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新たな地域医療構想の実現に向け、現場への押し付けにならないように配慮し「医療機関機能」の客観的基準など検討していく—厚労省

2025.6.27.(金)

新たな地域医療構想の実現に向けた動きが各地域で進むよう、現場への押し付けにならないように配慮したうえで、例えば「新たな医療機関機能」(急性期拠点機能など)の客観的な基準を示していきたい—。

自由民主党・公明党・日本医師の会が「11万床削減」方針を打ち出していることも踏まえ、「病床数の適正化」を考えている多くの病院の要望にしっかり応えられるように、補助事業の拡大なども検討していきたい—。

厚生労働省医政局地域医療計画課の中田勝己課長が6月24日、日本慢性期医療協会の総会で特別講演を行い、こうした考えを述べました。今後の総合的な医療提供体制改革にさらに注目が集まります。

6月24日に特別講演を行った、厚生労働省医政局地域医療計画課の中田勝己課長

総合的な医療提供体制改革に向け、医療法改正などを進める

本年度(2025年度)には団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護ニーズが急増していくため各地域で地域医療構想の実現が求められています。

さらに2025年から2040年にかけて、高齢者人口そのものは大きく増えない(ただし高止まりしたまま)ものの、▼医療・介護の複合ニーズを抱えることの多い85歳以上の高齢者比率が大きくなる▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」ものの、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が増加する一方で、若者が減少していく」など区々です。

そこで、2040年頃までを見据えた「医療提供体制の新たな設計図」(新たな地域医療構想)が求められています。



また、従前より「医師の偏在」(地域偏在、診療科偏在、病院-診療所間の偏在)が指摘され様々な手立てが取られていますが、十分な解決には至っていません。生産年齢人口が減少する中で、いわゆる「医療保険あって、医療サービスなし」という事態が生じかねないため、「医師偏在の是正」が求められます。



さらに、「効果的かつ効率的な医療提供」を行うためには、患者の診療情報を様々な形で活用する医療DX(患者のレセプト・電子カルテ情報を全国の医療機関で閲覧可能とする、患者の情報を集積・解析して新規の治療法開発などにつなげる)が極めて重要となってきます。

中田地域医療計画課長は、こうした状況を踏まえ、我が国の医療提供体制確保のベースとなる医療法について、主に次のような内容を盛り込んだ改正法案を国会に提出し、2025年6月24日時点で審議中であることを詳説しました。

▽新たな地域医療構想
→地域医療構想を入院だけでなく、外来、在宅、医療・介護連携なども含めた将来の医療提供体制全体の将来設計図(医療計画の上位概念)として位置付け、これまでの「病床機能報告」に加えて、新たに「医療機関機能」の報告を求める(関連記事はこちら

▽総合的な医師偏在対策
→医師偏在の是正に向けて▼都道府県知事による「重点的に医師を確保すべき区域」の設定▼当該区域の医療機関に勤務する医師へのインセンティブ付与(保険者からの拠出による手当て)▼外来医師多数区域に新規に無床クリニックを開設する場合の対応強化▼「保険医療機関の管理者」に対する「保険医としての一定経験要件」設定—など総合的な対策を図る(関連記事はこちら

▽医療DXの推進
→電子カルテ情報を医療機関間で共有可能とする「電子カルテ情報共有サービス」の法制化、電子カルテ情報共有の必要性が高い特定機能病院や地域医療支援病院、救急病院などに「標準化した情報の授受を可能とする電子カルテを整備(既存システム改修)し、電子カルテ情報共有サービスに参加する」ことの努力義務化、医療・介護情報の2次利用推進に向けた「医療・介護関連データベースからの仮名化情報」提供、社会保険診療報酬支払基金の改組などを行い、医療・介護DXを推進する環境を整える(関連記事はこちらこちらこちら

▽オンライン診療の法制化
→▼「オンライン診療を行う医療機関」を医療法上明確化し、届け出などを義務付ける▼特定多数人にオンライン診療を提供する施設を「特定オンライン診療受診施設」として医療法上明確化し、オンライン診療を行う医療機関による監督等を求める—ことなどにより、オンライン診療の「適正な拡大」を図る(関連記事はこちら

▽美容医療の適正化
→▼美容医療を行う医療機関等の報告・公表の仕組みの導入▼保健所等による立入検査や指導のプロセス・法的根拠の明確化▼関係学会によるガイドライン策定▼オンライン診療・広告の適正性確保—などを進める(関連記事はこちら



また、中田地域医療課長は「診療科の医師偏在是正」、とりわけ「外科医不足」にも注目し、「非常に難しい課題である」としたうえで、例えば▼若手医師に外科領域を選択してもらえるような環境整備(例えば「手当」等の処遇改善を行うことが大前提となる)▼長時間労働の是正・配慮(患者の医療アクセスに配慮したうえでの医療機関の集約化、シフト制の導入など)—について関係学会とも連携して対策を詰めていく考えを明らかにしています(関連記事はこちら)。



さらに中田地域医療計画会長は、総会に参画した日慢協会員との質疑応答の中で次のような見解も示しました。

▽勤務医の「仕事」と「生活」との両立を十分に考えなければ、医療提供体制の持続可能性がなくなってしまう

▽医師の偏在対策の一環として「重点的に医師を確保すべき区域への医師派遣」などが検討されているが、その仕組みについても「1人の医師を地方にいったきり」とするのでなく、「ローテーションを組んで、多くの医師が短期間ずつ地域に赴く」といった形とし、派遣される医師への評価の在り方なども十分に検討していく

▽新たな地域医療構想の実現に向けて「具体的に地域での議論が進む」ような仕組みを示していく。その際、「医政局で地域医療構想の姿を示し、そこに保険局による診療報酬での評価を組み合わせる」ことで車の両輪が揃う

▽今後検討する地域医療構想策定ガイドラインについて、ガチガチなものとしたのでは地域医療の現場に合わない部分が出てきて本末転倒になってしまうため、柔軟性にも配慮して作成していく。また新たに報告を求める「医療機関機能」について、定性的な基準では「議論をしただけ」で終わってしまう。押しつけにはならないように配慮して、実際に機能分化が進むような「客観的な定量的な基準」を示す必要がある

「医療需要の急激な変化を受けて病床数の適正化を進める医療機関」に対し、1床あたり410万4000円の助成を行う【病床数適正化支援事業】については、想定を超えた多くの病院から申請があり、1次内示の段階では十分に要望に応えられなかった。病院経営が厳しさを増し、「少しでも運営資金を得たい」との思いから、多くの病院が貴重なベッドの削減を検討しているものと考えている。自由民主党・公明党・日本維新の会の3党で、新たな地域医療構想がスタートする2027年4月までに「病院病床11万床を削減」することを合意しており、こうした点も踏まえて、「病床数の適正化が必要な病院」をしっかり支援できるように考えていく

▽新たな地域医療構想の実現に向けて、医療現場は国公立・民間などの設立主体の枠を超えて「地域の状況を踏まえた機能分化・連携の強化」を議論してほしい。いずれの設置主体の病院でも人材確保が厳しくなっており、立場を越えて連携してもらい、効率化が可能な部分は進めてほしい。国でもしっかり、現場の取り組みを支援していく



医療法改正案は国会で審議中(2025年6月25日時点)ですが、自由民主党・公明党・日本維新の会の3党は、▼新たな地域医療構想がスタートする2027年4月までに「病院病床11万床を削減」する▼医療DXを強力に推進する—との修正を図ることで「年内(2025年内)に成立させる」ことを合意しており、「近く改正法が成立することは確実」と見られます。



改正法成立後に、新たな地域医療構想策定ガイドライン(各都道府県が新地域医療構想を策定するための拠り所となる)などの作成議論が急ピッチで進み、今後、「医療機関機能の詳細」などが詰められていきます。

また、改正法成立が遅れているため「どういったスケジュールでガイドライン作成論議が進むのか」にも注目が集まります。中田地域医療計画課長は「都道府県における新地域医療構想作成に向けた時間(各種のデータ分析、地域の医療機関等との協議など)を十分にとる必要がある」との考えを示しています。



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