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急性期病棟、「断らない」重症急性期と「面倒見のよい」軽症急性期に細分―奈良県

2017.10.27.(金)

 病床機能報告制度で「急性期」と報告している病院であっても、重症の患者を積極的に受け入れている病棟と、主に軽症患者を受け入れている病棟とあり、両者は今後進むべき道が異なるのではないか。そこを明確にするために、一定の基準を設けて前者は「重症急性期を中心とする病棟」、後者は「軽症急性期を中心とする病棟」として細分化した報告を求めている—。

 10月26日に開催された地域医療構想に関するワーキンググループ(医療計画等の見直しに関する検討会の下部組織以下、ワーキング)では、奈良県医療政策部長の林修一郎参考人から、こういった奈良県独自の取り組みが報告されました(関連記事はこちら)。「回復期機能」として報告された病床数と、「軽症急性期を中心とする病棟」として報告された病床数を合算すると、地域医療構想の回復期病床数と近い値になっています。

10月26日に開催された、「第8回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

10月26日に開催された、「第8回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

医療機関の再編・統合により、医師増や急性期度の増加などの効果も現れる

2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて後期高齢者となるため、今後、医療・介護ニーズが急速に高まり、現在の医療提供体制ではこれらに的確に対応できないと指摘されています。そこで医療機能の分化・連携の強化が重視され、その一環として2014年度から病床機能報告制度がスタートしました。一般病床・療養病床をもつすべての医療機関が、自院の病棟がそれぞれどのような機能(▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期)を持つのか(あわせて将来、どのような機能を持たせると想定しているのか)、各病棟の人員配置や診療実績などを都道府県に年1回報告するものです。

奈良県では「可住地面積が小さく、人口当たり医師数は全国平均に近い」にもかかわらず、医師不足感が強く、救急医療体制に遅れがあるといった課題があります。その背景には、中規模病院が多く「医師が散在してしまっている」ことがあるのではないかと林参考人は分析。その上で、(1)「重症患者を断らない」病院を絞り医療機能強化する(2)医療機能を絞った、在宅・介護(連携)機能を強化した「面倒見のよい」病院を整備する—という2つのアプロ―チで医療提供体制を整備していくことを決断しました。

そこで、全国的に「さまざまなタイプが混在している」ことが分かっている急性期病棟について、(1)(2)のいずれの機能を果たすべきかを模索するために、一定の基準(50床当たりの手術+救急入院件数が1日2件)を設け、これを参考に基準を超える病棟を「重症急性期を中心とする病棟」、そうでない病棟を「軽症急性期を中心とする病棟」と細分化して報告してもらう(いずれに該当するかは基準を目安・参考にして、病院が自身で判断)という独自の取り組みを行っています。

奈良県では、急性期と報告した病棟について、一定の基準を設けて「重症急性期病棟」と「軽症急性期病棟」に細分化した報告を求めている

奈良県では、急性期と報告した病棟について、一定の基準を設けて「重症急性期病棟」と「軽症急性期病棟」に細分化した報告を求めている

 
前者の「重症急性期を中心とする病棟」は、「断らない病院」を目指し、医療機能を強化していく戦略を採択します。この一環として、ある地域(南和地域)では3つの公立病院を▼1つの救急病院(急性期機能)▼2つの地域医療センター(回復期・慢性期)―に機能分化し、医療提供体制の再構築が行われました。急性期機能を担うこととされた病院(南奈良総合医療センター)に医師配置を重点化したところ、急性期機能や医師派遣機能の向上、若手医師への魅力向上などの効果が出ています。
奈良県の南和地域では3つの公立病院を再編統合し、1つの急性期病院と2つの回復期・慢性期病院とした

奈良県の南和地域では3つの公立病院を再編統合し、1つの急性期病院と2つの回復期・慢性期病院とした

病院の再編・統合により医師増員、急性期度の向上などの大きなメリットが得られる

病院の再編・統合により医師増員、急性期度の向上などの大きなメリットが得られる

 
医師の働き方改革が進められる中で、とくに「救急現場で、どのように負担を軽減していくか」が大きなハードルとなっています。病院の統合・再編によって、特定の病院に医師を重点配置すれば、1人当たりの負担は減少することが期待され、病院の再編・統合は「働き方改革」にも合致する方向と考えられそうです。

ただし林参考人は、地域の特徴(人口構成や地理特性など)に合わせた対策が必要であると指摘。例えば、人口が少なく基幹病院の機能が不足している地域では「病院の統合再編による急性期機能の強化」(事例)、人口が比較的多く、基幹病院が複数ある地域では「機能分化と集約」など、さまざまな対策が考えられます。厚生労働省に対して「地域医療構想の実現(後述)に向けて、地域のデータだけでなく、特性に合った課題解決策なども提示してはどうか」とも提案しています。

地域の様々な状況に合わせた対策をたて、地域医療構想の実現を目指さなければならない

地域の様々な状況に合わせた対策をたて、地域医療構想の実現を目指さなければならない

 
なお、「回復期」と報告された病床数と、奈良県独自の「軽症急性期を中心とする病棟」として報告された病床数を合算すると、地域医療構想の回復期病床数と偶然にも「近い値」になっていることも参考情報として紹介されました。しかしワーキングの中川俊男構成員(日本医師会副会長)は「回復期状態の患者は、高度急性期から慢性期の各病棟にいる。各都道府県が軽症急性期と回復期を併せて『回復期』と考えてもらっては困る」とコメントしています。

回復期と軽症急性期を合計すると、偶然にも「地域医療構想の回復期病床数」と近い値になった

回復期と軽症急性期を合計すると、偶然にも「地域医療構想の回復期病床数」と近い値になった

調整会議の開催状況にバラつきあるが、「意見交換会」を盛んに実施する地域も

ところで、各都道府県では2025年に▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期—のそれぞれの機能で必要となる病床数を試算した「地域医療構想」を策定しています。この構想と病床機能報告結果を突き合わせ、地域の事情を勘案しながら、地域の医療関係者などが集う地域医療構想調整会議(以下、調整会議)で「地域医療構想の実現」を目指していくことが求められています。

厚労省は「3か月に1回程度、調整会議を開く」よう都道府県に求めており、開催状況を調査しています。今年(2017年)4-6月の調整会議開催状況を見ると、▼136の地域医療構想区域(概ね2次医療圏、以下、構想区域)で150回開かれている▼個々の医療機関ごとの現状分析は341の構想区域で320件実施されている▼具体的な医療機関名をあげた議論は、公立病院について135病院、特定機能病院については8病院実施されている—ことなどが分かりました。

しかし都道府県別に見ると、調整会議を一度も開催していない自治体がある一方で、複数回開催している自治体もあり、バラつきがあるように見えます。ただし奈良県では調整会議自体は一度も開かれていませんが、意見交換会などは盛んに開かれています。奈良県の林参考人は「より多くの医療機関に参加してもらうため、より小さな地域ごと意見交換会を数多く開催している。もちろん最終的な議論は調整会議で行う」との見解を示しており、厚労省は「詳細に見ていかないと、実施状況の実態は見えない」と述べるにとどめています。

奈良県では、地域の多くの医療機関が参加する意見交換会が盛んに開催されている

奈良県では、地域の多くの医療機関が参加する意見交換会が盛んに開催されている

 
 
地域の医療提供体制を再構築するためには、自院だけでなく「他院の状況」などを把握しなければなりません。調整会議や意見交換会も積極的に活用し、「自院の戦略」を早期に立てる必要があります。

 

 

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