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ロボット支援手術の「有用性・優越性」、学会によるエビデンス構築に期待―外保連

2018.3.22.(木)

 2018年度の診療報酬改定において、da Vinci(ダ・ヴィンチ)等を用いたロボット支援下内視鏡手術の対象が胃がんなど12術式に拡大されたが、「通常の内視鏡手術等に比べた明らかな有用性」等に関するエビデンスを提示できず、診療報酬点数は通常の内視鏡手術と同一とされた。今後、有用性に関すエビデンスを構築し、どうアピールするかが、点数引き上げに向けて重要となる―。

 外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の岩中督会長(埼玉県病院事業管理者)は、3月20日に開催した記者懇談会でこのような考えを述べました。

 なお「保険適用術式が拡大されたが、国内のda Vinci台数にも限りがあり、必要な講習会も当面満席と聞いており、ロボット支援下手術は、一気に拡大するというよりも、徐々に広まっていく程度ではないか」と岩中会長は見通しています。

岩中督外保連会長:埼玉県病院事業管理者

岩中督外保連会長:埼玉県病院事業管理者

2018年度改定、「外保連試案を相当程度反映している」との高い評価

 外保連は、100の外科系学会で構成される組織で、主に外科系診療の適正かつ合理的な診療報酬のあるべき姿を学術的な視点に立って研究し、提言を行っています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。3月20日の記者懇談会では、2018年度診療報酬改定に向けて外保連が行った要望と、改定結果とを付け合わせた「総括」が行われました。

 まず要望の採択状況を見ると、▼新設:60/179(採択率33.5%)▼改正:103/238(採択率43.3%)となっています。瀬戸泰之実務委員長(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授)は「2016年度の前回改定(採択率は新設要望で25.7%、改正要望で33.2%)よりも8-10ポイントアップしており、かなり認めてもらうことができた」と厚生労働省の対応を高く評価。

 ただし、外保連が従前から要望している「手術・処置における休日・時間外・深夜加算の施設基準」緩和については、「現時点では採択されていない。明らかな不合理については改定後にも、厚労省に是正を要望しており、今般も要望していくことになろう」とコメントしています。

瀬戸泰之実務委員長:東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授

瀬戸泰之実務委員長:東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授

 
「手術・処置における休日・時間外・深夜加算」を届け出るためには、「予定手術日の前日に当直などを行う日が、▼毎日の当直人数が6人以上▼病院全体で届け出ている—場合には年間24日以内としなければならない」(通常は12日以内)との施設基準が設けられており、非常にハードルが高いと指摘されます(毎日、当直医6人を確保できる病院はごくわずかな大病院に限られる)。

この点について岩中会長は、「『大病院に急性期患者を集中せよ』とのメッセージとも受け取れる」旨の見解を示していますが、瀬戸実務委員長は「日本全国で急性期患者を大病院にのみ集中させることは難しい。大病院と中小病院の不公平を是正する必要もある」として、施設基準緩和の緊急要望を行う考えを述べています。

 
また、▼手術▼処置▼検査▼麻酔▼内視鏡―各分野における「総括」状況は次のようになっています。

【手術】
 新規収載項目45件、増点手術378件となった。「診療報酬に占める人件費の割合が100%を超える手術」(実施による人件費で赤字となる)の状況は全体として変わっていないが、「診療報酬に占める償還不可材料費(特殊縫合糸など)が100%を超える手術」(実施による材料費コストで赤字となる)はやや減少(改善)している。さらに合理的な手術コードであるSTEM7(外保連手術コード)が導入されることとなり、外保連には点数要望だけでなく「術式名の整理や、コードの明瞭さ」を進める責務も課せられたと感じている。
 なお、減点手術が▼K164【頭蓋内血腫除去術(開頭して行うもの)の1「硬膜外のもの」】:3万6970点→3万5790点▼K665【胃瘻閉鎖術の2「内視鏡によるもの」】:1万2040点→1万30点▼K675【胆嚢悪性腫瘍手術の5「膵頭十二指腸切除及び肝切除(葉以上)を伴うもの」】20万9520点→17万3500点▼K923【術中術後自己血回収術(自己血回収器具によるもの)の2「濾過を行うもの」】:4500点→3500点―の4件あるが、妥当性がある(例えば、K164【頭蓋内血腫除去術】では、従前の「硬膜外(3万6970点)>硬膜下(3万3790点)」という逆転現象を是正し、「硬膜外(3万5790点)<硬膜下(3万6970点)」とした)。(川瀬弘一手術委員長:聖マリアンナ医科大学小児外科教授)

川瀬弘一手術委員長:聖マリアンナ医科大学小児外科教授

川瀬弘一手術委員長:聖マリアンナ医科大学小児外科教授

 
【処置】
 採択率は新設12.5%(2/16)、改正20.5%(7/34)にとどまるが、処置試案7.1版に沿って29件の増点が行われた。また、J00【創傷措置の1「100平方センチメートル未満」】が従前の45点から52点に引き上げられたことは大きい。処置は時間も短く、コストの大半は医療材料に占められており、材料の高価格化の影響を大きく受けていた。外保連の「処置点数引き上げ」要望が受け入れられ、とくに中小病院に朗報である。一定程度評価できる改定内容である。(平泉裕処置委員長:昭和大学医学部整形外科客員教授)
平泉裕処置委員長:昭和大学医学部整形外科客員教授

平泉裕処置委員長:昭和大学医学部整形外科客員教授

 
【検査】
 採択率は新設21%(8/38)、改正18%(8/45)であり、2016年度の前回改定に比べて新設で8ポイント、改正で5ポイントアップしている。一定程度、評価できる改定内容と考えている(土田敬明検査委員長:国立がんセンター中央病院内視鏡部医長)
土田敬明検査委員長:国立がんセンター中央病院内視鏡部医長

土田敬明検査委員長:国立がんセンター中央病院内視鏡部医長

 
【麻酔】
 閉鎖循環式全身麻酔の点数を下げ(100点減点)、その分を麻酔管理料に乗せており、方向としては「正しい」と評価できる。「常勤の麻酔科医が麻酔前後の診察を行い、かつ常勤の麻酔科医が全身麻酔などを行う」麻酔管理料(I)、「常勤の麻酔科医の指導の下で、麻酔担当医が麻酔前後の診察を行い、全身麻酔などを行う」管理料(II)のいずれにおいても、硬膜外麻酔等の場合に50点、閉鎖循環式全身麻酔で150点増となった。麻酔管理料を届け出ることのできない医療機関では、大きな影響も考えられ、注視する必要がある。
麻酔管理料(I)において、長時間麻酔管理加算の対象術式が大幅に拡大されたことは評価できるが、▼腹腔鏡下胃全摘術▼肝門部胆管癌▼胆管悪性腫瘍―などは対象に含まれず、「偏り」が残っており、今後の課題である。(山田芳嗣麻酔委員長:東京大学附属病院麻酔科・痛みセンター科長)
山田芳嗣麻酔委員長:東京大学附属病院麻酔科・痛みセンター科長

山田芳嗣麻酔委員長:東京大学附属病院麻酔科・痛みセンター科長

 
【内視鏡】
 採択率は新設21%(3/14)で、うち内視鏡試案掲載項目は37.5%(3/8)、改正58%(7/12)で、うち内視鏡試案掲載項目は87.5%(7/8)であった。減点されたK665【胃瘻閉鎖術の2「内視鏡によるもの」】(1万2040点→1万30点)は、内視鏡試案では6万8917円であり、「内視鏡試案>診療報酬点数」という状況が今回改定に反映されたものと考えられる。内視鏡試案が厚労省内部で認められている証左と言えるのではないだろうか。試案をさらに精緻化していきたい。(清水伸幸・内保連外保連合同内視鏡委員長:山王病院副院長、国際医療福祉大学医学部教授)
清水伸幸・内保連外保連合同内視鏡委員長:山王病院副院長、国際医療福祉大学医学部教授

清水伸幸・内保連外保連合同内視鏡委員長:山王病院副院長、国際医療福祉大学医学部教授

 
このように2018年度改定では、手術のみならず、処置・検査・麻酔・内視鏡の各分野において「外保連試案」「外保連要望」が相当程度採択されていることが伺えます。岩中会長も、「外保連の発信力が年々強くなり、厚労省も評価してくれている」とコメントしています。

ロボット支援手術、学会でのエビデンス構築が期待されるが、過熱報道に警鐘も

ところで、2018年度改定ではda Vinciシステム等のロボットを用いた「ロボット支援下内視鏡手術の対象」の対象が、従前の「前立腺がん」「腎がん」に加え、▼胃がん▼食道がん▼直腸がん▼肺がん▼子宮がん―など12術式に拡大されました(関連記事はこちらこちら)。

2018年度に新たに保険収載されるロボット支援下内視鏡手術一覧

2018年度に新たに保険収載されるロボット支援下内視鏡手術一覧

 
 しかし厚生労働省および中央社会保険医療協議会では「従前の手術に比べた優越性・有効性が十分に示されていない」とし、診療報酬点数は「通常の内視鏡手術」と同一に設定されました。

 この点について岩中会長は、あくまで「私見」とした上で、ロボット支援下内視鏡手術には▼Learning Curbが早い(早期に技術を習得できる)▼患者集約のためのツールとなる―といったメリットがあり、診療報酬点数の引き上げに向けて、「学会を中心に症例を増やし、正確に登録(レジストリ)を行うことで、通常の内視鏡手術に比べての優越性・有効性のエビデンスを構築してほしい」との期待を寄せました。

岩中会長は、「ロボット支援手術では特殊な鉗子などのコストが極めて大きく、現在の点数よりも50万円ほど増点してもらわなければ赤字である」と説明。さらに▼日本のda Vinci台数は限られている(300台ほど)▼da Vinciを操作するための講習会は当面満席である▼施設基準が厳しい(例えば肺がんでは、ロボット支援による肺がん手術を10例以上経験した常勤医師配置が必要とされる)—点などを考慮すれば、「一気にda Vinciが日本に広まるとは考えにくい。すでにロボット支援手術の経験がある施設から、徐々に周辺病院に広まっていくのではないか」と見通しました。

 
なお、この点に関連して山口俊晴・前外保連会長(がん研究会有明病院長)は、「da Vinciを用いたロボット支援手術を行えるのは、腹腔鏡手術のエキスパートだけであり、Learning Curbが早いのは当然である。ロボット支援手術は困難な手術でこそ生きてくる。胃がん手術では、da Vinciも通常の内視鏡でもそう変わらないのではないか」と述べ、昨今の過熱報道に警鐘を鳴らしています。もっとも「将来的に我が国においても必要な技術であり、今回の保険拡大を期に、『難しい手術分野でのエビデンス構築』に力を入れてほしい」とコメントし、学会等の努力に期待を寄せています。

グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)の伊藤恭太郎コンサルタントは、これまでのロボット支援手術の状況を分析。そこから、▼腹腔鏡手術など他の術式と比べて平均在院日数が短く、術後感染症の発症率が低い▼年間症例数には病院間で大きな差があり、年間症例数が50件に満たない病院が多数ある―ことが分かりました。症例数の少ない病院では術後感染症の発生率など質が担保されているのかどうかなど、今後、全症例を詳しく分析していく必要があるでしょう(関連記事はこちら)。 

 

 

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