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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

「正しいがん医療情報の提供」、第4期がん対策推進基本計画の最重要テーマに―がん対策推進協議会

2018.11.26.(月)

 現在の「第3期がん対策推進基本計画」の進捗状況を評価する指標について、例えば「がん予防」に関しては、従前から用いている「がんの年齢調整死亡率」や「喫煙率」などに加え、新たに「がんの年齢調整罹患率」なども用いてはどうか。また「がん医療」に関しては、新たに「がんの5年生存率」や「がんゲノム医療中核拠点病院等」の整備状況、「緩和ケアチーム」の設置状況なども用いてはどうか―。

 11月21日に開催された「がん対策推進協議会」(以下、協議会)でこういった方向が概ね固まりました。協議会では、当面「指標の設定」に関する議論を集中的に行います。

 また協議会では「正しい情報の提供」についても議論が行われ、山口建会長(静岡県立静岡がんセンター総長)は「第4期計画の最重要事項になる」と見通しています。

11月21日に開催された、「第71回 がん対策推進協議会」

11月21日に開催された、「第71回 がん対策推進協議会」

 

第3期がん対策推進基本計画の「中間評価」に向け、指標設定を集中的に実施

 我が国のがん対策は、「がん対策推進基本計画」に則って実施されています。現在、第3期計画(2017年10月、2018年3月に閣議決定)が稼働しはじめたところですが、後に、第3期計画の効果などを踏まえて、次の第4期計画(2024年度スタート予定)につなげることになります。ただし第3期計画の終了を待って効果等を評価していたのでは、第3期計画と第4期計画との間に隙間が生じてしまいます。

そこで、第3期計画の中間年となる2020年度に「中間評価」を行い、その結果を踏まえて第4期計画策定に向けた議論をしていくのです(医療計画の中間見直しとも歩調を合わせることになる)。
がん対策推進協議会 180830の図表
 
協議会では、この「中間評価」において、「どういった指標を用いて、第3期計画の効果等を評価するか」という議論を開始しています(関連記事はこちら)。11月21日の会合では、第3期計画の重点分野のうち、(1)がん予防(2)がん医療の充実(の一部)—について、中間評価の指標を議論しました。今後、「がん医療の充実」や「がんとの共生」「基盤整備」などについて順次、評価指標設定論議を行っていきます。

第3期がん対策推進基本計画の概要

第3期がん対策推進基本計画の概要

 
まず(1)「がん予防」に関する評価指標を見てみましょう。

従前から用いられている、▼がんの年齢調整死亡率▼がん種別の年齢調整死亡率の変化(胃がん・大腸がん・肺がん・子宮頸がん・乳がん・肝がん)▼成人喫煙率▼未成年喫煙率▼ハイリスク飲酒者の割合▼運動習慣のある者の割合▼B型・C型肝炎ウイルス感染率▼B型・C型肝炎ウイルス検査受検率▼がん検診受診率—などのほか、新たに▼がんの年齢調整罹患率▼がん種別の年齢調整罹患率の変化(胃がん・大腸がん・肺がん・子宮頸がん・乳がん・肝がん)▼精密検査受診率—なども評価指標に加える方向が確認されています。委員からは「HPVワクチンの接種率」を指標に加えるべきとの指摘も複数あがっています。
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ところで「がん検診」については、▼対策型検診(集団全体の死亡率減少を目指して実施する検診、市町村の実施する住民検診が該当)▼任意型検診(対策型以外のもの、職域で行う検診など)—に分類されます。後者の職域検診については、「精度管理」などの点で課題があり、今春(2018年)に「職域におけるがん検診に関するマニュアル」が定められました。これらの遵守状況なども踏まえ、職域がん検診の評価について、今後、検討していくことになります(第3期計画の中間評価では指標を設定しない)。

また前者の住民検診については、実施状況を指標として評価することになりますが、山口会長や松田一夫委員(日本消化器がん検診学会理事、福井県健康管理協会副理事長)らから「実施状況の定義を明確にし、地域間の比較を可能とすべき」との指摘が出されました。例えば「がん検診受診率」1つをとっても、地域によって計算方法(分子、分母の設定方法)が必ずしも統一されていないといいます。今後の重要課題の1つと言えるでしょう。

多くの患者は、「正しい情報」にたどり着く前に、「怪しげな情報」を入手してしまう

 また(2)「がん医療の充実」については、項目が多いため、11月21日の協議会では▼がんゲノム医療▼手術療法、放射線療法、薬物療法、免疫療法▼チーム医療▼がんリハビリテーション▼支持療法—に関する評価指標を議論し、「AYA世代のがん」や「希少がん」などについては次回会合で議論することになりました。

 評価指標としては、従前から用いられている▼がんの年齢調整死亡率▼納得のいく治療選択ができたがん患者の割合▼標準的治療の実施割合▼がん診療連携拠点病院における5大がん患者の術後30日以内の死亡率▼外来放射線照射診療料をとっている拠点病院の割合▼がん薬物療法専門医が配置されているがん診療連携拠点病院の割合▼リハビリテーション専門医が配置されているがん診療連携拠点病院の割合—などに、新たに、例えば次のような項目を加える方針が固まりました。「ゲノム医療」などは第3期計画から盛り込まれたものであり、また医学・医療の急速な進展をも踏まえたものと言えるでしょう。

【がん医療全体】「がんの5年生存率」、「患者によるがんの診断・治療全体の総合的評価」

【ゲノム医療】「がんゲノム医療中核拠点病院等の数」、「がんゲノム医療中核拠点病院等における診療従事者」(遺伝医学に関する専門的な知識・技能を有する医師数や遺伝医学に関する専門的な遺伝カウンセリング技術を有する者の数など)、「がんゲノム医療中核拠点病院等における診療実績」(パネル検査を受けた患者数、遺伝カウンセリングを実施した患者数)、「がんゲノム情報管理センターに登録された患者数」、「ゲノム情報を活用したがん医療についてがん患者が必要な情報を取得できた割合」など

【科学的根拠を有する免疫療法】「臨床研究・先進医療の枠組みで免疫療法を実施している拠点病院の割合」、「科学的根拠を有する免疫療法について国民が必要な情報を取得できている割合」

【チーム医療の推進】「専門チームを整備し、がん患者に関しコンサルテーションを行っている拠点病院の割合」(緩和ケア、糖尿病、感染症、栄養サポート、口腔ケア、褥瘡等)、「緩和ケアチームを設置している病院の割合」など

【支持療法の推進】「支持療法に関する標準診療を実施された患者の割合」、「支持療法に関する標準診療を実施している医師の割合」、「支持療法に関するガイドラインの数」、「治療による副作用の見通しを持てた患者の割合」、「痛みに関する相談ができた患者の割合」、「外見の変化に関する相談ができた患者の割合」など
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 このうち「科学的根拠を有する免疫療法について国民が必要な情報を取得できている割合」に関連して、「国民への正しい情報提供」に関する熱い議論が行われました。轟浩美委員(希望の会理事長)は、「多くの一般国民には、正しいがん治療の情報が届く前に、怪しげな科学的根拠のない治療や民間療法に関する情報が届いてしまう」と指摘。山口会長も「がんと診断されると、周囲が民間療法などを勧めるケースも少なくない」ことを紹介し、「正しい情報の提供」が第4期計画において最重要テーマとなる考えを示しました。

 また間野博行委員(国立がん研究センター理事・研究所長、がんゲノム情報管理センター長)は、がんゲノム医療が推進する中で、がんと遺伝に関する誤った情報が流布(例えば「すべてのがんが遺伝する」と考え、不当な差別を招くなど。多くのがんは遺伝しない旨を説明)してしまうことを危惧し、「正しい情報の充実、情報の区分け」などを検討することを提案しています。

 さらに轟委員は、画期的な抗がん剤であるニボルマブ製剤(オプジーボ)の開発に携わった京都大学の本庶佑特別教授に対するノーベル医学・生理学賞の授与が決まったことが報道されたことに関連し、便乗して「怪しげな科学的根拠のない免疫療法」がさらに跋扈することを懸念しています。

例えば、国立がん研究センターをはじめ「正しい情報」が発信されているサイトはありますが、不確かな情報も多く(さらに検索すると上位にあがってきてしまう)、「正しい情報」が埋もれてしまいます。このため多くのがん患者は、正しい情報にたどり着く前に、「怪しげな情報」に惑わされてしまうのです。情報が溢れる中で、「正しい情報」をどう伝えるか、医療全般に関する最大の課題と言えそうです(関連記事はこちらこちらこちら)。

 
 
 なお、「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、DPCデータをもと「がん医療の質向上」に向けた研究を行っています(グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンがデータ分析等を担当)(関連記事はこちら)。

 
 
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