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ロボット手術、年間50件未満の病院でアウトカムにバラつき、GHC調査

2018.3.15.(木)

 「da Vinci(ダ・ヴィンチ)」を用いたロボット支援下内視鏡手術のアウトカムについて、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)が調査したところ、腹腔鏡手術など他の術式と比べて平均在院日数が短く、術後感染症の発症率が低いことが分かりました。ただ、今回調査では、ロボット支援下内視鏡手術の年間手術症例数には病院間で大きな差があり、年間症例数が50件に満たない病院が多数あることも判明。このような症例数の少ない病院では「ダ・ヴィンチ」の経済性はもとより、術後感染症の発生率など質が担保されているのかどうかに関しても慎重に見極める必要があると思われます。

在院日数は短く、術後感染症発生率低い

 ロボット支援下内視鏡手術は現在、前立腺がんと腎がんの手術に限って保険が適用されています。2018年度診療報酬改定で、▼胃がん▼肺がん▼食道がん▼直腸がん▼子宮がん――などの手術が追加されるため、「ダ・ヴィンチ」を導入する病院が急増する可能性もあります(関連記事『ロボット支援手術を、胃がんや肺がん、食道がんなど12術式にも拡大』『ロボット支援手術、外科医の技術格差は大きく、十分な「指導」体制確立を―医科歯科大・絹笠教授』)。

 こうした状況を背景に、ダイヤモンド社は3月12日発売(3月17日号)の『週刊ダイヤモンド』の特集で、「大衆化する高額・最先端手術 がん医療の表と裏」と題した手術支援ロボットに関連する企画を掲載。同企画内で、GHCコンサルタントの伊藤恭太郎によるダ・ヴィンチのアウトカム分析結果が掲載されました。

 この分析では、288病院が2017年に実施した前立腺がん手術5390件のアウトカムを、▼内視鏡下手術支援ロボット▼開腹手術▼腹腔鏡下手術▼腹腔鏡下小切開手術――の4つの術式ごとに比較。平均在院日数はロボット支援下内視鏡手術(12.4日)が最も短い結果となりました(開腹手術15.6日、腹腔鏡下手術13.4日、腹腔鏡下小切開手術14.1日)。

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 また、術後感染症の発生率は、▼内視鏡下手術支援ロボットが0.59%▼開腹手術が3.08%▼腹腔鏡下手術が1.05%▼腹腔鏡下小切開手術が5.77%―となり、内視鏡下手術支援ロボットが、術後感染症を最も引き起こしにくいことが分かりました。

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大きな病院間格差

 伊藤は、ロボット支援下内視鏡手術の年間手術症例数と術後感染症発生率の関係も分析。「ダ・ヴィンチ」を導入した85病院について調べた結果、年間手術症例数と術後感染症発生率の間には明確な相関関係は見られませんでしたが、術後感染症の発症率には病院間のバラつきが大きく、特に年間症例が50件に満たない病院などでは、術後感染症発生率が高いことが分かりました。

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 『週刊ダイヤモンド18年3月17日号』には、日本の病院の手術の質(failure to rescueなど)が米国よりもバラついていることを示すGHCと米国スタンフォード大学との共同研究の結果や、米国グローバルヘルス財団理事長のアキよしかわの「医療機関間の質のバラつきが日本の医療の重大な問題点である」といったコメントも掲載されています(関連記事『情報公開と健全な競争なしに、医療の質バラつき解消はない-「日米がん格差」でアキが講演』)。

 また、GHCが協力した病院アンケート(162病院が回答)に基づき、ダ・ヴィンチでの手術件数の病院ランキングを、がんの部位別に掲載しています。

記事を書いたコンサルタント アキ よしかわ

aki 米国グローバルヘルス財団理事長、米国グローバルヘルスコンサルティング会長。がんサバイバーの国際医療経済学者、データサイエンティスト。
10代で単身渡米し、医療経済学を学んだ後、カリフォルニア大学バークレー校とスタンフォード大学で教鞭を執り、スタンフォード大学で医療政策部を設立する。米国議会技術評価局(U.S. Office of Technology Assessment)などのアドバイザーを務め、欧米、アジア地域で数多くの病院の経営分析をした後、日本の医療界に「ベンチマーク分析」を広めたことで知られる。
著書に『日米がん格差』(講談社)、『日本人が知らない日本医療の真実』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『Health Economics of Japan』(共著、東京大学出版会)などがある。
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