Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

訪問看護師がオンライン診療を補助することで大きなメリットが―オンライン診療指針見直し検討会(1)

2019.4.3.(水)

 在宅医療・オンライン診療が進む中で、スマートフォンやタブレット端末の操作が不得手な患者を訪問看護師が補助することが期待される。そこでは、専門職である看護師の知識・技術を活かし、例えば薬物治療にとどまらない治療も可能となるなど、大きなメリットがある―。

 3月29日に開催された「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下、検討会)で、こういった議論が行われました(関連記事はこちらこちら)。

3月29日に開催された、「平成30年度 第3回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」

3月29日に開催された、「平成30年度 第3回 オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」

 

継続して訪問看護を行っている看護師が、医師と連携してオンライン診療を補助

 スマートフォンなどの情報通信機器を活用したオンライン診療を、安全かつ有効に実施するための指針が昨年(2018年)3月末に取りまとめました。▼指針は、保険診療はもとより、自由診療分野でも遵守しなければならない▼診療の原則は「患者と医師が対面して行う」ものであり、原則としてオンライン診療を初診で行うことは認められない(緊急の場合等の例外あり)▼オンライン診療は対面診療と組み合わせ、計画的に実施されなければならない▼患者にオンライン診療の限界を十分に説明し、同意を得なければならない―ことなどが規定されています(関連記事はこちらこちら)。

 この指針については、医療・医学や情報通信技術の進歩等を踏まえて「少なくとも1年に1回以上更新する」こととなっています。2019年には、まず「現在生じている課題(医師でない者がオンライン診療を実施している)」などに対応するため、次の4項目の見直しを行うことになっています(2019年5月改訂予定)。
 
【2019年改訂での見直し項目】
(1)指針の対象(オンライン受診勧奨・遠隔健康医療相談等の整理)
(2)オンライン診療における診療行為(「対面診療との組み合わせ」「初診対面診療原則」の見直し、予測された症状への対応、「同一医師による診療原則」の見直し)
(3)オンライン診療の提供体制(セキュリティの観点に基づく適切な通信環境の明確化、「D to P with N」(看護師による「医師が提供するオンライン診療」の補助)の明示)
(4)その他(オンライン診療を提供する場合の「研修」必修化など)
オンライン診療指針見直し検討会5 190123
 
 3月29日の検討会では、(2)の「初診対面診療」原則の見直し、(3)の「D to P with N」などについて議論を行いました。今回は後者「D to P with N」に焦点を合わせ、前者「初診対面診療」原則の見直しについては別稿でお伝えします。

 
まず「D to P with N」とは、スマートフォンやタブレット端末などの操作が不得手な高齢の在宅療養患者などに対し、オンライン診療の折に、看護師・保健師・助産師(以下、看護師等)が訪問し補助を行うものである。スマートフォンやタブレット端末などの操作を支援するにとどまらず、「患者の状態の正確な把握」(専門職である看護師が血圧測定をしたり、電子聴診器を活用して医師に心音を伝達するなど)、「薬物投与にとどまらない治療行為等の実施」(オンライン診療計画に基づき、予測された範囲内での点滴や注射などの診療の補助行為)なども可能になるというメリットがあります。
オンライン診療指針見直し検討会(1)1 190329
 
検討会では、この「D to P with N」を指針に明確に位置づけ、安全かつ有効に推進していくことを固めました。在宅医療・オンライン診療を進める中で、訪問看護師等の役割に期待が集まります。

「D to P with N」の実施に当たっては、▼医師と看護師等とで事前に連携を取り合う▼所属機関が異なる場合には、患者の同意の上で、医師が看護師等に「患者の病状等の情報」を事前に共有する▼医師が訪問看護を指示する―ことなどが求められます。検討会では、今村聡構成員(日本医師会副会長)から「従前より継続して訪問看護を提供している看護師がオンライン診療を補助することは極めて重要である。ただし、訪問看護に携わる看護師が限られている中で、オンライン診療のためだけに、新たに訪問看護を指示することは慎重に考えるべき」と指摘しています。

オンライン診療の実施にあたっては、在宅療養患者に継続して訪問診療を行い、信頼関係等が構築されていることが求められますが、訪問看護においても同様な信頼関係が構築されてから「オンライン診療を補助する」ことが期待されます。

遠隔地の専門医が、オンラインで確定診断などを補助することを推進

 また3月29日の検討会では、「D to P with D」に関する議論も行われました。

 「D to P with D」にはさまざまな形態があります。例えば、専門医による確定診断が求められる疾病(てんかんなど)について、主治医が患者と対面診療を行いながら、テレビ会議システムなどで専門医の判断を仰ぐケースなどが考えられます。すでに宮城県などで研究・臨床試験が進められています。

こうした形態のオンライン診療が認められれば、▼多くの患者が専門的な診断等を受けられる▼専門医の移動負担等が軽減する―など多くのメリットが生まれると期待されます。

検討会では、こうしたケースの「D to P with D」を指針の中に明確に位置付ける方向を確認しました。今後、▼希少性の高い疾患等、専門性の観点から近隣の医療機関では診断が困難な疾患である▼遠方からでは受診までに長期間を要する等、患者の早期診断のニーズを満たすことが難しい―ケースに限定し、▼患者は主治医等(患者の状態を十分に把握している医師)とともに、遠隔地にいる専門家の診療を受ける▼患者の側にいる主治医等と、遠隔で診療を行う医師は、事前に診療情報提供書等を通じて連携をとっている―などの体制を構築することを求めるなど詳細を厚労省で詰めていくことになります。

オンラインでのロボット支援手術、医療法・医師法には直ちに抵触しないことを確認へ

「D to P with D」の一形態として、遠隔地の専門医がロボット支援手術を行うというケースも考えられます。例えば、高度な技術が求められるロボット支援手術について、手術室にいる執刀医が難易度の低い部分を担当し、遠隔地にいる専門医が難易度の高い部分を担当する、というイメージですが、我が国ではまだ臨床試験としても実施されていないようです。

こうしたオンライン診療が正面から認められれば、やはり▼多くの患者が専門的な技術の恩恵を受けられる▼専門医の移動負担等が軽減する―などのメリットが生まれそうです。また手術室には執刀医がいるため、仮にトラブルが生じた場合でも、当該主治医が適切な対応を行うことが可能です。

袴田健一参考人(日本外科学会代議員、弘前大学大学院消化器外科学教授)は、ロボット支援手術は、もともと「遠隔地からの操作」などを想定していると説明します。ロボット支援手術を実施する場合、医師は患者から少し離れた位置に設置されたコンソールを操作しており、この距離が大きく延長されるに過ぎないとも思えます(袴田参考人曰く「日本全国が1つの手術室になる」)。
オンライン診療指針見直し検討会(1)2 190329
オンライン診療指針見直し検討会(1)3 190329
オンライン診療指針見直し検討会(1)4 190329
 
しかし検討会では、大きなメリットがある点を確認したものの、▼これまでのオンライン診療(対面で行われている一般的な診療をオンラインでも可能となる)と、オンラインでの手術(全く新たな医療技術を認める)とでは方向が異なる▼通信に関するトラブルは必ず生じる、そうした場合の対処法などを考える必要がある▼ミスが生じた場合の責任の所在(手術室にいる執刀しなのか、遠隔地の専門医なのか)を明確にしておく必要がある―などの意見も相次ぎ、「慎重に検討していくべき」との結論に至りました。

もっとも、こうしたオンラインによるロボット支援手術は「医療法や医師法に直ちに抵触するものではない」旨を指針の中で明確にし、臨床試験などを学会等で進められる環境が整備される見込みです。手術支援ロボットは我が国に300台以上導入され、術式の保険収載も進んでいます。オンラインによるロボット支援手術は、より多くの患者に、こうした新規技術開発の恩恵を与えるものと期待が集まります(関連記事はこちらこちらこちら)。
 
 
 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

アフターピル処方、オンライン診療のみで可能とすべきか―オンライン診療指針見直し検討会
不適切なオンライン診療が頻発、まずオンライン診療指針の改善等で対応―オンライン診療指針見直し検討会

オンライン診療の実施、リスクを説明し、書面で「オンライン診療希望」の旨の確認を―厚労省
オンライン診療等の実施指針案を固まる、技術革新等踏まえて毎年改訂―厚労省検討会
オンライン診療、セキュリティ対策を十分行えばスマホ同士でも可能―厚労省検討会
オンライン診療のルール整備へ議論開始―厚労省検討会

【2018年度診療報酬改定答申・速報3】かかりつけ機能持つ医療機関、初診時に80点を加算

2019年10月から、勤続10年以上の介護職員で8万円の賃金アップ―安倍内閣
2018年度診療報酬改定、効果的・効率的な「対面診療と遠隔診療の組み合わせ」を評価—安倍内閣が閣議決定

遠隔診療、必ず「直接の対面診療」を経てから実施しなければいけないわけではない—厚労省
遠隔診療の取扱い明確化し、2018年度改定でICT活用した生活習慣病管理など評価せよ―規制改革会議
混合介護のルール明確化、支払基金のレセプト審査一元化・支部の集約化を進めよ—規制改革会議
AIを活用したがん治療や、オンライン遠隔診療など「医療・介護革命」を進めよ—自民党
複数医療機関による訪問診療を認めるべきか、患者の状態に応じた在宅医療の報酬をどう考えるか—中医協(1)
かかりつけ薬剤師指導料、対象患者は高齢者や多剤処方患者に絞るべきか—中医協総会(2)
生活習慣病の重症化予防、かかりつけ医と専門医療機関・保険者と医療機関の連携を評価―中医協総会(1)
7対1・10対1入院基本料、看護配置だけでなくパフォーマンスも評価する報酬体系に―中医協総会(1)
主治医機能に加え、日常生活から在宅までを診る「かかりつけ医機能」を評価へ―中医協総会(1)
2018年度診療報酬改定に向け、臨床現場でのICTやAIの活用をどう考えるか―中医協総会(1)
2018年度改定に向けた議論早くも始まる、第1弾は在宅医療の総論―中医協総会

2018年度診療報酬改定で、オンライン診療を組み合わせた生活習慣病対策などを評価—未来投資会議

遠隔診療、「離島」「在宅酸素療法」などはあくまで例示、場合によっては初診でも可能―厚労省

 
ロボット支援手術の優越性データを集積し、2022年度の診療報酬改定での点数引き上げ目指す―外保連
エビデンスに基づき「ロボット支援手術が適した分野」と「開腹手術が適した分野」との仕分けを―外保連
ロボット支援手術の「有用性・優越性」、学会によるエビデンス構築に期待―外保連
2018年度改定で長時間麻酔管理加算、ロボット支援の対象術式を大幅に拡大せよ—外保連
同一術野に複数手術を行う場合でも、所定点数の算定を認めよ—外保連
da vinci用いた腎部分摘出術やPED法でのヘルニア治療など、診療報酬の引き上げを―外保連
2018年度診療報酬改定に向け、外保連試案を大幅に見直し『第9版』へ
2016年度改定で新設された看護必要度C項目、外保連も見直しに協力していく考え
外保連が2016年度改定の評価、外保連試案と診療報酬との間で乖離の大きな手術が増点された
緊急帝王切開術など55の術式、2016年度改定でプラスアルファの評価をすべき―外保連

ロボット支援手術、外科医の技術格差は大きく、十分な「指導」体制確立を―医科歯科大・絹笠教授
ロボット支援手術を、胃がんや肺がん、食道がんなど12術式にも拡大―中医協総会 第384回(1)

2018年度診療報酬改定、答申内容を一部訂正―厚労省
【2018年度診療報酬改定答申・速報6】がん治療と仕事の両立目指し、治療医と産業医の連携を診療報酬で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報5】在総管と施設総管、通院困難患者への医学管理を上乗せ評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報4】医療従事者の負担軽減に向け、医師事務作業補助体制加算を50点引き上げ
【2018年度診療報酬改定答申・速報3】かかりつけ機能持つ医療機関、初診時に80点を加算
【2018年度診療報酬改定答申・速報2】入院サポートセンター等による支援、200点の【入院時支援加算】で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報1】7対1と10対1の中間の入院料、1561点と1491点に設定