遠隔診療、必ず「直接の対面診療」を経てから実施しなければいけないわけではない—厚労省
2017.7.21.(金)
遠隔診療は、例えば「患者側の要請に基づいて、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行う」ことが可能で、「必ず直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならない」というわけではない—。
厚生労働省は14日、通知「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」を発出し、こういった点を改めて確認しています(厚労省のサイトはこちら)。
情報通信機器を用いた遠隔診療、対面診療と同程度の情報を得られれば可能
診療の大原則は医師と患者が相対する「対面診療」です。医師が患者と相対してコミュニケーションを図ることで、病状などを的確に把握できるからです。しかし遠隔診療には患者側のメリット(例えば離島などで専門の医師が常駐していない場合には、遠隔地の専門医師の判断を仰げれば、効率的で質の高い医療が受けられる)もあるため、厚労省は2015年8月10日に「遠隔診療を行える場合として掲げた離島、へき地の患者は、あくまで『例示』である」ことなどを明確化しています(関連記事はこちら)。
これに対し政府の規制改革会議は今年(2017年)5月、「疾病に対して一応の診断を下し得る程度のものであれば、患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、『対面診療と適切に組み合わせて行われるときは医師の判断で遠隔診療を行える』という取扱いを明確化する」よう安倍晋三内閣総理大臣に要請しました(関連記事はこちら)。
具体的には、遠隔診療が▼「離島・へき地」以外でも可能である▼初診時も可能である▼医師の判断で実施可能な具体的な症例として、▽すべて遠隔で行う禁煙外来▽1回の診療で完結する疾病―が想定される▼医師の判断で活用可能なツールとして、▽SNS▽画像と電子メールなどの組合せ—が想定される—ことなどを明確にするよう求められています。
厚労省はこれを受け、今般の通知で次のような点を改めて確認しました。
(1)遠隔診療が可能な場面の1つである「直接の対面診療を行うことが困難である場合」として、「離島、へき地の患者」を挙げているが、これらは【例示】である(関連記事はこちら)
(2)遠隔診療が可能な場面の1つとして「病状が安定している患者に対し、患者の病状急変時等の連絡・対応体制を確保した上で遠隔診療を実施することによって患者の療養環境の向上が認められる場合」として、「在宅酸素療法を行っている患者を対象とする遠隔診療」などがあげられていますが、これらは【例示】である(関連記事はこちら)
(3)すでに遠隔診療に関する通知で示されているとおり「患者側の要請に基づき、患者側の利点を十分に勘案した上で、直接の対面診療と適切に組み合わせて行われるときは、遠隔診療によっても差し支えない」ので、直接の対面診療を行った上で、遠隔診療を行わなければならないものではない
(4)保険者が実施する禁煙外来については、定期的な健康診断・健康診査が行われていることを確認し、患者側の要請に基づき、患者側の利益と不利益を十分に勘案した上で、医師の判断により、直接の対面診療の必要性については柔軟に取り扱っても直ちに医師法第20条などに抵触しない。なお、患者側の理由により診療が中断し、結果として遠隔診療のみで診療が実施された場合、直接の対面診療が行われなくとも直ちに医師法第20条などに抵触しない
(5)すでに遠隔診療に関する通知で示されているとおり「直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、遠隔診療を行うことは直ちに医師法第20条などに抵触しない」ので、当事者が医師および患者本人であることが確認できる限り、▼テレビ電話▼電子メール▼ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)―などの情報通信機器を組み合わせた遠隔診療についても、直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、直ちに医師法第20条などに抵触しない
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