本年度(2017年度)の病床機能報告から、患者数の報告対象期間を1年間に延長—地域医療構想ワーキング(3)
2017.6.5.(月)
本年度(2017年度)の病床機能報告から、▼入院前・退院先の場所別の患者数▼退院後に在宅医療を必要とする患者数―について、報告対象期間を1年間(現在は1か月間)に延長する。また非稼働病床がある場合には、ベッド数と併せて「非稼働の理由」についての報告も求める—。
2日に開催された地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織以下、ワーキング)で、このような見直し内容が了承されました(関連記事はこちらとこちら)。
目次
本年度(2017年度)から病床機能報告において、5点を見直す
病床機能報告制度は、一般病床・療養病床を持つすべての病院が「自院の病棟が▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—のいずれの機能を担っていると考えているか」などを毎年、都道府県に報告するものです。あわせて、各病棟の人員配置や医療提供内容なども報告し、地域医療構想の実現に向けた重要データとなります。
厚生労働省は2日のワーキングにおいて、本年度(2017年度)の病床機能報告から次のような見直しを行ってはどうかと提案しました。ワーキングでは特段の反対意見は出ておらず、親組織の了承などを経て、正式に確定します(8月の報告マニュアルに記載される)。
(1)「人員配置」に関して▼医師数▼歯科医師数▼管理栄養士数―などを追加する
(2)「6年が経過した日における病床の機能」に関して、転換先の施設類型(介護医療院、介護老人保健施設)を把握する項目を追加する
(3)▼入院前・退院先の場所別の患者数▼退院後に在宅医療を必要とする患者数―について、報告対象期間を1年間(現在は1か月間)に延長する
(4)非稼働病床がある場合には、ベッド数と併せて「非稼働の理由」についての報告も求める
(5)医療機関の設置主体、特定機能病院や地域医療支援の病院の承認の有無についても報告を求める
在宅医療体制考える上で、療養病棟における患者動向の把握が重要
地域医療構想では、高度急性期や急性期など機能別の必要病床数だけでなく、「在宅医療や介護施設などで対応する患者数」なども見積もることになっています。例えば「療養病棟に入院する患者のうち、医療区分1の70%」や「一般病床に入院する患者のうち、1日当たりの医療資源投入量がC3(175点)未満の患者」などは、在宅医療などへの移行を見込むことになります(関連記事はこちらとこちら)。
一方で、病床機能報告では「ある病棟の退院患者が、在宅に復帰するのか(復帰するとして在宅医療が必要なのか、不要なのか)、あるいは他院に転院するのか、介護施設に入所するのか」などの実態を調べます。このデータと、上記の地域医療構想における「在宅医療や介護施設などで対応する患者数」などを突き合わせ、在宅医療提供体制などの整備計画に結びつけることになります(関連記事はこちらとこちら)。
ところで、現在の病床機能報告では「毎年6月の1か月間」の▼新規入棟患者数(院内の他病棟からの転棟か、家庭からの入院か、他院からの転院かなど別)▼退棟患者数(院内の他病棟への転棟か、家庭への退院か、他院への転院か、介護施設への転院かなど別)▼退院後の在宅医療が必要な患者数(在宅医療提供を自院が行うのか、他施設が行うのかなど別)—を報告することになっています。しかし、療養病床では全国ベースの平均在棟日数が300日を超えており、「1か月間」では患者の動向が見えにくく、「療養病棟からの退院患者が、在宅に復帰するのか(復帰するとして在宅医療が必要なのか、不要なのか)、あるいは他院に転院するのか、介護施設に入所するのか」などの実態把握が難しいのです。
そこで今般、上記(3)のように報告対象期間を「1年間」(前年の7月1日から本年の6月30日まで)に見直すことが提案されました。もっとも医療機関側の負担にも配慮し、▼本年度(2017年度)は「可能な医療機関に限って追加的に報告してもらう▼来年度(2018年度)から1年間の報告を原則とする—都の猶予規定が置かれています。
病棟単位で非稼働となっている場合、ベッド数にあわせて「理由」も報告
また病床機能報告では、現在の正確な「医療提供体制」を把握するために、「許可病床数」と「7月1日現在で『過去1年間、患者の収容を行っていない』病床数」(非稼働病床数)を報告することになります。
この点について、本年度(2017年度)の報告からは「病棟単位で稼働していない非稼働病床については、ベッド数と併せて『理由』の報告を求める」とこになります。
これは、地域医療構想の実現に向けて都道府県知事に付与されている権限の1つである「稼働していない病床の削減を要請・勧告(対民間医療機関)および命令(対公的医療機関)」の発動に向けた布石と言うことができそうです。単純に「稼働していないのでベッド数を削減せよ」とするのではなく、「こうした理由があるのなら、これらのベッドは稼働していないが維持を認める」という判断をすることになるでしょう。
2018年度報告に向け、慢性期・回復期の指標となる項目を研究
このほか、来年度(2018年度)の報告に向けて「回復期や慢性期の機能を見える化する項目」の検討などを進める方針も確認されました。
ただし各機能の指標を検討している今村知明構成員(奈良県立医科大学医学教授)は、「慢性期の指標を研究しているが、慢性期にある項目(例えば特定の薬剤の投与など)を付与すれば、急性期でもその項目の報告を求めることになり、急性期の負担が増してしまう」とコメントしており、的確な指標設定には相当の困難が伴いそうです(関連記事はこちら)。
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