公的病院や地域医療支援病院、改革プラン作成し、今後の機能など明確に—地域医療構想ワーキング(1)
2017.7.19.(水)
日赤や済生会などの公的病院、国立病院、地域医療支援病院、特定機能病院などは、▼自院が地域で担う役割など▼今後提供する医療機能(4機能ごとの病床の在り方や診療科などの見直し方向)▼今後提供する医療機能に関する具体的な数値目標(診療実績や地域連携、経営関連項目)―などを記載する「公的医療機関等改革プラン」(仮称)を近く策定し、地域医療構想調整会議に報告し、地域医療構想と齟齬があれば改革プランを修正することとする—。
19日に開催された地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織以下、ワーキング)では、このような方針を了承しました。厚生労働省は近く、改革プラン作成のためのガイドラインをまとめ、公的医療機関などに通知する考えです。
公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院などが改革プランを作成
2025年における地域の医療提供体制を描いた地域医療構想(高度急性期・急性期・回復期・慢性期などの病床数などを明示)を実現するために、地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で機能分化・連携の促進に向けた議論が進められていますが、厚労省は、まず▼救急・災害医療などの中心的な医療機関▼公的医療機関や国立病院▼地域医療支援病院・特定機能病院—などが担う医療機能を固めることから初めてはどうかとの考え方を示しています。まず地域の中核となる医療機能をどの病院が担うのかを固め、次いで他の医療機関がそれらとどう連携し、機能分担していくことが近道と考えられるためです。
このうち公立病院については、総務省が2015年度または16年度中に「新公立病院改革ガイドライン」に沿った改革プラン(新公立病院改革プラン)を策定することが求めており、地域医療構想と、各公立病院の役割とを両睨みしながら、機能分化に向けた議論を進めていくことになります(関連記事はこちら)。
この点についてワーキングや、親組織である「医療計画等の見直しに関する検討会」などでは、「公的病院も、地域において重要な役割を果たすことが期待されている。公立病院と同様に、今後の機能などを明確にした改革プランを作成すべきではないか」との指摘が出されていました。例えば、赤十字病院や済生会病院などです。
厚労省はこうした指摘を踏まえ、公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院など(まず機能分化に関する議論を始めることが妥当な医療機関)においても「改革プラン」を作成してもらう方針を固め、ワーキングに提案しました。
改革プランの作成が求められるのは、▼公的医療機関(日本赤十字社、済生会、厚生農業協同組合連合会などが開設する医療機関)▼共済組合、健康保険組合、地域医療機能推進機構(JCHO)が開設する医療機関▼国立病院機構、労働者健康安全機構が開設する医療機関▼地域医療支援病院▼特定機能病院—です。地域医療支援病院や特定機能病院も地域で重要な役割を果たすことが期待されるとともに、機能分化に向けて都道府県知事などが強力な権限行使を行えることから、作成対象に含まれたものです。個別医療機関が地域の状況を十分に踏まえた改革プランを作成することが重要であり、例えば「●●団体で1つの改革プラン」とすることは好ましくありませんし、また後述するように「修正が求められる」可能性があります。
なお、これら以外の、例えば社会医療法人の開設する医療機関などには改革プラン作成義務こそありませんが、厚労省は「自主的に今後の方針を検討し、地域の関係者との議論を進めることが望ましい」との考えを示しています。
改革プランには今後の機能や、診療実績に関する数値目標なども記載
改革プランには、▼基本情報(医療機関名や開設主体など)▼現状と課題(構想区域および自院、それぞれの現状と課題)▼今後の方針(自院が今後、地域で担うべき役割など)▼具体的な計画(自院が今後提供する医療機能と、その具体的な数値目標)―を記載することになります。
具体的な計画のうち「自院の今後提供する医療機能」については▼4機能ごとの病床の在り方▼診療科の見直し―など、「具体的な数値目標」については▼病床稼働率、手術室稼働率などの診療実績▼紹介率、逆紹介率など地域連携の状況▼人件費比率などの経営関連項目—などの記載が求められます。
このうち経営関連項目について今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)からは「公立病院では経営の厳しさを背景に改革プラン作成が求められ、経営関連の目標値などを記載することになっている。しかし今般の公的病院の改革プランは地域医療構想実現を目指すもので、経営関連の目標値設定は自由記載などとすべきではないか」との指摘がありました。公立病院の改革プランは、そもそもが経営改善のためのプランであり、そこに「地域医療構想の実現」という要素が後から追加された(新改革プラン)という経緯があるためです。
しかし、中川俊男構成員(日本医師会副会長)や伊藤伸一構成員(日本医療法人協会会長代行)らは「公的病院も地域医療構想実現に向けたプレイヤーである。経営状況が厳しいのであれば出処進退を明らかにする必要がある」と述べ、経営関連の目標値設定は「全公的病院に義務付けるべき」との考えを示しました。
また厚労省医政局地域医療計画課の佐々木健課長は、「調整会議では地域医療介護総合確保基金の配分に関する議論も行う。公的病院が基金活用を考える場合には、その経営状況も重要な検討要素となる」と、目標値設定の重要性を説いています。どのように目標値を設定し、それを改革プランに記載するかなどは、今後の厚労省通知(ガイドライン)を待つ必要があります。
調整会議の協議と齟齬があれば、改革プランは修正が求められる
改革プランの策定に当たっては地域の関係者(連携医療機関や住民など)の意見も踏まえて、「構想区域ごとの医療提供体制と整合的」な内容とすることが重要です。改革プランは調整会議に提示することが求められ、仮に調整会議の協議の方向と齟齬が生じた場合には「策定した改革プランを見直す」ことを厚労省医政局地域医療計画課・在宅医療推進室の伯野春彦室長は明らかにしています。
ここで公的病院は、いつまでに改革プランを作成し、調整会議に提示しなければならないのかが気になります。厚労省は、秋の調整会議(10-12月)から「次年度の地域医療介護総合確保基金の活用・配分に関する議論を始める」よう求めており(関連記事はこちらとこちら)、仮に「来年度(2018年度)分の基金活用の前提として、改革プランの策定が求められる」こととなれば、今秋(2017年9月頃)には改革プランを策定しなければなりません。この点について伯野在宅医療推進室長は「各公的病院には、急ぎ改革プランを作成してもらう」と述べるにとどめており、具体的な期限は今後、調整されることになります。
厚労省は、近く改革プラン作成に向けた「ガイドライン」を通知する構えです。
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