお、都道府県は、改革プランや2025プランなどから「過剰な機能に転換しようと考えている」医療機関を発見した場合には、▼調整会議への出席▼転換の理由説明—を求め、必要があれば「他の機能への転換命令や要請」などを行うことになります。

地域医療構想と不整合な病院、是正を求めることが都道府県の重要な役割

 さらに都道府県の重要な役割として、次のような点があげられます・

▼休眠病棟(すべての病床が稼働していない病棟)を持つ医療機関を発見した場合には、▼稼働していない理由▼今後の運用見通し—などの説明を求め、病棟維持の必要性が乏しい(診療実績や医療需要動向を踏まえ、調整会議で十分に議論する)場合には「病床数削減命令や要請」などを行う

▼新たに病床を整備する予定の医療機関を発見した場合には、開設許可を待たずに▼病床整備計画と必要病床数の関係▼新設される病床の機能と地域医療構想との関係▼雇用計画や設備整備計画の妥当性—などの説明を求め、例えば「過剰な機能への新規病床整備」などが分かれば、開設許可への条件付与(不足している機能の病床整備のみ認めるなど)、条件に従わない場合の是正勧告などを行う

▼個別医療機関ごとに、各機能の診療実績を提示する。例えば、高度急性期であれば▽幅広い手術の実施状況▽がん・脳卒中・心筋梗塞などへの治療状況▽重症患者への対応状況▽救急医療の実施状況―など、回復期であれば▽急性期後の支援・在宅復帰への支援の状況▽疾患に応じたリハビリ・早期からのリハビリの実施状況▽市町村やケアマネジャーとの連携状―などを提示する。「明らかに疑義のある報告」(外科病棟で高度急性期と報告しながら、手術を行っていないなど)については、調整会議で妥当性を確認する(関連記事はこちらこちら

 
 このほか「調整会議の資料な議事録などの、可能な限りの情報公開」なども都道府県の重要な役割となります。

 こうした「議論の整理」は次回会合(12月13日予定)でとりまとめられ、年明け早々にも親組織である「医療計画の見直し等に関する検討会」に報告される見込みです。そこでの了承を経て、都道府県の担当者に充てて情報提供され、調整会議での「より円滑かつ効果的な議論」のベースとなることが期待されます。

 
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