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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

標準的がん治療の実施率にバラつき、「胃がんへの術後S-1療法98.8%」「リンパ節転移乳がんへの術後放射線照射61.7%」など―国がん研究センター

2016.5.26.(木)

 がん診療連携拠点病院などにおいて、「高齢」などの理由があって標準治療を実施しなかったケースを除くと、ステージ1-3の非小細胞肺がんへの手術または定位放射線治療は99.2%、ステージ2、3の胃がんに対する術後S-1療法(抗がん剤)は98.8%と高い割合で実施されている一方で、乳がんの乳房切除後の腋窩リンパ節転移に対する術後放射線照射は61.7%にとどまるなど、バラつきもある―。

 国立がん研究センター(国がん)が26日、こういった調査結果を発表しました。

がん医療の均てん化、標準治療の実施率に加え「未実施の理由」などの調査も必要

 我が国のがん対策は、がん対策基本法に則って進められています具体的には、国が「がん対策推進基本計画」を定め(現在は2016年度までの第2期計画、17年度以降の第3期計画を策定中)ており、そこでは▽75歳未満のがん年齢調整死亡率の20%減少▽がんと診断されたとき時からの緩和ケア推進▽がん登録の推進▽小児がん対策の推進―などが重点項目に挙げられています(関連記事はこちらこちら)。

 ところでがん対策基本法では、「がん医療の均てん化の促進」を掲げており、これは「日本全国のどこに住んでいても、等しく適切ながん医療を受けられる」ことを意味しています。主に医療提供体制、つまりがん診療連携拠点病院の整備や医療従事者の育成などに注目が集まりますが、がん医療の内容に関する均てん化も重要なテーマとなっています。

 しかし、均てん化を評価する体制はまだ確立されていないのが実際です。

 そこで国がんは、「がん医療の内容に関する均てん化」を評価する体制を構築するため、今般、がん診療連携拠点病院などで、どの程度、標準治療が実施されているのかを調べました。調査対象は、がん診療連携拠点病院など232施設に入院する31万2381症例で、9つの標準治療(下表)をどの程度実施しているのかを見ています。

国がんが調査対象に選定した9つの標準治療の内容と対象患者

国がんが調査対象に選定した9つの標準治療の内容と対象患者

 調査の結果は下表のとおりで、「高齢」などの理由があって標準治療を実施していないケースを除くと、調査対象の9標準治療のうち6項目で実施率が9割を超えていますが、▽乳がんに対する乳房切除後の腋窩リンパ節転移例に対する術後照射は61.7%▽催吐高リスク化学療法前の予防制吐剤投与は71.7%(全がん種)▽外来麻薬処方時の便通対策は80.4%―と低い実施率に止まっています。

「高齢」などの理由があって標準治療を実施しないケースを除くと、ステージ1-3の非小細胞肺がんへの手術または定位放射線治療は99.2%の実施率だが、乳がんの乳房切除後の腋窩リンパ節転移に対する術後放射線照射は61.7%にとどまっている

「高齢」などの理由があって標準治療を実施しないケースを除くと、ステージ1-3の非小細胞肺がんへの手術または定位放射線治療は99.2%の実施率だが、乳がんの乳房切除後の腋窩リンパ節転移に対する術後放射線照射は61.7%にとどまっている

 

 こうしたバラつきについて、国がんでは「標準治療を実施するかどうかは、ステージ・全身状態などのほかさまざまな要素による判断されるので、解釈は困難」としています。

 さらに国がんは、均てん化の評価指標を構築し、診療の質を向上させるために、「標準治療未実施の理由」を詳細に調査・検討し、「適切な治療が行われていたかどうか」を評価することが重要と提言しています。例えば、実施率が低かった「乳がんの乳房切除後の腋窩リンパ節転移に対する術後放射線照射」について見てみると、未実施の理由として「転院」や「患者の希望」など、病院の責に帰すことが好ましくないものも一定程度存在しています。標準治療実施率の数字のみを単純比較は難しいことが分かります。

実施率が低かった「乳がんの乳房切除後の腋窩リンパ節転移に対する術後放射線照射」について見ると、85歳以上の高齢者では実施率が極めて低く、未実施の理由としては「転院」や「患者の希望」なども一定程度おり、標準治療実施率の数字のみを単純比較は難しいことが伺える

実施率が低かった「乳がんの乳房切除後の腋窩リンパ節転移に対する術後放射線照射」について見ると、85歳以上の高齢者では実施率が極めて低く、未実施の理由としては「転院」や「患者の希望」なども一定程度おり、標準治療実施率の数字のみを単純比較は難しいことが伺える

 なお、今年8月にはがん医療の均てん化を目指す「CQI研究会」が開催されます。全国のがん診療連携拠点病院がデータを持ち寄り、ベンチマークを行うことでがん医療の質向上を目指す研究会で、分析はGHCが担当しています。

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